表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/48

第三十五劇『さらなる地下へ』

ライファ「し、知らねえだとっ!テメエなぁ、人をおちょくってんのかよっ!」


ヨルザ「クク…。」


ライファ「笑ってる場合か!ブチ殴んぞテメエ!」


ミトス「ちょっと待ってライファ。」


ライファ「待てるか!コイツ、オレ達が困惑することを楽しんでやがんだ!」


ミトス「いいから落ち着いて。」


ライファ「何でミトスは落ち着けんだよ!コイツはな…っ!」


ミトス「(ライファを睨む)」


ライファ「う…。」


ミトス「…ヨルザ、僕は怪しいことをしたら容赦しないと言った。その上で、お前は知らないと言った。」


ライファ「だからコイツは、オレ達をからかってんだよ!」


ミトス「ヨルザは馬鹿じゃないよ。僕との一戦で、『力』の差を感じたはずだよ。だから、今の状況で僕を騙すようなことはしない。」


ヨルザ「…クク。」


ミトス「説明してくれるよね?」


ヨルザ「…やっぱり君は良いねぇ。ゾクゾクするよ。」


ライファ「ちゃっちゃと説明しやがれ!」


ヨルザ「いいよ。さっき君が言った『ヘルユノス』、ボクはホントに知らない。」


ライファ「嘘じゃねえだろうな?」


ヨルザ「ホントさ。見たことも無いよ。もちろん会ったことも無い。」


ライファ「だったらさっきは何で知ってるふうだったんだよ!」


ヨルザ「簡単さ。君達から情報を聞き出す為さ。」


ミトス「情報?」


ヨルザ「そ。」


ミトス「…どうして情報を?」


ヨルザ「ボクもね、知りたいのさ。囚人脱走の真実をねぇ。誰が何の為にそんなことをしたのか興味があってねぇ。」


ナリィ「お前は脱走しなかったの?」


ヨルザ「お馬鹿な猫だねぇ。」


ナリィ「ば、馬鹿ぁ?てか猫って言うなぁっ!」


ミトス「情報収集の為だよ。」


ナリィ「情報収集?」


ミトス「この『メビウス監獄』にいる者達から、情報を聞き出す為に脱走せず、再び捕まった者達から真実を聞き出そうとした。違う?」


ヨルザ「正〜解。」


ミトス「だけど、『ヘルユノス』のことを知らないところを見ると、首謀者を知ってる者達はここに戻って来てない。」


ヨルザ「そうなんだよねぇ。ま、最も真実を知ってる奴が、そう簡単に捕まるわけはないんだけどねぇ。恐らく真実を知ってる奴らは、その『ヘルユノス』って奴の近くにいるだろうしねぇ。」


