第三十八劇『こんなのが王様?チビッ子権力』
ミトス「王を?」
シュア「そうだ、助けてほしい。『力』になってくれないか?」
ミトス「一体どういうこと?」
シュア「今…王政が揺らいでいる。」
ミトス「囚人脱走のせいで?」
シュア「それもある。だが一番の理由は王が…。」
ミトス「王が?」
シュア「…いや、実際に見てもらったら分かるか……ついて来なさい。」
ミトス「え?」
シュア「王に会ってもらう。」
ライファ「おいおい、そんなのいいのかよ?オレ達は貴族でも何でもねえぜ?……この世界ではだけどな。(ボソ)」
シュア「大丈夫だ。私なら王も取り次いで頂ける。」
ミトス「信頼されてるんだね。」
シュア「…腐れ縁なだけだ。」
ミトス「ふぅん……あっ!」
シュア「どうした?」
ミトス「あのさ、もう一人仲間がいるんだけど…。」
シュア「仲間?どこにだ?」
ミトス「危険だから上に残ってもらったんだ。一緒に連れてっていいかな?」
シュア「…分かった。」
(フォテがいる階へ)
ライファ「あっれぇ、アイツ…何処行きやがったんだ?」
ナリィ「フォテ〜〜〜ッ!」
ミトス「う〜ん…一体何処に行ったんだろう?」
ライファ「……あ、アイツもしかして…。」
ナリィ「どしたの?」
ライファ「いいからついてこいって。」
(ライファについて行く)
ライファ「…やっぱここだったか。」
ミトス「フォテ!」
フォテ「み、皆さん!」
ライファ「もとの牢の中に戻るとは…お前らしいな。ま、ここが一番安全そうだしな。」
シュア「ここは…まさか裏口を知っているのか?」
ミトス「うん、ヒュードが教えてくれたんだ。」
シュア「成程な…道理で…。」
フォテ「皆さん!ご無事だったんですね!」
ライファ「テメエもな。」
ナリィ「いろんなことがあったけどね。」
フォテ「いろんなこと…ですか。」
ミトス「あとで話してあげるね。」
フォテ「…はい。」
ライファの心「フォテの奴…何か元気無えな…。」
ミトス「じゃ行こう!」
フォテ「どちらにですか?」
ミトス「王に会いに!」
フォテ「そうですか、王様に会いに………って、ええぇぇぇぇぇぇぇっっっ!お、王様にですか!そ、そんなの無理に決まってるじゃないですかっ!」
ライファ「…気のせいか。いつものフォテだな。」
ミトス「大丈夫だよ。シュアが案内してくれるから。」
フォテ「え?」
シュア「シュアだ。ここで監視員をしている。」
フォテ「あ、初めまして。ぼ、僕はフォテ=レオロアと言います。よ、よろしくお願いします!」
シュア「ああ。では行こうか。」
(シュアについて行く)
シュア「少し出てくる。」
監視員「分かりました。」
シュア「『道化師』が何かと動いているようだが、放っておいて構わぬからな。」
監視員「ヨルザ…ですね。分かりました。」
シュア「では行こうか。」
監視員「シュア様、その者達は?」
シュア「私の部下だ。」
ライファ「部下…ねぇ。」
監視員「そ、そうなのですか?」
シュア「ああ、お前の後輩でもある。」
監視員「はあ…。」
シュア「では頼んだぞ。」
監視員「はい!」
シュア「行こう。」
(シュアについて行く)
シュア「ここから少し歩くぞ。」
ライファ「マジかよ…ウゼェな。」
ミトス「……ところでシュア、何で僕達のことを信じてくれたの?」
シュア「……瞳…だな。」
ミトス「瞳?」
シュア「人は嘘をつくことが出来る。だが、どんな者でも瞳は嘘はつかぬ。お主の瞳……嘘はついていなかった。それが…理由だ。」
ミトス「…シュアって凄いね。」
シュア「凄い?」
ミトス「うん、凄い。だってさ、あのヨルザや暗奈業でさえ、シュアに逆らわなかったし。王の信頼も厚そうだし。」
