第二十九劇『勝者はどっち?闘技場決着』
ライファ「ちぃっ!」
グレイト「このっ!」
ナリィ「互角だっ!」
ヒュード「ふふ〜ん。」
ライファ「おいおい、かなりマジで入れたぜ?互角かよ!」
グレイト「くっそぉっ!オレのナックルと似た技を!」
ライファ「さすが同じ『鍛勁』だな。」
ヒュード「『勁』をいかに強く素早く練るか…。それが『勁使い』同士の戦いでの勝つための必須条件。」
ナリィ「特に『鍛勁』同士はそれが最も重要になるんだよね。」
ヒュード「まあ、単純に『勁』の量が多い方が有利っちゃ有利だけどな。」
ライファ「はあっ!」
グレイト「おらっ!」
ライファ「くらえっ!『剛拳』っ!」
グレイト「なっ!ぐはっ!」
ライファ「うしっ!」
司会者「は、入ったぁっ!チャレンジャーの拳がチャンピオンを捉えましたっ!チャンピオン立てるかぁっ!」
ライファ「…手応えはあったが…さて。」
グレイト「ぐ…。」
ライファ「立って来るか…。」
グレイト「…成程な……あの『青銃』が忠告に来るはずだ。」
ライファ「ん?」
グレイト「アイツ以来だな……こんなにウズウズするのはよぉ!」
ライファ「へへ。」
ナリィ「どうやらライファの方が一枚上手みたいだね。」
ヒュード「そうかな?」
ナリィ「え?」
ヒュード「チャンピオンの名を貰うくらいだぜ?まだまだこれからこれから。」
ナリィ「…。」
グレイト「テメエ、名前は?」
ライファ「ライファだ。ライファ=サスラギ。」
グレイト「オレはグレイトだ!グレイト=トゥ=カッターだ!」
ライファ「へへ。」
グレイト「さあ闘るぜっ!」
ライファ「ああ!」
グレイト「どっちが強ぇか!」
ライファ「決めようぜっ!」
グレイト「『グレイトナックル』ッ!」
ライファ「『剛拳』っ!」
ヒュード「熱いねぇ。オレっちはあんな熱苦しいのはノーサンキューだな。」
ナリィ「はは…。」
ヒュード「ん〜だけどこのままじゃ、埒が開かないなぁ。」
(その頃ミトス達は)
ミトス「ん〜〜どうフォテ、見つかった?」
フォテ「いえ…こちらには…。」
ミトス「『ヘルユノス』がいる『ユーヴィリアの塔』…。」
フォテ「本当にあるのでしょうか?もしかしてカミュさんにからかわれたんじゃ…。」
ミトス「ん〜そんな感じじゃなかったけどなぁ。」
フォテ「ですが、ここ『王立図書館』にはありとあらゆる資料があります。主要施設から、古代遺跡や秘地まで、この世界にあるほとんどが収められているはずです。」
ミトス「う〜ん…。」
フォテ「『未知の七大財産』にも数えられていませんし……本当にあるのでしょうか?」
ミトス「呼び名が違うのかも…。」
フォテ「呼び名ですか…。」
ミトス「あるいはごく最近出来たとか。」
フォテ「確かに…その可能性はありますね。」
ミトス「……ここで色々推測してもしょうがないか…。」
フォテ「どうしますか?」
ミトス「一番良いのは、もう一度カミュに聞くことなんだけど…。」
フォテ「…難しいですね。」
ミトス「…ちょっと待てよ……。」
フォテ「どうしました?」
ミトス「囚人脱走に『ヘルユノス』が絡んでいるんだとしたら、脱走して再び捕まった囚人達に聞けば、何か分かるかもしれない。」
フォテ「た、確かにそうかもしれませんが……どうやって聞くんですか?」
ミトス「もちろん、国王に頼むんだよ。」
フォテ「えっ!そ、そんなの無理に決まってるじゃないですかっ!」
ミトス「何で?」
フォテ「王様ですよ!僕達庶民に会ってくれるわけないじゃないですかっ!」
ミトス「そうなの?」
フォテ「雲の上の方なんですよ!そのお姿を拝見することも滅多に無いのに、まして会って頼むだなんて……絶対無理ですっ!」
