第九劇『剛腕のデッカス』
リュト「死んでる…って何でお前に言われなきゃなんないんだよ!」
ライファ「別に、本当のことを言ってるだけだ。」
リュト「いい加減にしろっ!何も知らないくせに、勝手なことばかり言うなっ!」
ライファ「ああ、確かにオレは何も知らねえ。この街のことやお前さんが…怒りながら涙を流してる本当の理由なんかな。」
リュト「!」
ミトス「…。」
ファム「ライファ、少し言い過ぎ…。」
ミトス「(ファムを止める)」
ファム「ミトス…。」
ミトス「大丈夫。」
ファム「…。」
ライファ「悔しいんだろ?」
リュト「あ、当たり前だ!」
ライファ「…死ぬのが怖ぇのか?」
リュト「……それは…。」
ライファ「…あの嬢ちゃんがいるからだろ?」
リュト「え?」
リリ「お兄ちゃん…。」
リュト「リリ…。」
ライファ「自分が死ねば、妹が一人残されちまう。だから…悔しくても、戦いたくても、それを選ぶことは出来ない。違うか?」
リリ「お兄ちゃん、ケンカは嫌だよ…。お兄ちゃんケガしちゃうよ!」
リュト「…リリ。」
ライファ「もう一度聞くぜ、仇を討ちたくはねえのか?」
リュト「…討ちたいさ。当たり前だろっ!親父が殺されたんだぞ!たとえ殺されたって今すぐヤツをぶん殴ってやりたいさっ!で、でも…。」
ライファ「へへ、やっぱな。」
リュト「え?」
ライファ「そういう顔も出来るんじゃねえか!」
リュト「…。」
ライファ「じゃあ聞くぜ、『剛腕のデッカス』とやらがどんな野郎なのかをな。」
リュト「え…まさか!」
ライファ「仇を討ちてえんだろ?手貸してやるぜ。」
リュト「お、お前馬鹿か?お前なんかが勝てる相手じゃないんだぞ!死ぬに決まってる!」
ライファ「死なねえよ。」
リュト「う…。」
ライファ「間違いなく、ここはオレの死に場所じゃねえ。その『剛腕のデッカス』ってふざけたヤツの死に場所にはなってもな。」
リュト「な…何でそんな自信…。」
ライファ「オレは自分を信じてっからだよ。」
リュト「……おれも…おれも自信があれば…。」
ライファ「んなもんオレを見てりゃいい。」
リュト「え?」
ライファ「オレが見せてやるからよ。自信ってのが何なのかをな。」
リュト「……本当に変なヤツだお前。」
ライファ「へへ。つうわけだ、付き合ってくれよミトス。」
ミトス「見てればいいんでしょ?」
ライファ「ああ。」
ファム「骨は拾ってあげるからね!」
ライファ「あっそ。」
ナリィ「途中からだから話がよく見えないけど…まあ、ライファなら大丈夫かな?」
ライファ「つうわけだ、早速聞かせてくれ。」
リュト「…一つだけいい?」
ライファ「何だ?」
リュト「何で助けてくれるんだ?」
ライファ「……さあな、お前さんの親父さんに惚れたから…かな。」
リュト「え?」
ライファ「困っているヤツがいれば、損得抜きで動け、だろ?」
リュト「あ…。」
ライファ「へへ。」
リュト「…ありがとう。」
ライファ「礼はまだ早ぇよ。」
リュト「……どうやら『デッカス』のヤツは街から出てったみたいだ。話すよ、『デッカス』のことを。」
(リュトの過去)
リュト「なあ、親父。」
親父「お父さんと呼べお父さんと!」
リュト「親父、今日も客来ないじゃんかぁ。」
親父「なあに、その内繁盛するさ!がはは!」
リリ「お父ちゃん…。」
親父「うおぉぉぉーーーーっ!リリちゃん、起きたかぁ!相変わらず可愛いなぁ!ベリ〜キューツッ!」
リリ「えへへ、リリね、今日一人で服畳んだんだよ。」
親父「な、な、何て賢いんだ!可愛いし賢いし、お父ちゃんは嬉しいぞっ!天才リリちゃん、ベリ〜ナイスッ!」
リュト「バカじゃねえの…。なあ、親父。」
親父「お父様と呼べお父様と!」
