需要と供給
眠くなった
今日は寒いね
そうだね
帰ろうか
うん帰ろう
のんびり歩いて帰る親子。僕は微笑ましくとある話のとあるラストシーンを見ていた。人ってのは何だかんだこういうのを求めるらしいね、冷笑ばかりじゃ。
明日も頑張るか。そう思って布団に入り込んだ。
呻き声がする。
気のせいだった。
いつのまにか朝が現われた。今日は撮影だ。あまり気持ちのいい仕事ではないが30万程度入るから割りがいい。
警察の人に挨拶をして僕は中に入る。
執行人はまたあいつか。もう顔見知りとなってしまった。こんな仕事早く辞めたい。
奴が肩を回しながら宇宙服みたいながさばる格好に着替えている。この仕事には慣れっこのようだが嫌じゃないのか。
遂に時間が来た。おお、遂にか。ゾクゾクする。
あいつの服はなぜ白いか。それは血を目立たせるためだ。そうに決まっている、センスは流石一流だ。
私はピントを調整した。私...?私は、この瞬間がとても好きなんだ、来るぞ来るぞ来るぞ、暖かい木漏れ日に差し込まれて、その刹那、斧は、吸い込まれる。迸る果汁。貴方もさっきまで生きていたんだね。息が上がる。カメラには付かないように程々に距離をとった。気分は最高だ。
「素晴らしい!」何度も差し込まれるその鉄の塊に興奮を覚えた。とある貴婦人はスペシャルチャットに0を7つ付けて投稿した。とある国の大臣は手元にある有り金全部を、同時視聴者数は100万人を突破した。
ああ、まただ。僕は一体誰なんだ?サバイバルナイフで骨を擦り込んでいるあいつを見て吐き気を催した。
飯も食う気にならない。ポケットからカロメを出して口にねじ込んだ。目の前にはあいつがいる。声をかけてみるか。
なあ
なんだ
お前はこんな社会おかしいと思わないのか
どんな社会
人を殺すことを道楽とするなんておかしいだろ
これはただの弊害だ。何にでも数的価値が見出されたことで、経済は確実に循環され始めたじゃないか。努力、過程、自然、時間、全てにだ。めっちゃ便利じゃん。ましてやお前のそのおかげで高給取りの癖に何言ってんだ。お前の頭の中に天秤はないのか?
それがおかしいって言ってんだよ。
だから何が。
...もういいわ
何勝手にキレてんだよ。
僕が間違っているのかな?僕はこの社会では圧倒的マイノリティーだ。僕は飲まれたくない。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。少しずつ僕は波に飲まれて行く。ならいっそ。
23:00
今日のニュースのテーマは「増えゆく自殺者」
《憲法で唯一規定されない、「自らの命」、与党
はその弊害を懸念して「自らの命」のデジタライズ化をするため憲法改正に尽力しています。》
眠くなった