ミトス「フォテ、ライファがいたらまた殴られてるよ?」
フォテ「う……で…ですが…。」
ミトス「ま、何とかなるよ。大丈夫大丈夫。」
フォテの心「…分からない…ミトスさんのこの自信は一体どこから…。」
ミトス「それじゃ行こう。」
フォテ「今からですかっ!」
ミトス「思い立ったが吉日ってね。」
フォテ「ラ、ライファさん達はどうするんですか!」
ミトス「多分今は無理だよ。」
フォテ「え?」
ミトス「さっきそこに貼り紙があったんだ。『闘技場挑戦者求む』って。」
フォテ「…それが?」
ミトス「ライファのことだから、今頃出てるんじゃないかな?チャンピオンて名前に惹かれてね。」
(ライファ達は)
ライファ「はあはあはあ…。」
グレイト「はあはあはあ…。」
ナリィ「もう十分間もやり合ってる。」
ヒュード「長いねぇ。でもこのままじゃ…ホントに埒が開かないなぁ。」
ライファ「…ふぅ……なあ?」
グレイト「…何だ?」
ライファ「このままチマチマやってても、勝負つかねえ。観客も早く見たいだろうからな…どっちが勝つか。」
グレイト「……じゃあどうする?」
ライファ「……『フィストバウト』だ。」
グレイト「何だそれ?」
ライファ「なぁに、別に難しいことじゃねえよ。防御、回避、それらを禁止した攻撃だけのバトルだ。」
グレイト「攻撃だけ…だと?」
ライファ「お互い拳が届く距離まで近付く。そして、その場所で全力で殴り合う。」
グレイト「…ほぅ。」
ライファ「観客も熱くなるぜぇ。なんたってどっちかが倒れるまで殴り合いが続くんだからな。我慢大会だ!」
グレイト「…ふ…ふ…ふふはははははっ!良いねぇっ!そいつぁサイコーだぜっ!その勝負乗ったぁっ!」
ライファ「へへ。」
司会者「ん?どうしたことでしょう?二人が間を詰めていきます。お、止まりました!互いの攻撃が必ず当たる距離で止まりましたっ!一体何をしようというのでしょうかっ!」
ライファ「このコインが落ちたら開始だ。」
グレイト「へ、ボコボコにしたらぁ!」
ライファ「それはこっちのセリフだ。行くぜ!」
司会者「チャレンジャーが何かを投げました!」
ナリィ「アイツ、一体何するんだよ!」
ヒュード「ま、いいんじゃない?面白ければ…さ。」
ナリィ「ヒュード…。」
ライファ「…。」
グレイト「…。」
(コインが落ちる)
ライファ「おらぁっ!」
グレイト「うらあっ!」
ライファ「がはっ!くっ!ごらぁっ!」
グレイト「ぶはっ!がっ!のやろぉっ!」
司会者「な、何というラッシュ!防御を無視した殴り合いっ!これは…これはすごぉーいっ!入る!入る!入る!入る!二人の剛腕がお互いの急所を貫き続けますっ!」
ナリィ「あちゃあ…。」
ヒュード「うへぇ、痛そう…。」
ナリィ「二人とも馬鹿じゃないの…。」
ライファ「おらららららららっ!」
グレイト「うらららららららっ!」
司会者「…い…いつまで続くのでしょうか!おぉーっとチャレンジャーにイイのが入ったぁっ!」
ライファ「ぐぅっ!」
グレイト「喰らえっ!」
ライファ「舐めんなぁっ!」
グレイト「ぐふっ!」
司会者「今度はチャンピオンがグラつくっ!」
ライファ「もらったぁっ!」
グレイト「ま…まだだぁっ!」
ライファ「ぐはぁっ!」
司会者「正に一進一退っ!全力と全力がぶつかり合うっ!どこまで耐えられるのかぁっ!えぇいこんちきしょーっ!こうなったらトコトン付き合うぜっ!どこまでも行っちまえぇっ!」
ライファの心「こ…こいつ…。」
グレイトの心「こ…この野郎…。」
ライファの心「へへ…。」
グレイトの心「はは…。」
二人「サイコーだぜテメエッ!」
ナリィ「ライファ!」
ヒュード「さて…どっちが…。」
ライファ「う…あ…。」
ナリィ「ライファッ!」
