第四十七劇『ラナという世界』
ガレス「陛下!陛下!どちらにいらっしゃるのですか!陛下!」
シュア「ん?どうされました大臣?」
ガレス「シュアか、いや、陛下がどこにもおらぬのじゃ。」
シュア「陛下が?」
ガレス「うむ。全く…また侍女達と遊んでおられるのかの?」
シュア「…ん?」
ガレス「どうした?」
シュア「いえ、玉座に……手紙?」
ガレス「手紙じゃと?」
シュア「これは…陛下の筆跡です!」
ガレス「な、何じゃと!な、何て書いてあるんじゃ!」
シュア「は、はい!」
シャイディアの手紙「しばらく旅に出る。まあ心配すんな!土産楽しみにしててくれや!んじゃな!」
シュア「だそうです。恐らくはミトス達についていったのでしょう。」
ガレス「あ、あ、あ、あんの馬鹿国王がぁぁぁーーーーっ!」
シュア「ふぅ、相変わらずだな。」
ガレス「あ…胃が…あ…熱い…。(倒れる)」
シュア「ガレス大臣!はぁ…どうか無事でいて下さいよ陛下。」
(ミトスは)
ミトス「着いたよ!」
シャイディア「おぉ!ここが『ラナ』かぁっ!」
フォテ「す、す、すっごぉいっ!ま、まさかあの伝説の『ラナ』に来れたなんてっ!あ、そうだ!さっそく記録を取らなきゃ!えへへ、調べさせてもらいまぁすっ!」
ナリィ「ありゃりゃ、やっぱそうなるよね。」
シャイディア「ん……でも想像してたのと違うな…砂漠みてえじゃねえか。」
ミトス「…。」
フォテ「僕らの世界より気温、湿度共にかなり低いですね。寒いぐらいですね…ん?この土…凄く渇いてる…土というより…。」
シャイディア「砂だな。」
フォテ「そういえば…。」
ミトス「フォテ?」
フォテ「ミトスさん、以前ミトスさんから聞いた『ラナ』は、緑豊かで多くの生命が育まれた星だって…ですがこれは…。」
ライファ「これが今の『ラナ』だ。」
フォテ「一面…砂ばかりですね。本当に砂漠みたいです。」
シャイディア「緑なんか見当たらないよなぁ。」
フォテ「それに…空が暗いですね。まるで今にも雨が降りそうです。」
ミトス「ここら辺はまだ暖かい方みたいだけど、今や『ラナ』の半分以上が緑を失い、マイナス100度を下回ってるんだ。もちろん、そんなところに生物も生きれるはずないし、そこには枯渇した世界だけが広がっているんだ…。」
ライファ「これも全てはヘルユノスが、『エーデルワイス』を拐いやがったからなんだ。」
シャイディア「誰だ?」
ライファ「あ、そっか、シャイは知らなかったな。『エーデルワイス』は言ってみりゃ、この星の電池みたいなもんだ。」
シャイディア「電池?」
ライファ「ああ。」
シャイディア「人じゃないのか?」
ライファ「いいや、ミトスと同じ『ヴァンパイア』だ、純粋のな。しかも、かつて存在した王国の姫だ。」
シャイディア「姫が電池?」
ライファ「この『ラナ』はな、元々は何も無いただ砂に覆われただけの星だったんだ。」
シャイディア「今みたいなか?」
ライファ「ああ。だがある時、一つの生命体がこの星に降り立った。それが『ヴァンパイア』だ。」
シャイディア「ほぅ。」
ライファ「そしてその『ヴァンパイア』には『特殊な能力』があった。」
シャイディア「何なんだ?」
ライファ「自らのエネルギーで、星を活性化…つまりは豊かな星にすることが出来る能力があった。」
ミトス「そう、そしてその能力で、死の星だったこの星を、生命溢れる緑豊かな星にしたんだ。」
シャイディア「す、凄いな…。」
フォテ「は…はい…。」
ミトス「『エーデルワイス』は、その『初めのヴァンパイア』の血を濃く受け継いだ人物だったんだ。」
ライファ「この星はな、エネルギーを送りこまなきゃ、自然と戻っちまうんだ…元の姿にな。」
