みんなの夢は絶望をくれるよ!
初めての作品です。
感想をいただければ嬉しいです。
城下町の広場。
掲示板に人が群がっている。
注目を集めているのは張り紙の内容だ。
”われらが領地に伝説にドラゴンが現れた、被害が増しているのは皆の知っているところであろう。
ドラゴンは川の向こうのハイネスト山の頂上にある古城を巣にしているようだ。
勇気ある諸君に告ぐ。
見事このドラゴンを討伐したものには望む報酬と偉大なる名誉、そして我が娘ソシラ姫との婚姻を約束しよう。
王様より”
無理を言うなと呆れたり、報酬を手に入れようと目をぎらつかせたりする人。
姫との結婚の妄想だけの人。
王様がここまでするのは何か裏があるのではと疑う人など、様々な反応をしている。
城下町を見下ろせるファンシーな部屋、ソシラ姫は侍女に振り向き口を開く。
「ここしばらくと違って今日はかなり活気づいているみたいよ」
「お触れを見たのでしょう」
「ドラゴン討伐の?」
「ドラゴンにほとほと困っていた国民にとって今やそのドラゴンお宝になったのです。
それも生涯をかけても手が届かぬほどの願いが叶うのですよ。
どうせドラゴンを野放しにしておいてもいつ自分が死ぬかもわからないのです。
勇気を出すことに今以上に心惹かれる時はないのでしょうね、皆そうなんだと思いますよ」
おどけるソシラ姫。
「心惹かれない人だっているわよ」
「どんな方です?」
「私よ! 誰かがドラゴンを倒してしまったら私はそいつと結婚しないといけないのよ!
嫌よ、ほんとに最低よね。
まだ16なのに。
どうせドラゴンを倒してくる人はムキムキゴリマッチョで髭がもじゃもじゃのようなやつよ。
あー、やだな・・・」
「姫様にとってはそれは災難かもしれませんね」
「あー、どうしたらいいんだろう。
ドラゴンがいなくなった方が平和だし、町の皆の気持ちもわかるけど、やるせないわ」
窓の外の空を眺めるソシラ姫。
雲は穏やか。
「ねえ。考えたんだけど次の三つの内どれが一番いいと思う」
「おっしゃってみてください」
「一つ目はドラゴンを退治する人の邪魔をする。
二つ目は私が行方をくらます。
三つ目は、これが一番ハッピーエンドだと思うのだけど・・・」
「どうぞ続けてください」
「私が自分でドラゴンを倒す!」
ソシラ姫、壁に飾ってあった剣を取り振り回す。
剣の重みに振り回され窓を割ってしまう。
「ねえ、三つ目ができたら一番幸せでしょ。
街の人も平和になって嬉しい。
私も髭ゴリマッチョと結婚しなくて嬉しい。
しかもお父様から好きなものをいただけちゃうの」
「はぁー、そんな簡単にできるならお触れなんて出してないでしょうに」
「じゃあなに、私だけ何もせずここで指をくわえてろっていうわけ?」
「姫様・・・」
侍女は割れた窓ガラスの破片を目を向けた後、視線を姫に向ける。
「まともに武器も握ったことがない姫様にできるわけがないでしょう。
そんなことをすれば国王様も、国民全員が悲しんでしまいます。
もちろん、私もそんなことに手を貸すのは御免こうむります。
姫様のために命をなげうつ者は、夢を抱いてのことです」
「・・・。
・・・・・・。
わかった、あなたの言うことは。」
「姫様・・・、よかった・・・」
「ねえ、私もお触れを出すわ。
こう伝えなさい。
”ドラゴンを討伐する勇者を求める。
討伐した証は国王にでなく姫に献上し、栄光の全てを姫のものとすること”
悪くないでしょ」
「はあー、そんなこと納得する人いますか?