ヒュードの心「足にきたか…。無理もないな、体格的にライファが圧倒的に不利。…決着が着く!」
グレイト「うはぁ……楽しかったぜライファ…だが…オレの勝ちだぁっ!『グレイトナックル』ッッッ!」
ライファ「う…おぉぉーーらぁぁーーーーーっ!『剛拳』っっっ!」
ナリィ「ああっ!」
ヒュード「!」
司会者「あ…相打ち…相打ちだぁっ!互いの拳が互いの顔面を捉えましたぁっ!」
ライファ「く…。」
グレイト「ぐ…。」
ナリィ「ライファ…。」
ヒュードの心「まさかあそこから相打ちに持ち込むなんて…アイツ…。」
司会者「う…動きません…両者全く微動だにしません…。一体どっちが…。」
ナリィ「一体どっちが…。」
ヒュードの心「一体どっちが…。」
皆「どっちが勝つ!」
ライファ「…へへ。」
グレイト「……ライファ。」
ライファ「…あ?」
グレイト「…グレイト……だったぜ?」
ライファ「…お前もな。」
グレイト「…また闘…ろ……ぜ……。」
ライファ「ああ…またな。」
司会者「チ、チャンピオンが倒れてしまいましたぁっ!な、何とぉっ!勝利を掴んだのは、チャレンジャーライファッ!あの激しいバトルをモノにしたのは、チャレンジャーライファですっ!」
ナリィ「やったぁっ!」
ヒュード「勝っちまいやがった…。」
ナリィ「さっすがライファッ!」
司会者「素晴らしいバトルでした!皆さん、この新たなるチャンピオンを称えましょうっ!」
ライファ「…ふぅ。」
司会者「チャンピオン…ライファ=サスラギッ!皆さん、今一度大きな拍手をお願いしますっ!」
ライファ「うっしゃあっ!」
ナリィ「凄い歓声!」
ヒュード「あれ程のバトルだったんだ、当然だね。」
ライファ「へへ。」
グレイト「…よぉ。」
ライファ「ん?おお、目が覚めたか?」
グレイト「…ち、負けちまったか…。オレの連勝を止めちまいやがってよぉ。この野郎が…。」
ライファ「まだまだ修行が足りねえってことだ。」
グレイト「な、何おぅっ!」
ライファ「お前も…オレもな。」
グレイト「……は、よく言うぜ!」
ライファ「へへ。」
グレイト「…だがよぉ、オレは代理だからな。」
ライファ「あ?代理?何だそれ?」
グレイト「認めたくはねえがな……オレを負かしたのはテメエだけじゃねえんだ。」
ライファ「…ああ、確か一敗してんだよな?」
グレイト「…ふぅ、そいつがホントのチャンピオンなんだよ。」
ライファ「…。」
グレイト「オレはそいつに手も足も出なかった。気が付いたらベッドの上よ。しかもリベンジかまそうとしたら、この国にはもういやがらねえしよ。」
ライファ「お前が手も足もだと?」
グレイト「随分前だがよ……ヤツは強かったぜ。」
ライファ「…誰だ?」
グレイト「…あらゆる衝撃を知り尽くす男…『衝撃王・ドン=マキシマム』。」
ライファ「『衝撃王』…。」
グレイト「……次は勝つからな?」
ライファ「え?」
グレイト「次は必ずオレがテメエを倒す!」
ライファ「…させねえよ。」
グレイト「オレはまだまだ強くなる!」
ライファ「オレもだ!」
グレイト「…ふん。」
ライファ「じゃあな。」
ナリィ「さってと、そろそろミトスと合流しよっか!」
ヒュード「ふふ〜ん、そだねぇ。」
(ミトス達は)
ミトス「宮殿の入口はどこかな?」
フォテ「ほ、本当に行くんですかぁ!」
ミトス「もちろん!だって…ん?」
?「あの…離して下さい…。」
男「高そうな服着やがって!それを寄こせってんだよ!お、高そうな『ペンダント』!」
?「あ、それは!返して下さい!それだけは駄目です!」
男「うるせぇよ!これは…あっ!」
ミトス「止めなよ。」
男「何だガキ!」
ミトス「これは返して貰うよ。」
次回に続く