ロリコン疑惑とラブレター
「どれどれ…。」
“きょうはドライフルーツのたくさんはいったクッキーをたべました。うれしかったです”
“きょうはすこしあたまがいたかったです。かなしかったです”
……………。
毎日、書いてくれているであろう、短い日記のような1文が書かれた、ラブレターが、あのお茶会の後、少ししてから、数日に一回の割合で、クラウスの元へ届けられる様になった。
正直、筆頭公爵家と繋がりを持とうと、野心家の親に育てられた子供なら、アズレイン嬢位の年齢の子でも、子供の可愛らしさを利用した、打算混じりのアプローチを、平気でしてくる。
もちろん、大人なら尚更、計算高さを巧妙に隠して、アプローチをしてくるから、油断ならない。わざとらしく、偶然を装って接触してきたり…。
(( しかし、アズレイン嬢の、自分を見た時の、あの驚いた顔!! ))
あの顔は、純粋に私の顔に見惚れたものだった。だから、このラブレターも、純粋に私を思って書いていてくれているのがわかる。
「かわいかったなぁ。あのほっぺ。また、つつきたい。きっと、顔を真っ赤にするんだろうなぁ。」
自分は、整った顔をしている自覚はあるし、今までも、散々モテてきた。
もちろん、公私どちらの場面でも、この顔も地位も利用してやろう。とは思っていたけど、あれ程、人を驚かせ、虜に出来るなら、この顔で良かった。と、純粋に何の打算もなく、初めて思えた。
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クラウスの側近サイラスは、先日のお茶会以来、定期的に手紙の束を持ってくるようになった、ランドルフ侯爵家・令嬢アズレイン様の侍女ミアの、愛想のない顔を思い浮かべていた。
その侍女が言うには、アズレイン様が、
「クラウス様と、婚約したのはいいけれど、どうやって、逢いに行けばいいのか、わからない。」
と、ションボリしていたので、手紙を書くことを、提案したそうだ。
えっ婚約?いつの間に?あの、フィアナ様とのお別れ騒動後、初めての茶会で、この様な喜ばしい事になろうとは!!
しかし、クラウス様より、婚約の事は何も聞いていなかったため、侍女に詳しい話を聞くと、アズレイン様は、6歳…というではないか。
茶番か…。と、ガッカリしていると、侍女が、もの凄い目で睨みつけてきて、
「婚約の話、ま・さ・か公爵様から、何も聞いてない訳じゃあ、無いですよねぇ。アズレイン様の心を、もて遊んだらぁ、公爵様といえどもぉ、ただじゃあ、すみませんよぉ。」
と、目を細め、不敵な笑顔を浮かべて…言っていた。
俺は、アズレイン様とやらを見ていないが、大の大人が、揃いも揃って、翻弄されているのが、バカらしい…どうした事だ?
しかもあの、見た目バッチリ、仕事キッチリの、完璧クラウス様ですら、手紙を受け取った日は、ニヤニヤしていて、おかしい…。
ロ…リコ…ン…。いやいや、ないよ…な…。
貴族社会で、年の差のある結婚は、そう珍しくないのだから、せめてアズレイン様とやらが、16歳になるまでは待っていただきたい。
ただ、本音を言えば、跡継ぎの事も考えて、この、おままごとの様な婚約は冗談で、早々に年頃のご令嬢とお付き合いして欲しいものだ。
そういえば、エヴァンズ公爵家には、妙齢の…確かカタリナ嬢がいたな。美人と評判だし、今度出会いの場を設けてみるか。