シャイディア「だからか…だから『エーデルワイス』がいなくなった『ラナ』は、まるで食べ物を失った生物のように、段々ミイラ化じゃねえけど、弱ってしまうんだな!」
ライファ「まあ、弱っちまうというよりは、元々あった姿に戻るんだけどな。」
ミトス「どんなものにも、あるべき姿があるからね。」
ライファ「ミトス…。」
シャイディア「…ん?ちょっと待てよ、だったらよ、他の『ヴァンパイア』には出来ないのか?同じ『ヴァンパイア』なんだろ?」
ミトス「確かに、僕やライファの中には『初めのヴァンパイア』…僕らは『ファースト』って呼んでるんだけど、その『ファースト』の血はあると思う。」
シャイディア「だったら!」
ライファ「無理なんだよ。」
シャイディア「何でだよ?」
ミトス「その能力は、一子相伝みたいなもので、今は『エーデルワイス』にしか使えない能力なんだ。」
ライファ「代々その能力は一人しか受け継がれないんだ。だから『エーデルワイス』が死なない限り、新たな『ラナリス』は誕生しねえんだよ。」
シャイディア「『ラナリス』ってのが…。」
ライファ「ああ、『ファースト』の能力を受け継いだ人物のことをそう呼ぶんだ。」
ミトス「『ラナリス』がいなくなったら、この星は元に戻る。『ラナリス』のエネルギーを送らない限り、美しかった『ラナ』には戻らない。」
シャイディア「そうか…。」
ライファ「…さて、いつまでもここにいても仕方無え。早く行こうぜ。」
フォテ「ど、何処に行くんですか?」
ライファ「『アオーク』、オレ達の拠点だ。」
ナリィ「でもさ、ここがどこか分かんの?」
ライファ「あったり前だろ!え〜と……え…と…。」
ナリィ「ここがどこか分かんないのに、『アオーク』に行けんの?」
ライファ「う、うっせえなっ!ああ!ちくしょう!適当に穴開けたからかっ!」
ナリィ「どおすんのさ?こんな砂ばっかのとこで。」
ライファ「い、今考えるから待て!う〜ん…。」
ミトス「…皆、少し離れててくれる?」
シャイディア「ん?」
ライファ「いきなり何だよ。」
ミトス「いいから離れてて。」
フォテ「わ、分かりました!」
ライファ「…?」
シャイディア「これくらいでいいか!」
ミトス「うん!よし……『青丸』っ!」
ライファ「そうかっ!」
ナリィ「え?何?」
ライファ「ミトスの奴、『青丸』を下に向けてうちやがった!」
ナリィ「だから?」
ライファ「ミトスを見てみろ!」
ナリィ「…ああっ!」
シャイディア「ミトスが飛んだっ!」
ライファ「ああやって『青丸』の推進力で上に飛んだんだ!」
ナリィ「で、でも何で?」
ライファ「上からなら、周りがよく見えるだろ?」
ナリィ「なるほど!」
ミトス「……ん?アレは…!」
フォテ「ミトスさんが降りてきます!」
ミトス「ふぅ…。」
ライファ「ミトス!」
ミトス「…あっちに村があった。」
ナリィ「やったぁっ!」
ライファ「よっしゃ!んじゃ早速!」
ミトス「…。」
ライファ「どうしたんだよ?」
ミトス「ううん、何でもないよ。」
ライファ「そうか?」
ミトス「行こう!」
ライファ「あ、ああ…。」
(村へ)
シャイディア「見えたぜ!」
フォテ「うわぁ、アレが『ラナ』の村なんですね!」
ミトス「…。」
ナリィの心「ミトス?」
シャイディア「よし、着いたぁっ!……って臭っ!な、何だこのニオイ!」
フォテ「ひ…酷いニオイです…。」
ライファ「こ、この村は!おいミトス!」
ミトス「う…うん…まさかと思ったけど…やっぱりそうだったんだね。」
ライファ「じ、じゃあここは…!」
ミトス「うん……『腐死者の領域・デッドエリア』だよ。」
シャイディア「何だそれ?う…それにしても凄いニオイだな…。」
ライファ「ミトス、お前の様子がおかしかったのは…。」
