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2年って…。

「結局のところ、アズレイン様との婚約は、お戯れ。と、言う事ですよね?」


側近のサイラスは、クラウスに尋ねた。


「私としては全然、冗談のつもりはないけどね。」


思わぬ発言にサイラスは言葉も出なかった。

いよいよロリコン疑惑が確定してしまうのか?


俺の思いが顔に出てしまっていたようで、


「別に私は、幼い子に興味がある訳じゃない。お前も、今まで私が、戯れてきた相手が成人した女性である事を知っているだろう。」


と、クラウスは苦笑いを浮かべ、サイラスを睨みつつ、


「ランドルフ侯爵家が、この王国にとって、どれ程、重要で貴重な存在であるか、お前は完全には、わかってない。

まして、アズレイン嬢に会ってみろ。大人になるまで、ぜひ待っていたいと思うから。」


と、いまいちよく分からない返事が返された。


クラウスは、今回の手紙のお礼に、お菓子と髪飾りを届けて貰う手配をした。

あの兄に見つからない様に、侍女に渡して貰わないと、邪魔されるのは、目に浮かぶ。


(フッ。あの兄がライバルなのは、どうしたものか…。

まぁでも、今は会うのは我慢しよう。2年後会えた時のアズレイン嬢の驚く顔が楽しみだな…)


「清廉潔白の身で、アズレイン嬢の成長を待つつもりはないが…。」


クラウスは、ニヤッと笑った。





ーーーーーーーーーーーー





「早く、大人になりたいな…。」


あの、お茶会の日が、遙か遠くに感じられる。

春の草花に彩られていた、あの可愛らしい庭園は、今はどうなっているのだろう。


あれから、季節は夏が来て、秋が来て、冬が来て、また春が来た。そしてそれを、もう一周繰り返した。


リッシュベルト王国の王都周辺は、電灯や道路の整備が進み、街並みも王城を中心に、綺麗に区画され近代化が進んでいる。


しかし、王都を少し離れると、貴重な雨季により作られた肥沃な大地が、小麦や果実、野菜など、あらゆる農産物を育て、それにより色とりどりの美しい農村風景が広がっている。


王国の気候は一年中温暖で、過ごしやすいとされているけど、一応、四季はある。秋から冬にかけては、だんだんと気温が下がり、育てる作物も寒さに強いものに移行される。けど、冬に、雪が降るほど寒くなる事はない。


(雪は私も絵本の中でしか見たことがないから、一度でいいから見てみたいな。

空から白い綿みたいなのが舞い降りて来て、手に取ると、あの繊細な形をした結晶が現れる。そして、スッと溶けて、水になるなんて、魔法みたい。

でも、もし、本当に雪に触れるのなら、1番やってみたい事は、雪で大きなケーキを作って、蜂蜜をタッ〜プリかけて、食べてみる事かな。)


そして、冬が終わり春が訪れる前に来るのが雨季。毎年この時期に、一定期間きちんと雨季が来ることが、その年の作物の出来を決めるとされていて、とても大事なものだ。


まだまだ肌寒い季節に、毎日毎日降り続く雨が、気分を落ち込ませることもあるけど、一面灰色の空を見ていると、あの空が突然パックリと割れて、おばけや悪魔が舞い降りてくるんじゃないか…、なんて、とんでもない妄想が膨らんで、雨の日は不気味で不思議なワクワク感を感じさせてくれるから、なんか好き。


それに、やっぱり名前にレインがつく以上、雨を応援したい…。






………そして、雨季が終わり、春から夏にかけての、1番天気も気温も安定し、過ごしやすいこの季節に、学園の入学式が行われる。



私も今年8歳になり、新入生となるための、準備に毎日とても忙しい。



あのクラウス様と出会えたお茶会から、今日まで残念ながら、一度もクラウス様に逢えていない。

手紙を書いて届けて貰う事はずっと続けているし、クラウス様からは手紙のお礼に、お菓子やお花、アクセサリーなど可愛らしいものを、たくさん返していただいている。


本当は今すぐにでもアクセサリーをつけて、オシャレをしたところをみて欲しいな…って思うけど、最近のハワード公爵家のお茶会は、社交界デビューのすんだ16歳以上の方達が参加できる、大人のお茶会ばかりになってしまって、父様と母様だけが参加している。

リヴァイ兄様は、御招待を受けているけど、もちろん参加していない…代わりに行きたいくらいなのに。


そう言った訳で、今の私の目標は、大人の女性になる事。

だって、クラウス様の周りには綺麗な大人のご令嬢がたくさんいるから、婚約者としてクラウス様の隣りに並んでも、恥ずかしく思われない様に頑張らないと。


…でも、本当は頑張っても、無理なんじゃないかなって思ってしまっている自分もいる。


身分も、年の差も、容姿も、性格も、何もかも釣り合っていないんじゃないかな…って思ってる。


私が、本物の大人の婚約者なら、クラウス様が、2年も会わなくて平気な訳ないだろうし…。


もしかして、お手紙もご迷惑なのでは?

私の事なんて、とっくにお忘れなのでは?

私を傷つけないため、婚約者ごっこを続けてくれているのでは?



けれど、そんな風に考えたら、落ち込んで立ち直れそうにないから、暗い事を考えるのはやめて、今度、クラウス様に、お会いした時、大人っぽくなった私を見て、ビックリしてもらえるように、頑張ろう…。


いつも読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク・文章評価・ストーリー評価本当にありがとうございます。


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