第八劇『次の街、チェリータウン』
ミトス「じゃあダルトンさん、僕達もう行くね。」
ダルトン「本当にありがとうの。」
ミトス「ううん。ペキもメルも元気でね。」
ペキ「はい、本当にありがとうございました!」
メル「猫さんもありがとね。」
ナリィ「猫じゃないんだけどな…はは。」
ダルトン「是非また来て頂きたい。歓迎致すぞ。」
ライファ「そん時ゃ、また酒頼むぜ。」
ファム「ミトスが来るなら、アタシも来るわ!」
ミトス「それじゃ、またね!」
ペキ「本当に…本当にありがとうございましたぁ!」
ナリィ「元気でねぇ!」
メル「猫さんもね〜!」
人々「ありがとう!気を付けてなぁ〜!」
ミトス「さあ、行こう!『ソーラレイ遺跡』を目指して!」
(村から出る)
ファム「ねえねえミトス!」
ミトス「何?」
ファム「『ソーラレイ遺跡』まで、どうやって行くつもりなの?」
ミトス「そうだね……『ソーラレイ遺跡』があるのは、『イエロー大陸』にある『ハッサク風穴』の奥らしいから、このまま西に真っ直ぐ進めばいいんだよ。」
ファム「……ちょっと待ってね…。ん〜と………まだまだ全然遠いじゃない!」
ミトス「そうだね。」
ファム「そうだねって…。」
ライファ「オレ達がいるのは『レッド大陸』の『スワン山』だろ。真っ直ぐ行くとなると…ここから一番近い街が『チェリータウン』で……おいおい、確かに先は長ぇな。」
ファム「ね〜ミトス、ミトスってば『ソーラレイ遺跡』目指してどれくらいなの?」
ミトス「まだ目指し始めたばかりだよ。『ソリュート』が教えてくれなかった?」
ファム「お師匠様は、ミトスが目指してるのは『ソーラレイ遺跡』だって教えてくれただけなのよ。」
ミトス「そっか…。宴の時にも言ったと思うけど、僕とナリィは、各大陸の主要遺跡を調べてるんだ。といっても、まだ調べ始めたばかりだけどね。」
ファム「ふ〜ん。」
ナリィ「そして、色々調べてる内に、『ソーラレイ遺跡』には『青白く光る鉱物』があるらしいんだよね。」
ファム「もしかしてそれが?」
ミトス「…確証は無いけどね。」
ライファ「手掛かりはそれだけか?」
ミトス「まあね。」
ライファ「……まあ、行くしかねえってわけか。」
ファム「もし違ってたら?」
ミトス「また探すよ。」
ファム「ミトス…。」
ライファ「…ま、お前らしいわな。」
ファム「まあ、そんな一途なところもたまらなく好きなんだけどね!」
ミトス「ありがとうファム、ライファ。」
ナリィ「んじゃ、さっさと『イエロー大陸』に行くよ!」
ミトス「うん!先ずは『チェリータウン』だね!」
(『スワン山』を出る)
ミトス「ここを真っ直ぐ行けば『チェリータウン』だね。」
ナリィ「…今回はいないみたいだね。」
ミトス「そうだね。」
ファム「いないって誰が?」
ライファ「女だったりしてな?」
ファム「なっ!そそそそそんなわけないわよっ!ねえっ!ミトス!違うわよね?」
ミトス「……どうだろうね?」
ファム「そ、そんなっ!」
ライファ「くくく、ミトスも隅に置けねえなぁ。」
ファム「うう……ミトスゥ…。」
ナリィ「ぷっ、あはははは!」
ファム「…え?」
ナリィ「ミトス、そんないいもんじゃないだろ?あはは!」
ファム「…どういうこと?ミトス?」
ミトス「ごめんごめん。実はね、熱烈なファンに追われてるんだよね。」
ファム「ファ、ファン!じゃやっぱりぃ…。」
ナリィ「あはは!違う違う。ファンには違わないけど、ファンはファンでも、好意を持つファンじゃなくて、戦意を持つファンなんだよね。」
ファム「戦意って?」
(『砂十字』のことを説明)
ライファ「またウゼェ奴らに好かれたもんだな?」
ファム「ちょっと待って…『砂十字』って言えば、確かボスが…。」
ミトス「知ってるの?」
ファム「んとね、ミトスを探してる途中に、人を襲ってる連中がいたのよ。」
