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傘
私は木の下で雨宿りしている。そこへ一人歩いてきた。
「大きな傘ですね?」
その人と視線が合う。それから、私は見上げる。
「あっ、そうですね」
その人は手の平を上に向けていた。ゆっくりとした時間が流れていく。
「でも、この傘破けているみたいですね」
よく見るとその手の平には水溜まりが出来ている。それが溢れ、雫となりこぼれ落ちる。思いもかけないことに、私は口元が緩む。
「そのようですね」
「長年にわたり、大勢の人が利用してきたのでしょう」
「そうでしょうね」
暫くすると私たちの時間は終わりを迎えた。私は日常へと戻っていく。