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 さぁどうする


 小春ちゃんは2人が走っていった後を見つめている。

 一緒に帰ってくるのを心配そうに見ていれば時間は稼げそうだ、よしそれで行こう。


「ウホホ」


 無理だった。語尾が上がらないゴリラ語全然わからん。

 なにか、なにかないのか…そうだ!


「あー、ええと、その、私と話すと小春ちゃんの喉がその度傷つく気がするから、携帯で会話してもいいかな?」


 何いってんだろ。何がそうだ!なんだよ。

 どれだけヤバい病原菌抱えてるんだろう私、それだったら話してないで小春ちゃん今すぐ避難するべきでしょ。


「ウホ」


 どっち?私は首を傾げた。あ、首の骨がボキっていった。


『いいよ』


 小春ちゃんは小さいバッグから携帯を取り出し、小さい画面に大きい手を使って器用に文字を打つと、メモ帳を私を見せた。

 ちなみに油断しきった私の恰好とは違い、小春ちゃんの恰好はゆるふけ系美少女服だ。ただしゴリラ。


『ありがとう!改めてよろしくね、さっきから変な態度ばっかり取ってごめんね。私可愛い女の子の前だとうまくお喋り出来ないみたいで』


 あれ、さっきこの理由使えばよかったんじゃない? 


『気にしないで。裕也君と仲いいんだね』

『どこが?』


 見せた後に慌てて文字を消し、再び画面を見せた。


『ラブラブです!』

『そっか、羨ましいな』

『どうして?』

『私、彼氏がいたことも友達がいたこともないから』


 あ、ゴリラだから(察し)

 この手の返信は困る。なんと返そうかと悩んでいる間に新しい文章を差し出された。


『お兄ちゃんが厳しくて彼氏が出来ないの』

『ブラコンなの?』

『そうかも。お兄ちゃん過保護で』

『そうなんだ』


 お兄ちゃんも、やっぱりゴリラなのだろうか。

 そもそも父と母、どっちがゴリラなんだろうか。両方?サラブレッドじゃないか。



『友達もお兄ちゃんか、私に寄って来る男の子目当ての子ばっかりで』

「オスゴリラ」

『なにか言った?』

『ごめん忘れて。それは酷い話だね』

『だから、今こうやって普通に話せるのが嬉しいんだ』


 ウホウホと笑う小春ちゃん。私は普通に話せてないけど、喜んでくれたならよかった。

 少しだけ仲良くなれた今なら聞いてもいい気がした。


『さっき、なんで石橋君に対して胸を叩いたの?』

『え、叩いてた?』


 ドコドコ音してたけど、見える側にしか聞こえないのか。


『そう見えただけかも』


 小春ちゃんは画面を見ながら手を止め、言葉に迷うように打ち始めた。


『多分、今まで見たことない人だったから』

『日焼けしてるから?』


 身長高いし、外国の人だと思ったのかな。


『違うの 連れてかれるって思って焦ったの』


 ・・・保健所に?




『あの2人まだ来ないね』


 話題を変えた。無理だ、どうしてもゴリラ方面にしか頭が行かない。


『来ないね』

『先帰ってもいいよ?無理やり引き止めちゃったしお兄ちゃん心配してるかも』

『大丈夫。女の子と一緒なら何も言わないと思う』

『そっか』


 小春ちゃんが地面をぐりぐりと回し始めた。

 怖い怖い怖い!土が削られていく!


『あのね』

『うん』

『これも何かの縁だし』

『うん』


 縁じゃないよ、乱数調整した結果だよ。

 駅の前で張ってましたとは到底言えない。


『今日家に来たりしない?あの、さっきの2人と一緒に』


行く

行かない

誤魔化す

 どうするライフカード!


 正直もう帰りたいが5割、行かないと石橋君に後で絶対怒られるから面倒が1割。

 小春ちゃんの家がになるが4割。

 


『行く!』


 楽しいことは大好きです!受験勉強のBGMがお笑いだった私に隙はない。


『よかった!昨日お菓子作ったから一緒に食べよう』


 私はもうツッコまないぞ。


『ありがとう。石橋君は一緒で大丈夫?』

『うん、怖いけど。嫌なわけじゃないから』



 ほう…、一体どういう意味なんだろう。

 ようやく小春ちゃんとラインを交換し、家までの時間と距離を聞いている所で2人が帰ってきた。


小池君は汗だくだし、石橋君は頬に殴られた跡がある。

拳で語り合う民族かな?今度は石橋君が近寄っても、小春ちゃんは何もしなかった。


そんなことで男泣きするな石橋君。


「お待たせ!」

「おかえりーありがとね」

「かなり手こずったけどなんとか連れてきたよ!」


 褒めて褒めて―と尻尾を振る幻覚が見える。

 どうしていいかわからず、視線をそらすことで回避した。


「今度はドラミングされなかったっ!よかったっ、本当によかった」

「喜んでいる所に更に朗報、これから小春ちゃんの家に行きます!」


「「えっ?」」


 純粋に驚く小池君、目にハートを付けた石橋君。

 どちらも驚かせることが出来て、ドヤンと胸を張った。





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