ライファ「そして、ファムが馬鹿力でそいつらを瞬殺し…!」
ファム「おらっ!」
ライファ「ぐっ…。」
ナリィ「瞬殺だ…。」
ミトス「そのボスがどうかしたの?」
ナリィ「確かアクスって言ったよなぁ。」
ファム「やっつけた奴がね、言ってたのよ。『俺達には、ボスが…鈴の男がついてる』って。どういう意味か分かる?」
ナリィ「『鈴の男』?」
ミトス「……。」
ファム「ミトス?」
ミトス「……。」
ファム「ミトスってば!」
ミトス「え?あ、何?」
ファム「どうしたの?考え込んで…。」
ミトス「……ねえファム、本当にその人達は『砂十字』だったの?」
ファム「え?」
ライファ「それは間違いねえと思うぜ。」
ナリィ「あ、無事だった。」
ライファ「ふ、慣れてるからな。」
ミトス「ライファ…。」
ライファ「ん?ああ、そいつら自身がそう言ってたし、襲われてた奴にも聞いたしな。」
ファム「そうそう、きっと『砂十字』のボスは『鈴』をつけてる奴なんじゃないの?そのアクスだっけ?」
ナリィ「え…でも…ミトス。」
ミトス「…うん。」
ライファ「どうしたってんだ?」
ミトス「僕達が知ってる『砂十字』のボスは、『鈴』なんかつけてなかったんだよ。」
ファム「じゃあウソなんじゃないの?そのアクスってのは『鈴の男』の部下で、ただボスの名を借りてただけなんじゃないの?」
ミトス「……そうは思えないけど…。」
ナリィ「オイラも…。」
ライファ「……ま、考えていてもしょうがねえ。次に会った時にでも聞けばいいだろ?」
ミトス「そう…だね。」
ファム「ああ、見えてきたわよ!」
ナリィ「『チェリータウン』だ!」
(『チェリータウン』に到着)
ファム「わぁ〜変わった街だわ〜!」
ライファ「家が全部『チェリー』の形してやがる。」
ナリィ「だから『チェリータウン』ってんだね!」
ミトス「でも、あまり人を見かけないね。」
ファム「まだ昼過ぎなのにね。家の中にはいるみたいだけど…。」
ミトス「こんなにいい天気なのにね。」
ナリィ「なんか空気もピリピリしてるよね。」
ミトス「…。」
ライファ「…ミトス、ここでは何か用でもあるのか?」
ミトス「特には無いよ。でも、このまま行くと、途中で日も暮れちゃうし、今日はここで休むかな。先ずは宿探しだね。」
ナリィ「それはいいんだけどさ……金あんのミトス?」
ミトス「あ…。」
ライファ「おいおい…それでどうやって宿に泊まる気だ?」
ミトス「ライファ、お金持ってないかな?」
ライファ「悪ぃがオレは金なんか持たない主義だからな。」
ナリィ「どんな主義だよ。」
ミトス「う〜ん、じゃあ仕方無いけど、このまま進んで日が沈んだら野宿かなぁ。」
ファム「ノンノンノン、大丈〜夫!」
ミトス「え?ファム?」
ファム「アタシはライファと違って計画性のある女なの!」
ナリィ「それじゃ…!」
ファム「むふ〜お金なら、アタシが持ってるわ!」
ミトスとナリィ「やったぁっ!」
ライファ「…。」
ミトス「さすがファムだよ!」
ファム「そうなのよ〜、いつ結婚してもいいように、いいお嫁さんになれるように、計画性はアタシの魅力なの!いつ結婚してもいいように…ねえミトス。」
ミトス「へ、はは…ともかく助かったよファム。」
ファム「むふ〜お金は大事に……あれ?おかしいな…確かここに…。」
ミトス「ん?どうしたのファム?」
ファム「な…無い…。」
ミトス「えっ!」
ファム「どうしてよっ!確かここに入れてたはずなのに!」
ミトス「本当にこの袋に入れてたの?」
ファム「間違い無いわ!まだ一万セルは残ってたはずなのに〜〜〜〜っ!」
ナリィ「…ん?何飲んでんのさライファ?」
ライファ「ぷはぁ、んん?これか?酒だよ酒。スッゲエ高級らしいぜ!」
ナリィ「そんなもん持ってたっけ?」
ライファ「買ったんだよ。『つばめ村』でよ。」