ナリィ「これのせいだったんだね。」
ミトス「ライファ、ヤバイとこに穴を開けちゃったね。」
ライファ「ま…まあな…。」
ナリィ「うう…それにしても…鼻がもげるぅ〜っ!」
フォテ「こ、この村…家や木とか…全てが腐ってますよ!」
ミトス「…。」
ライファ「ヤバイぜミトス!早くここから!」
ミトス「!」
ライファ「どうした?」
ミトス「もう…遅いみたい。」
ライファ「何?」
ミトス「奴らに見付かったみたいだ。」
ライファ「マ、マジかっ!」
ミトス「…来るっ!」
フォテ「ひ、ひぃっ!じ、地面が動いてますよっ!」
シャイディア「何だ?うっ!な、なんつぅニオイだ!」
フォテ「ミ、ミトスさんっ!これは一体っ!」
ミトス「実はね…『ラナ』には大まかに三つの勢力があるんだよ。一つは僕達『不死者・ヴァンパイア』、そしてもう一つは…『腐死者』…いわゆる『ゾンビ』だよ!」
フォテとシャイディア「ゾンビィィィーーーーーーッ!」
フォテ「『ゾンビ』って、あの『ゾンビ』ですか?」
ミトス「そうだよ、この『ラナ』に住むもう一つの『死を超越した者』…それが『腐死者・ゾンビ』だよ!」
ライファ「くそっ!よりにもよって、こんな場所に来ちまうなんてな!失敗した!」
フォテ「そ、そそそんなに危険なんですか?」
ライファ「ああ、奴らには理性が無ぇ!あるのはたった一つの欲だけだ!」
シャイディア「欲って何だ?」
ライファ「…。」
フォテ「ライファさん?」
ライファ「…食欲だ。」
フォテ「え…そ…それって…!」
ライファ「もちろん奴らの今のターゲットは…オレ達だな。」
フォテ「ひぃやぁぁぁーーーっ!」
ミトス「来るよっ!」
ゾンビ1「ハラ…へ…減った…。」
シャイディア「人の形してやがんだな!」
ライファ「気を付けろよ!人だけじゃないぜ!」
ゾンビ2「…。」
シャイディア「犬もいんのか!」
ゾンビ2「メェ〜。」
シャイディア「ヤギかよっ!つかまぎらわしいって!」
フォテ「あ…ああ…コッチには馬ですよ!」
シャイディア「馬っ!」
ゾンビ3「いや、鹿です。」
シャイディア「鹿かよっ!つか喋れるのかよっ!」
ゾンビ3「メスです。」
シャイディア「どうでもいいわっ!」
ライファ「ちっ、ミトスどうする?」
ミトス「数が多い…。」
ライファ「ああ、しかもこいつらはウゼェし、しぶてぇし……くそっ!」
ミトスの心「どうする…『火』なら奴らを倒せるけど…もし『アレ』が出てきたら…。」
ライファ「ミトス!」
ミトス「とにかくこの『デッドエリア』を抜けるしかないよ!」
ライファ「てことは。」
ミトス「逃げるよっ!」
ナリィ「行くよフォテ!シャイ!」
フォテ「ま、待って下さいっ!」
シャイディア「うはぁっ!何かワクワクしてきたぜ!」
ナリィ「怖くないの?」
シャイディア「楽しいね!俺はこんな冒険してみたかったんだよ!だからスッゲエ楽しいぜ!」
ライファ「はは、シャイらしいな!」
ミトス「よぉし!逃げるぞぉっ!」
皆「おーうっ!」
ゾンビ「待てぇっ!食わせろぉっ!」
シャイディア「うっほぅっ!怖い怖い!」
フォテ「笑っておられるじゃないですかぁっ!」
シャイディア「あはは!」
ゾンビ「ハラ減ったぁっ!」
ナリィ「へっへ〜ん!ノロマなゾンビィ!」
ミトス「…ん!皆、止まってっ!」
ライファ「何っ!」
ミトス「何かいる…。」
皆「!」
?「…ぐがが…エサ…見つけ…見つけたんだな…。」
ライファ「何だ?」
ミトス「…他の『ゾンビ』と感じが違う。」
ライファ「じゃあ奴は…『名前付き』か?」
ミトス「聞いてみれば分かるよ。ねえ、君の名前は!」
?「お…おれ…おれは『ボルトガ』なんだな…ぐが…。」
ミトス「やっぱり出てきた。」
次回に続く