シュア「いいや、王とはさっきも言ったとおり腐れ縁なだけだ。」
ミトス「昔からの知り合いなの?」
シュア「幼少からのな。王は破天荒な方でな、しょっちゅう宮殿を脱け出しては、私のような身分の低い者達と時を共にしていたのだ。」
ミトス「面白い人だね。」
シュア「歳月を重ねても、相変わらずだった。だが王妃様が亡くなられてから、少しは変わったのだがな。王という立場を本当に理解しようとしていた。」
ミトス「シュアって、凄く王のこと好きなんだね!」
シュア「…本当に手がかかるがな。好き勝手ばかりだよ。」
ミトス「あはは!」
シュア「…今の王は……もっとしんどいがな。」
ミトス「え?」
シュア「お主達も会えば分かる。」
ライファ「そんなに変わってんのかよ?」
シュア「お主達が描く王の輪郭はカスリもしてぬだろうな。」
ライファ「どんな王だよ。」
フォテ「…。」
ナリィ「どったのフォテ?元気無いね。」
フォテ「そ、そんなことないですよ!少し疲れただけですよ!」
ナリィ「ふぅん、まあ色々あったかんなぁ。」
フォテ「そ、そうですね…。」
ミトス「…フォテ。」
シュア「…さあ、宮殿に行こう。」
(『スレイアーツ宮殿』に到着する)
門番「…ん?シ、シュア様!」
シュア「通してもらうぞ。」
門番「は、はい!で、ですがシュア様、その者達は…?」
シュア「私の部下だ。問題あるというのか?」
門番「い、いえ!失礼しました!」
シュア「さあ、行こう。」
ミトス「……うわぁ、広くて綺麗だなぁ。」
ナリィ「ホントだぁ…。」
ライファ「金かかってんだろうなぁ。」
シュア「謁見の間に行こう。」
(謁見の間に行く)
シュア「いいか、王を見ても驚くではないぞ?」
?「…ん?シュア、何用じゃ?」
シュア「『ガレス』様、王はどちらですか?」
ガレス「…はぁ…それがのぅ…。」
?「あははははっ!」
皆「!」
シュア「またですか…。」
ガレス「全く…遊んでばかりおられる。」
?「お前の負けぇ!」
ガレス「王!」
?「よっしゃ!次はかくれんぼしようぜ!まぁた、俺が勝つけどな!あははははっ!」
ガレス「王っ!」
?「いや、かくれんぼは前にやったし……そうだ!今度は…っ!」
ガレス「『シャイディア国王』っ!」
シャイディア「な、なんだようるせえなガレス…。」
ガレス「お客人ですぞ。」
シャイディア「あ?……おお!シュアじゃねえか!どうしたどうした?お前もかくれんぼするか?」
ガレス「王…!」
シャイディア「じ、冗談だって冗談…はは。」
ナリィ「…あれが…王様?」
フォテ「…えと…。」
ライファ「ガキじゃねえかよ。」
ナリィ「ミトスと同じくらいかな?」
ミトス「…。」
シュア「国王、お久しぶりです。」
シャイディア「何だよシュア、そんな堅っ苦しい呼び方すんなよな!ん?何だそいつら?」
シュア「ガレス大臣、シャイディア国王陛下、情報を持って参りました。」
ガレス「どういうことだシュアよ?」
シュア「国王陛下にかけられた『呪い』…それに関する情報です。」
ガレス「な、何と!それはまことかっ!」
シュア「この者達が何かを存じているはずです。」
ライファ「成程…そういうことかよ。」
ミトス「『呪い』?王が子供?……まさか…!」
ガレス「シュア、その者達は一体何者じゃ?」
シュア「旅人です。」
ガレス「本当にあやつの情報を持っておるのか?」
シュア「はい。」
ガレス「こ、これは良かったですぞ国王……様?ん?国王様何処に?」
シャイディア「お前名前は何ていうんだ?」
ミトス「僕はミトス。」
ガレス「い、いけません国王!不用意に平民に近付くなんて!」
シャイディア「黙れガレス!」
ガレス「う…しかし万一暗殺者か何かだとしたら…。」