フォテ「ち、ちょっと待って下さい!で、ですがさっきヨルザさんは、この『メビウス監獄』に知ってる者は自分を含めて4人いると言いませんでしたか?」


ナリィ「あ、そういや言った言った!」


ヨルザ「ああ〜言ったねぇ。」


ライファ「まあ、それもオレ達から情報を聞き出す為の嘘なんだろ?」


ヨルザ「…そうでもないなぁ。」


ライファ「どういうことだ?」


ヨルザ「確かにボクが知ってると言ったのは嘘さ。だけど、他の三人はどうだろうなぁ。」


ミトス「ヨルザはその人達から聞き出してないの?」


ヨルザ「もちろん接触はしたさ、一人…だけね。だけどねぇ、なかなか素直になってくれなくてねぇ。」


ライファ「どんな奴らなんだ?」


ヨルザ「三人とも42階の『焦熱』にいるんだよ。一人は『シュア』って奴。もう一人…いや、最後の一人は『暗奈業アンナゴウ』。」


フォテ「『暗奈業』!」


ナリィ「知ってんの?」


フォテ「…はい。ボクの住んでた村も…被害にあってます…。」


ナリィ「どんな奴なの?」


フォテ「…『殺し屋』です。」


ミトス「殺し屋?」


フォテ「はい……『あるモノ』を差し出せば、どんな殺しをも受けおうという殺し屋です。」


ライファ「『あるモノ』ってのは、何なんだ?」


フォテ「そ、それは…。」


ヨルザ「…子供だよ。」


皆「!」


ミトス「子供?何の為に…。」


ヨルザ「さあ?そこまでは知らないねぇ。」


フォテ「噂だけなんですが、僕の住んでた村の子供も犠牲になったらしいんです。」


ナリィ「噂だけって?」


フォテ「僕が村を出た後に、風の噂で聞いたんです。……子供が殺し屋に渡されたと…。恐らく誰かが子供を拐い、『暗奈業』に依頼をしたのではないでしょうか?」


ナリィ「そうなんだ…。」


ライファ「…ところでよぉ、さっき気になったんだけどよ、最後の一人って…まだ二人しか名前言ってねえぞ?」


ヨルザ「クク…その『暗奈業』はねぇ…。」


フォテ「二人なんですよ。」


ライファ「は?」


ヨルザ「あらら、先言われちゃったなぁ。ボクが言いたかったのに残念残念。」


ミトス「どういうことなのフォテ?」


フォテ「…『奇形児キケイジ』ってご存じですか?」


ナリィ「きけい?」


ライファ「体のつくりが正常じゃない状態で産まれてくる子供のことだ。」


ナリィ「…へぇ…ライファよく知ってるね。」


ライファ「…まあ…な。」


ミトス「…本来あるべき所に、あるべきものが無かったり、腕が下半身に生えているとか、頭と肩がひっついたりして産まれてくるとかね。」


ナリィ「うひゃあ…。」


ライファ「本来なら『奇形児』はすぐ死んじまう。そのまま成長することは滅多に無えんだ。」


ミトス「『暗奈業』が…そうなの?」


フォテ「『暗奈業』は…双子がくっついて産まれたんです。」


ナリィ「マジでっ!」


ミトス「だから二人…成程。」


ライファ「二人で一人ってことか。」


ヨルザ「ね?最後の一人って間違って無いだろ?」


フォテ「『暗奈業』は、通称『アナゴ』と呼ばれています。姉の『暗奈アンナ』と弟の『奈業ナゴウ』…二人を総称する名前が『暗奈業』なんです。」


ミトス「…ヨルザ、お前が会ったのは、その『暗奈業』なの?」


ヨルザ「まあね。とは言っても、面と向かって話はしてないけどさ。」


ミトス「どうして?」


ヨルザ「行けば分かるさ。…行ってみるかい?」


ミトス「『ヘルユノス』の手掛かり、もうその人達しかいないからね。」


ヨルザ「んじゃ、ついてきなよ。」


フォテ「ほ、本当に行くんですか…?殺し屋なんですよ?こ、殺されちゃいますよ!」


ライファ「だったらテメエはここに残ってたらどうだ?ハッキリ言って邪魔になるしな。」


フォテ「ライファさん…。」


ナリィ「もう!ライファは何でそんなにフォテに厳しいのさ!」


ライファ「違ぇよ。」


ナリィ「え?」


ミトス「ライファの言うとおり、フォテはここで待ってた方がいいと思う。」


フォテ「…ミトスさん。」


ナリィ「ミトスまで何言って…っ!」


ミトス「これから先は何が起こるか分からないんだよ?ひょっとしたら、いきなり攻撃されるかもしれない。」


ナリィ「あ…。」


ミトス「相手はかなりの『勁使い』で、しかも殺し屋までいる。」


ライファ「純粋な戦闘に於いて、相手が強ければ強い程、厄介であればある程、フォテは邪魔になる。フォテはオレ達と違って戦闘訓練なんかしてねえだろ?」


ナリィ「まあ…ね。」


ミトス「油断をするつもりは無いけど、危ない奴らには変わらないんだ。それにどんな『力』を持ってるかも分からない。そんな奴らを相手に、フォテを守れるか分からないんだ。」


フォテ「ミトスさん…。」


ライファ「だからテメエはここで、オレ達の帰りを待ってりゃいいんだよ。」


フォテ「ライファさん…。」


ナリィ「…そうだね。その方がいいよ。フォテはオイラ達と違って普通の人なんだから。」


フォテ「普通の…人…。」


ミトス「だから、ね。フォテは待ってて。僕達は必ず帰って来るからさ。」


フォテ「…僕は…足手纏い…なんですよね…。」


ミトス「別にそんなふうには…。」


ライファ「そのとおりだ。」


ミトス「なっ!」


ライファ「今のお前じゃ、オレ達の後ろにはついてけねえんだよ。」


ミトス「ちょっとライファ!そんなふうに言わなくても!」


フォテ「いいんですっ!」


ミトス「フォテ…。」


フォテ「…分かりました!僕は皆さんの帰りを信じて待ってます!」


ミトス「…フォテ。」


フォテ「必ず…帰って来て下さいね。」


ミトス「…分かった。じゃあすぐ帰って来るからね。」


フォテ「はい!」


ヨルザ「ふ〜ん…。」


ライファ「行こうぜ!」


ヨルザ「クク…こっちだよ。」


ミトス「フォテ…。」


フォテ「………。」



(ヨルザについていく)



