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2.5

『池田です、登録よろしく。』

家に帰ったらすぐポチポチと簡易に打った文を送信し、役目は終わったと携帯を放り投げた。


 受験中に見れなかったドラマを齧り付くように目を通していれば、1階から早くお風呂に入りなさいと母に声をかけられた。時計を見ればあら不思議、メールを送ってから2時間も経っている。ドラマ怖い、私の心も時間もきっちり奪われてしまった。パジャマと下着を掴み、口笛交じりにお風呂に向かう。


 しっかり1時間お湯につかって、気分も体もさっぱりだ。


 お風呂からあがって携帯を開けば、ラインが一件。

 タオルでガシガシと女子からぬ豪快さで拭きながらベッドに腰かけた、石橋君からの返事だ。

 彼はどんな文を送ってくるんだろうと、少しわくわくしながら目を通す。


『分かった、明日はよろしく頼む。』



 無難だ、これ以上ないくらい無難。無難オブtheイヤーなら優勝できるレベルで無難。とはいっても、自分も凝った文を送ってないならこんなものだろう。

 返事は無くていいかとホームボタンに押す前に、石橋君から再びラインがポン、と届いた。


『すまん、裕也がラインを知りたがっている。教えてもいいか?』


 思わず携帯を持ち上げて、裏側を覗き込んだ。何もない、私の携帯だから当たり前だけど。

 暗号かと思って縦読みを試みようと思ったがそもそも2行しかなくてそれも違う。裕也って誰だ?いや小池君だけど。


 私はしばし考えるに考えて、ピコピコと文を送る。


『いいよー』


 知りたいなら教えればいいのだ、断る理由は私にはない。

 髪の毛を乾かし終えて再び携帯を確認すれば、ラインが一件入っている。


 嘘です。


 私は自分自身に嘘をつきました。実は髪の毛を乾かしながらチラチラと何度か携帯の電源をつけては消し、10分前にはラインが来ていたことを知っていた。焦って返せばがっつくようで引かれるだろうと、待ちの姿勢の自分を誤魔化すようにようやくラインの画面を開いた。


確かに【YUYA】と書かれた名前の人物からのラインが届いていた。画像の写真がユニフォーム姿の池田君の時点で疑いようがない訳だが。ドッキリじゃなかったんだとちょっとホッとした。


『遅い時間にごめんね。こんばんは小池ちゃん、分かるかな?小池裕也です、大貴にライン教えてもらいました、明日はよろしくね。』


最後には男子が使うにしては可愛いスタンプ。

モテそう。流石、私はその場で一人拍手をした。かゆい所まで手が届きそうな心配りを称賛しよう。

池田君はやっぱり一味違うな。うんうん、と評論家のようにうなずきながら機械的に手を動かす。無難に無難に、変な文は送らないようにしなければ。


『こんばんは。もちろん分かるよ、こちらこそよろしくね!』


 失礼でもなく、絶妙に返信しにくいようないい文が出来た。実はそんなにラインは好きじゃない。

 最後に、絶妙に可愛くないひよこが涎を垂らしているスタンプを送信したらはい完成。


 ・・・・・あっ



 私は既読の文字が浮かび上がると同時に布団に顔を押し付けた。


「馬鹿わたしっ!なんであんなキモイの送った!」


 油断して女友達にいつも送るスタンプを使ってしまった

 抑えきれない衝動を表すようにヘドバンをした。いい感じだ、このままライブにだって行けてしまう。


 池田君がラインを見て苦笑いしてる顔しか想像できない。

 なんで可愛いスタンプ使わなかったんだろう。おしゃれな友達に使う用もちゃんと買ってあったのに。


『そのスタンプ面白いね!俺久しぶりに小池ちゃんと話せるの結構楽しみなんだ、また明日!』



「イケメーンには勝てなかったよ」


勝負、してないけど



 ついに私はベッドから転げ落ちた、でも悔いはない。

 一時間程自分への反省も兼ねてゴロゴロした後、ようやく私は布団に入った。

 それでも布団に入って目を閉じたら惨状が蘇ってきて、遅くまで眠れなかった。



明日、遅刻しないといいな…


いろいろあった部分になります。

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