リュト「変わってんじゃねえかよっ!」
リリ「ケンカはダメだよ!」
親父「はぁ〜い!わっかりましたぁ〜!」
リュト「恥ずかしい……ん?誰か来たのかな?」
住人「大変だ!」
親父「何だ何だ、騒がしいぞ!」
住人「『ツブキ』さん!怪物が…怪物が…。」
ツブキ「落ち着け!一体どうしたってんだ?」
住人「あ、ああ…。街に怪物が現れて、暴れまくってるんだよ!」
ツブキ「何だとっ!」
住人「立ち向かうにも半端じゃないんだよ!ヤツの強さが!」
ツブキ「何てこった…。」
住人「幸いにも、ヤツは腹が減ってるみたいで、酒と食べ物を渡せば退くとか言ってるんだよ!だからツブキさん、外に出ず、ここにいてくれ!」
ツブキ「……どんなヤツだ?」
住人「『剛腕のデッカス』ってヤツは言ったが。」
ツブキ「…ダメだな。」
住人「ダメって何がだい?」
ツブキ「そいつぁ札付きのワルよ。恐らく腹が減れば、また襲いに来る。」
住人「そ、そんな!」
ツブキ「…リュト、リリ、外に出るんじゃねえぞ!」
リュト「親父は!」
ツブキ「おれはヤツを倒す!」
リュト「何言ってんだよ!そんなことより早く逃げる準備を!」
ツブキ「リュトッ!」
リュト「!」
ツブキ「男にはやらなきゃならねえ戦いってのがある。」
リュト「…。」
ツブキ「それにな、そんなヤツが暴れたら皆困るだろ?」
リュト「死んだらどうするんだよ!」
ツブキ「いつも教えてんだろ?困っているヤツがいたら、損得抜きで動けってな。」
リュト「親父!」
ツブキ「ダディと呼べダディとっ!」
住人「あ、ツブキさん!」
リュト「親父!」
リリ「お兄ちゃん、お父ちゃんどこ行くの?」
リュト「リリ…。くそっ、おっちゃん、リリを頼むよ!」
住人「リュトくん!」
リリ「お兄ちゃん!」
住人「待ちなさい!」
リュト「離してくれよ!親父は普通の人間なんだ!死ぬかもしれないんだ!」
リリ「ふぇ…うわぁぁぁーーーん!」
住人「行けば親父さんの邪魔になる!」
リュト「離してくれっ!」
住人「あ、リュトくん!」
(リュトは外へ)
リュト「親父っ!」
ツブキ「ぐ……リュト…何故来た…。」
リュト「だって!」
?「何だ何だぁ?このガキガキは?」
リュト「ひっ……こ…こいつが『デッカス』?」
デッカス「さてさてと、俺様に逆らうとはバカバカなヤツヤツだ。おとおとなしく酒と食べ物を渡せば良かったものものを。」
ツブキ「くっ、リュト、下がってろ…。」
リュト「親父っ!」
デッカス「後々にこういうバカバカが出ないように、見せしめが必要だなだな。」
住人「ツブキさん!」
デッカス「さあさあ、死ぬんだなだな。はぁぁぁ…。」
リュト「腕が太く…。」
デッカス「先ず先ずは、俺様の技を見せてやるやるぅ!『アームプレス』ッ!」
皆「うわぁっ!」
デッカス「ははぁ…。」
リュト「じ、地面が…。」
ツブキ「…逃げろリュト。」
リュト「嫌だ!こんなの…こんなの当たったら死んじゃうぞ!早く逃げるんだよ!」
ツブキ「……死なねえよ。」
リュト「親父っ!」
ツブキ「この怪物野郎がっ!」
デッカス「ふふんっ!」
ツブキ「がはっ!」
デッカス「あはぁ…さあさあ、あと何秒持つかなかな?」
ツブキ「が…ぐ…。」
リュト「この野郎っ!」
住人「よせリュトくんっ!」
リュト「てやっ!」
デッカス「痛……おいガキガキ、これは反乱だなだな?」
リュト「お前なんか死んじゃえっ!」
デッカス「テメエが死ぬんだよだよぉ!『アームプレス』ッ!」
リュト「う、うわぁぁぁーーーっ!………え?」
ツブキ「無事…か…リュト…。」
リュト「お…親父?」
デッカス「ちぃ、当たったのはテメエかよかよ。」
ツブキ「ぐはっ!」