ナリィ「買ったって…お金は持たない主義じゃなかったっけ?」
ライファ「ああ、んなもんファムの金を借りたに決まってんだろ?」
ナリィ「……うわ!」
ライファ「この酒はな、一万セルもすんだけどよ、ギリギリ足りて良かったぜ!あはは!」
ファム「お〜ま〜え〜か〜!」
ライファ「ん?何だ?宿決まったか?」
ファム「決まるかぁーーーーっ!」
ライファ「うわぁぁぁーーーー……。」
ナリィ「…これは仕方ないよね。」
ミトス「ライファらしいって言ったら、ライファらしいけどね。」
ファム「アタシの計画を舐めとんのかっ!」
ライファ「た…助け…。」
ファム「死んで詫びろ…。」
ライファ「いやぁぁぁーーーっ!」
ナリィ「自業自得だよね…完全に。」
ミトス「やっぱり野宿するしかないみたいだね。」
ファム「お前のせいだ!このこのこのこのぉ!」
ライファ「ああーーーーっ!」
?「ん?何だお前ら?」
ミトス「え?」
?「こんなトコで何を騒いでんだ?」
ミトス「え…と……お金がね…。」
?「何だ?文無しか?」
ミトス「はは…そうなんだ。」
?「……来いよ。」
ミトス「え?」
?「汚い寝床でもいいんなら来いよ。」
ミトス「いいの?」
?「泊まるトコが無いんだろ?」
ミトス「そうだけど…。」
?「来るのか来ないのかハッキリしろよ!こっちも暇じゃないんだから!」
ミトス「ああ、ありがとう、お世話になるよ。」
?「んじゃついてこいよ。」
ミトス「うん、行くよ三人とも!」
ナリィ「ほら二人とも、行くよ!」
ファム「待って待って、ミトス〜!」
ナリィ「大丈夫…?」
ライファ「か…紙一重…でな…。」
(少年について行く)
?「ここさ。ただいま。」
ライファ「一応宿なんだな。良かったなぁ、宿に泊まれてよ!」
ファム「…。」
ライファ「わ、悪かったって…。」
?「お兄ちゃん?」
?「ただいま。」
?「…この人達は誰?」
?「客だよ。文無しのな。」
ナリィ「文無し文無し煩いなぁ。」
?「…。」
ナリィ「な、何?」
?「猫ちゃんが喋った?」
ナリィ「もういいよ…そのネタ。」
ミトス「ところで本当に良かったのかな?」
?「気にすんな。困ってる奴がいたら損得抜きで動け。それが親父の言いつけなんだよ。」
ミトス「ありがとう。」
?「その代わり、飯を作るのは手伝ってもらうからな。」
ミトス「もちろんだよ!じゃあ僕達のことを教えておくね。僕はミトス。」
ファム「アタシはファムよ。」
ナリィ「オイラはナリィ。そんで、顔がボコボコなのは、ライファってんだ。」
ライファ「よ…よろしくな。」
?「変わった猫がいるんだなぁ。まあいいや、おれは『リュト』、こっちは妹の『リリ』だ。」
リリ「猫ちゃん、一緒に遊ぼ!」
ナリィ「はぁ…もう猫でいい…ことはないけど…まあいいや…。」
リリ「リリのお部屋行こ!」
リュト「あまり暴れたりすんなよ!」
リリ「はぁ〜い!」
ミトス「……そう言えば、さっき言ってた親父さんは?」
リュト「……いないよ。」
ファム「まさか…。」
ライファ「死んだのか?」
リュト「違う!」
ライファ「ん?」
リュト「殺されたんだ……『アイツ』に…。」
ライファ「『アイツ』?」
(外が騒がしくなってきた)
ライファ「何だ?」
ファム「悲鳴も聞こえるわよ?」
リュト「来たんだよ。」
ミトス「…誰が?」
リュト「……『剛腕のデッカス』さ。」
ミトス「何者なの?」
リュト「知らないのか?怪物さ、親父を殺した。」
ライファ「!」
ファム「…お父さんを殺されたの?」
リュト「…ああ、馬鹿な親父だよ。敵うわけないのに向かって行って殺されたよ。」
ライファ「……仇を討ちてえとは思わねえのか?」
ファム「ちょっとライファ!」
リュト「おれは親父みたいな馬鹿じゃないからな、負ける戦いなんてしないんだよ。」
ライファ「人としては賢いな。…だが男としては死んでんなお前。」
次回に続く