1/3
水溜まり
私は歩いている。風のない雨上がりの蒸し暑い道だ。おもわずシャツのボタンを外す。
ふと、視線の先の少女に目がとまる。彼女は、どうやら泣いているようだ。私は彼女の前の油の浮いた水溜まりに腰をおろす。そして、私は彼女を見つめる。
「虹が見えるよ」
すると、少女は水溜まりを覗き込む。彼女の涙がこぼれ落ちて波紋が広がる。
「虹はお空にあるんだよ」
私が意図したものとは違う返事が返ってきた。彼女は、うつむいたまま空を指差す。私は手をかざし空を見上げる。雨上がりの空に綺麗な虹が架かっている。
「本当だね」
「だから言ったでしょ?!」
と少女は声を弾ませ言った。