ミトス「…。」


ライファ「…そんな顔すんなミトス。」


ミトス「ライファ…。」


ライファ「フォテなら心配無ぇよ。」


ミトス「…うん。」


ライファ「アイツならきっと…だろ?」


ミトス「うん!」


ヨルザ「……着いたよ。」


ナリィ「随分頑丈そうな壁だね。」


ヨルザ「まあ、世界一硬い鉱石『ダイナムス鉱石』で出来てる上に、先に行く為にはセキュリティを突破しなきゃならない。」


ライファ「セキュリティ?」


ヨルザ「この壁を開くには、『四色獣』の指紋に、暗証番号が必要なんだよねぇ。」


ライファ「だったらどうすんだ?」


ヨルザ「クク…。」


ミトス「そうか!」


ヨルザ「気付いたかい?チェ〜ンジ!」


ナリィ「あ、ヒュードに変化した!」


ライファ「成程な。」


ミトス「…。」


ナリィ「あ、でも暗証番号は?」


ヨルザ「抜かりは無いよ。ほいほいほいっと。」


ミトス「…。」


ナリィ「開いたぁ。」


ヨルザ「この調子で、42階まで行くよ。」


ライファ「……ここは11〜20階の……何だっけか?」


ミトス「『黒縄』だよ。」


ヨルザ「さあさあ、さっさと突破するよぉ。」



(先へ進む)



ミトス「…ここは『衆合』。」


ライファ「さすがにここら辺りは、面構えが怪しい奴らばかりだな。」


ヨルザ「次は『叫喚』。『犯罪者レベルA』のエリアだよ。」



(先へ進む)



ミトス「…結構いるんだね。」


ヨルザ「気を付けなね?油断してると、怪我しちゃうからさ。」


ライファ「怪我ねぇ。」


ミトス「…。」


犯罪者「おらぁぁぁっ!」


ミトス「!」


犯罪者「はっはぁぁっ!ぐあっ!」


ミトス「?」


ヨルザ「だから言っただろ?油断するなって。」


ミトス「……殺したの?」


ヨルザ「……一つ教えといてやるよ。ここでは殺しは日常なんだよ。特に下の階程、殺し、騙し、盗み、何でもありなんだよ。逆に出来ない奴から死んでいく。ここでは『力』が全てなんだよ。」


ミトス「だからって殺す必要は無いだろ!」


ヨルザ「…ふぅ。ここはね、確かに監獄だよ。だけどね、見たとおり、ここはもう多人数が住む地域なんだよ。生活してんのさ。言ってみれば『地底人』達が住む、無法地帯と言おうか。」


ミトス「…こんな所があるなんて…。」


ヨルザ「ここには、ここのルールがある。君が口出ししても仕方無いよ。」


ミトス「く…。」


ナリィ「ミトス…。」


ヨルザ「さあ、次はいよいよボクのエリア…『大叫喚』だ。といっても、ボク以外はいないいないばぁだけどね…クク。だからさっさと次へ行くよ〜。」



(先へ進む)



ヨルザ「この先だよ。」


ミトス「…。」


ヨルザ「心の準備はいいかい?」


ライファ「当たり前だ。」


ナリィ「よぉ〜し!」


ミトス「行こう!」



(その頃壁の向こうは)



?「…ネエちゃん。」


?「分かってるよ『奈業』。」


奈業「イッパイきたよ。」


?「んふ…偶数なら良いのにね。」


奈業「キャハ、ダイジョーブだよ。ネエちゃんにユズるよ。」


?「奈業は可愛いね。姉ちゃんは嬉しいよ。んふ…安心しな、奇数なら余った奴は二人で仲良く殺そ。」


奈業「キャハ、ボクはそんなネエちゃん…スキ。」


?「『暗奈』も奈業のこと愛してるよ。」


奈業「キャハ!……ホラきたよ。」


暗奈「んふ…殺るよ殺るよ。」



次回に続く


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://www.webstation.jp/syousetu/rank.cgi?mode=r_link&id=3394 http://netnovelranking.client.jp/?168
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