リュト「親父っ!」
住人「も、もう止めてくれ!要求には応じる!だからこれ以上はもう!」
デッカス「ふふん、最初から素直にそうそうすればいいんだよだよ。」
住人「好きなだけ持っていけ…。」
デッカス「素直なヤツヤツは好きだぜだぜ!」
(デッカスは去る)
住人「ツブキさん!」
リュト「親父っ!」
ツブキ「がはっ!はあはあはあ……リュト……悪ぃなぁ。」
リュト「な、何で謝るんだよ!」
ツブキ「リリ…にも…悪ぃと言っといて…くれ…。」
リュト「だから何で謝るんだよぉっ!」
ツブキ「……いい…か?男…なら……後悔するような…生き方…は……するな。」
リュト「おいっ!」
住人「リュトくん…。」
リュト「親父っ!」
ツブキ「パパと…呼べ…パパ…と。」
リュト「何を…言ってんだよ…。」
ツブキ「リュト…リリを守れ。」
リュト「うう…。」
ツブキ「それから…な…リリに男が…出来たら…そいつを…な…殴り飛ばせ…。」
リュト「親父…。」
ツブキ「リュト…しっかりな…。」
リュト「親父?……そんな…親父ぃーーーーーっ!」
(現代へ)
リュト「…。」
ライファ「ヤツはいつ来るんだ?」
リュト「明日…だよ。」
ライファ「そうか。そんじゃ、とりあえず…。」
ミトス「ご飯だね!」
ライファ「だな。」
リュト「え?」
ファム「何作ればいいのかな、リュトくん?」
リュト「え…あ、今の話を聞いて怖いとか思わないのか?」
ライファ「別に。んなことより酒はあるんだろうな酒は?」
リュト「な、何だこいつら…。」
ミトス「大丈夫だよ。」
リュト「え?」
ミトス「『デッカス』はライファが倒してくれるよ。」
リュト「アイツが…?」
ライファ「おう、心配すんな。それより酒はどこだよ?」
リュト「……はは、参ったよ。」
ナリィ「…ミトス。」
ミトス「うん。多分『勁使い』だね。」
ファム「よくあるよねぇ。『勁使い』に目覚めて一般人を相手に優越感を得ようとするヤツ。あのバイパーもそんな類だったもんねぇ。」
ミトス「『勁』は使い方次第で『薬』にも『毒』にもなる。決して弱者を踏みにじるためにある『力』じゃないんだ。」
ナリィ「ま、ライファが教えてやるだろうね。本当の『力』は何のために使うのかをさ。」
リリ「…。」
ナリィ「え?」
リリ「えへ、遊ぼ!」
ナリィ「…はいはい。」
ミトス「…ライファはリュトに自分を重ねてるんだろうなぁ。」
ファム「え?今何て?」
ライファ「おーい、お前らも手伝えよな!」
ミトス「今行くよ!」
ファム「…ミトス?」
ミトス「デッカスも思い知るだろうね。」
ファム「え?何を?」
ミトス「本当の『剛腕』はどっちかということ。」
ファム「むふ、そうね。」
(翌日)
デッカス「さあさあ、今日の分をさっさと出せ出せぇ!」
住人「ほら、今日の分だ…。」
リュト「お前なんかにやるものなんてないっ!」
住人「ちょ、リュトくん!」
デッカス「またまたコイツかよかよ。」
リュト「おれは、お前なんか怖くないっ!」
デッカス「ガキィ…。」
リュト「おれは…おれは男だっ!」
住人「リュトくん…。」
デッカス「死にてえのかなかなぁ?」
ライファ「死ぬのはテメエだよ!」
デッカス「ん?誰だ誰だ!」
ライファ「よく吠えたな、リュト。やっぱ男はそうでなくちゃな。」
リュト「…はは。」
デッカス「何だ何だ、キサマ?」
ライファ「オレは……テメエを殺す者だよ。」
デッカス「あぁ?何だと?」
ライファ「ウゼェな、一回で聞きやがれバカ野郎。顔だけでなく耳まで悪ぃのか?同情するぜ。」
デッカス「テメエテメエッ!殺す殺すっ!」
ライファ「出来るかな?さあ、かかって来いよ三流。格の違いってやつを見せてやるぜ。」
次回に続く