それに国王様がそんなことお許しになるはずもありません。」
・・・・・・、
けれどその方向性は間違っていないかもしれません」
「!?」
「いくらドラゴンを倒すほどの猛者だと言っても戦いの後は消耗しているに違いありません。
その隙を突くのです。
姫様がそこまで結婚を嫌がるのであればですが、これで平和と守れますし結婚もなしです」
「なんてことを・・・、亡き者にしろっていうの!」
「いいえそうはいってません。
しかし偶然そうなることがあっても不思議ではないでしょう。
ドラゴン一匹に対して多くの人が群がっているのです、何が起こるかなんてわかりません」
しばし考えるソシラ姫。
窓の景色には浮かれる城下町。
「それはダメね。
いい気分がしないわ。
・・・。
こうなったら私専属の、私の為だけに従僕する勇者を見つけるしかないわね。
手に入れることでなく、仕えることに生きがいを感じるような人」
「それは私のことでございます、姫様」
「ドラゴンを倒してくれる?」
「無理です」
「なら私専属勇者を見つけてきなさい。どこかにはきっといるはず。
ちゃんと見つけてしつけるのよ」
「できるだけのことはしてみましょう」
ガラスを片づけたあとに」
侍女は割れた窓ガラスを片付け始める。
ソシラ姫は侍女から少し視線を外す。
「・・・」
ソシラ姫、一緒にガラス片の片づけをしようとする。
侍女がそれを止める。
「私の仕事です!」
ソシラ姫は剣を壁かけに戻そうする。
よろけて花瓶を思いっきり叩き割り焦る。
笑ってごまかそうとするが、侍女の顔は笑顔を作っている。
ソシラ姫は割れた花瓶の片づけをしようとする。
「私の仕事です!」
ソシラ姫は落ち着いてから声を出す。
「片づけはいいから早く私の勇者を探してきなさいよ。
そちらの方が大事のことよ」
侍女の手が止まり、ソシラ姫の目を見る。
「そうでしたね。片づけは代わりの者を今呼んできます
失礼いたしました」
侍女は部屋から出ていく。
ソシラ姫、片付けをする。
「私専属の勇者、きっとたくさん集まって簡単にドラゴンなんて倒しちゃんでしょうね」
ソシラ姫は片付けしている間ずっと、笑みを浮かべていた。
× × ×
城下町を歩いていた侍女であったが、周りを見回すのを止めて立ち止まった。
近くにあった椅子に腰を下ろす。
このあたりには鎧の戦士やローブに身を包む魔法使いる。
会話内容から判断するとすると国民でなく外からもこのドラゴン退治の報酬を求めた勇士だ。
「(強そうな人はたくさんいる。
でもそれは破格の報酬が約束されているからこそ。
いくら姫様とはいえ、従属的に従ってくれる人などいるだろうか?
そもそのどうやって見つければいいんだ。
見つけたとしても信用におけるものなどこの私ぐらいしかいなのに)」
腕を組み難しいかをする侍女、険しいかを押しながら街の様子を眺めている。
「(そもそも姫様が従属勇者を求めているのは結婚をしたくないためだ。
それを満たせることが第一条件、信頼できるかどうかは2番目と考えよう)」
侍女の横に人が腰を下ろす。
気づいた侍女が振り向く。
そこにはソシラ姫と同世代の少女がおり、侍女の顔をじっとみつめていた。
「そんなに難しい顔をしてどうしたん?」
「いや、なんてことはないので気にしないでください」
「本当に? なにか困ってたんじゃないん?」
「いえ大丈夫です」
「そうなんだ、よかった。ドラゴンが現れてから身内に不幸な人が多いでしょ。
自殺しちゃうのかと思っちゃった」
「するわけないです!」
「・・・なんだ。
一緒じゃないんだ」
「・・・どういうことです」
「ドラゴンが現れてすぐ、私のお父さんとお母さん犠牲になっちゃったから。
今では親戚の家に住まわせてもらってるんだけど、厄介者扱い。
よっぽど邪魔なのか勝手に縁組を組まされてし、追い出されそう」
「大変ですね」
「自殺するなら一緒にどうかなって思ったけど、違うんならしかたないね」
侍女、悲しい顔をする。
ポケットから飴を取り出して少女に差し伸べ笑みを浮かべる侍女。
「いらない、好きな味じゃない」
ポケットに飴を戻す侍女。
「死ぬのは勝手ですけどすぐには辞めてくださいね。
私が止めなかったから死んだと思うと気分が悪いです」
「心配してくれないんだ。
でも大丈夫、考えがあるの!
どうせ死ぬのならっ手考えるでしょ。
そう思うと・・・」
侍女は話を聞き、強くうなずき、少女と握手をした。
× × ×