シャイディア「悪人かどうかは、そいつの瞳を見りゃ分かる。お前は口出すな。分かったな?」
ガレス「う……分かりました。」
シュア「あの者達は大丈夫ですよ。」
ガレス「シュア…。」
シャイディア「…。」
ミトス「…。」
シャイディア「…へぇ、綺麗な瞳してるなお前。」
ミトス「王もね。」
シャイディア「あははははっ!言うなぁ!気に入った!なぁ、何して遊ぶ?」
シュア「国王様。」
シャイディア「…ち、分かったよ。」
ガレス「全く…。」
シャイディア「…ところでミトス、お前…俺と同じ匂いがするな。」
ミトス「…。」
シャイディア「……へ、俺はシャイディア=ミラ=ホーリアスだ。長ったらしい名前だろ?だからシャイでいいからな。」
ミトス「うん、分かった。」
シャイディア「さて、んじゃさっさと話を進めろガレス。」
ガレス「分かりました。その方ら、本当に『呪い』の事を知っておるのか?」
ライファ「いや、そもそも『呪い』って何の事だよ。見た感じ、別に変なとこは無えだろ?まあ、国王がガキっていうのは驚いたけどな。」
シュア「それだ。」
ライファ「あ?」
シュア「それが問題なのだ。」
ライファ「…ん?何が?」
ナリィ「オイラに聞くなよぉ!」
ガレス「国王が子供…これが問題なんじゃ。」
ライファ「……まさか!」
ミトス「そうだよライファ。シャイも奪われたんだ……歳を。」
ナリィ「そ、それじゃあっ!」
ミトス「うん。間違い無く『ヘルユノス』の仕業だよ。」
ガレス「あの金髪は『ヘルユノス』と言うのか!」
ミトス「うん。『ヘルユノス=オウガ』、僕が探している人物だよ。」
シュア「囚人脱走もその者の所業なんだな?」
ミトス「一人でやったのかは分からないけど、先ず間違い無く『ヘルユノス』が糸を引いてるよ。」
シャイディア「ミトス、お前とそいつ、どういう関係なんだ?」
ミトス「……大切な仲間…だった。」
ガレス「何じゃと!ということはお前は奴とグルなんじゃな!こうしちゃおれん!シュア、奴らを取り押さえるんじゃ!」
シャイディア「とおっ!」
ガレス「ぬ?」
シャイディア「ちょっと黙ってろキィーックッ!」
ガレス「ぬわぁぁぁっ!」
ライファ「おいおい…。」
シャイディア「よっしゃ!これで静かになった!」
ナリィ「何ちゅう王だよ…。」
フォテ「ひぇぇ…。」
シャイディア「…ふぅ。ミトス、仲間だったつうことは今は違うってことか?」
ミトス「…今は……。」
ナリィ「ミトス…。」
シャイディア「…ま、いいか!別に俺がこんなんになったのはミトスが悪いわけじゃ無いしな。それに結構気に入ってんだよこの姿!あははははっ!」
ミトス「シャイ…。」
シャイディア「シュア、ミトス達と会ったのは何処だ?」
シュア「『メビウス監獄』です。」
シャイディア「成程な…お前達も金髪の手掛かりを求めてるってわけか。」
ミトス「シャイが知ってること教えてくれる?僕も出来る限り協力するからさ。」
シャイディア「そうだな…知ってることって言っても、突然俺の前に現れて、気が付いたらこうなってたからなぁ。」
ミトス「一人だったの?」
シャイディア「その時は一人だったが…そういや気になる事を言ってやがったなぁ。」
ミトス「気になる事?」
シャイディア「ああ、何でも『新たな世界』がどうとか…『古き世界』は滅ぶべきだとか言ってやがったなぁ。」
ミトス「一体何を…。」
シャイディア「なあミトス!久々の客だ!今日は楽しもうぜ!」
ミトス「でも…いいのかな?」
シャイディア「王は俺だ!ガレスが何か言ったらぶっ飛ばしてやるよ!」
門番「シュア様っ!」
シュア「どうした?」
門番「ヤツが…『食尽鬼』が…!」
次回に続く