迷彩グリーン
今日は、カトリーナのお屋敷に、お泊まりだ。一緒に恋愛小説を読むことになっている。
本当は、もっと前に、ご招待を受けていたのだけれど、母様とリヴァイ兄様の反対を受けて、なかなか実現しなかった。
グリーン伯爵家の変わり者の噂を聞いた母様と、私をどこだろうと、お泊まりさせるなんてとんでもない。というリヴァイ兄様2人の反対にあってしまった。
けど、今回ばかりは、私も諦めなかった。カトリーナと一日中、時間を気にせずおしゃべりできるのも嬉しいし、何と、以前私が唯一読んだ、クラウス様似が表紙に描かれた恋愛小説が、シリーズ化されて、新作が出たんだそうだ。カトリーナはもう買ったみたいだから、ぜひ読ませて欲しい。
恋愛小説が読みたいなんて理由は、カトリーナの後ろの席のご令嬢が言う限りでは、私たちの歳ではいけないことのようだから、絶対話せないけど、私もお泊まりに行けるようがんばった。決して諦めなかった。
私の珍しくしつこい態度に、父様から「グリーン伯爵家に、ご迷惑がかからないなら、行っていいよ。」と、鶴の一声がもらえ、芋づる式に母様も納得させられたのだった。
不思議だったのは、賛成も反対もしなかった双子の姉様達からは、「グリーン伯爵家か…いい?カトリーナの兄には、絶対近寄っちゃダメだからね。変態だから。」と、耳打ちされてしまった。どういう事だろう?
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カトリーナのうちでは、カトリーナのお母様が出迎えてくれた。美人な方なんだけど、衣装がインパクト有りすぎて、お顔をいまいち覚えていない。だって、黒い羽のついた髪飾りから、ドレス、手袋、靴まで、全身真っ黒だったから。
ご不幸でもあったのかとカトリーナに聞いたら、黒色が大好きで、ほとんど黒色に取り憑かれているレベルだそうだ。部屋は、壁紙から家具、シーツや小物まで全部黒に統一されているし、衣装も普段から全身黒色だそうだ。
ちなみに、カトリーナのお母様の黒好きは、人物にも当てはまり、黒髪・黒瞳のメイジー女王やリアム王太子が好きすぎて、お部屋に肖像画が飾られているそうだ。
だから、私を見た時の、カトリーナのお母様の反応は、第一声が「何だ、パツ金ね。」というもので、あっという間に私に興味を失った事がわかった。初対面で何を言われたのか意味がわからず、余り上手にご挨拶出来なかったような気がする。
そういえば、カトリーナの侍女の方とも、お話をした。なんか、涙ぐまれて、
「アズレイン様のおかげで、カトリーナ様の髪型がまともになり、本当にありがとうございます。いくら言っても触らせてくださらなかったのに。これからも、お嬢様をよろしくお願いします。」
そう言われた。
カトリーナの髪をいじるのは、私も楽しみなので、喜んでお引き受けします。
ご挨拶がすんで案内されたのは、カトリーナの部屋だ。
部屋はピンクと白に統一された女の子らしい部屋で、天蓋付きの大きなベットと机、テーブルと椅子などがある他は、天井にとどきそいなくらいの本棚が壁一面に設置されていた。もちろん全部恋愛小説で埋め尽くされていた。
ちなみに、ピンクと白に部屋を統一したのは、お母様の黒信仰に反抗するためだそうだ。
2人でおしゃべりを楽しんでいると、部屋をノックする音がした。
入ってきたのは、カトリーナの兄、オリヴァーだった。
(姉様達から気をつけるようの言われてたのは、この人かな。なんか、じーと見られているような気がするけど。)
カトリーナと同じ茶色の髪と瞳をしたオリヴァーは、カトリーナよりキツめの、天然パーマが下町のおばちゃん的雰囲気を醸し出す人だった。
「さすが、ランドルフ家双子の妹だ。中々の美少女ぶりだな。5年後が楽しみだ。その時は、僕の美少女ランキングでNo.1に躍りでているだろう。」
と言い、微笑みながら2人の座っているソファーに近づいてきたため、思わずカトリーナの背中に隠れてしまった。
「はあ?キモいんだよ、出て行け。」
カトリーナは、老若男女問わず、美形鑑賞が趣味だが、オリヴァーは、美少女限定鑑賞マニアだった。
「あいつ、ほんとキモいんだよ。アズのお姉さん達と同級生なんだけど、なんか言ってた?ゴメンね。
学園でもいろいろやらかしてくれてるみたいで、授業中も勉強しないで、工作の内職ばかりしているから、よく学園から連絡くるし、美少女を見かけると、「貴様、こっちを見ておるな。」って、声をかけるのが口癖で、「はあ?誰も見てないから。」って気持ち悪がられてる。ほんと、消えてくれー。」
カトリーナの話を聞いて、兄様って、どこのウチも変わっているんだなって思った。