第二十劇『ヴァンパイアの特異体質』
フォテ「『ヘルユノス=オウガ』…。」
ライファ「そうだ。そいつが元凶だ。」
フォテ「その人に『時間』を奪われたんですか?」
ミトス「そうだよ。」
フォテ「…で、でも一体どういうことなんですか?『時間』や『自由』を奪われたというのは?」
ミトス「文字通りだよ。僕は『時間』を奪われて、この子供の姿に戻されたんだ。」
フォテ「え?と、ということは、本来のミトスさんは子供の姿ではないんですか?」
ミトス「…うん。」
ファム「それにミトスは、年をもとれなくなったのよ。」
フォテ「…。」
ミトス「驚いたでしょ?」
フォテ「ミトスさん…。」
ミトス「だから返してもらいたいんだ。僕の『時間』を…。」
フォテ「…では『自由』というのは?」
ライファ「それも言葉の通りだ。」
フォテ「では、『エーデルワイス姫』は、今動けないということですか?」
ライファ「…ああ、姫は今、『ヘルユノス』のクソ野郎に、捕われてっからな。」
フォテ「!」
ファム「ミトスは『ヘルユノス』を探して、全てを取り戻そうとしてるのよ。」
フォテ「……それで、何故『蒼の秘宝』が必要なんですか?」
ミトス「……。」
フォテ「『無限の知識』を得て、どうするつもりなんですか?」
ミトス「…知りたいんだ。」
フォテ「な、何をですか?」
ミトス「……『ヴァンパイア』を…殺す方法だよ。」
フォテ「!」
ライファ「やっぱな。」
ファム「ミトス…。」
フォテ「な、何故そんなことを?」
ミトス「もちろん、『ヘルユノス』を…倒すためだよ。」
フォテ「…。」
ミトス「さっきも言ったけど、純粋な『ヴァンパイア』はそう簡単に死なない。というか、寿命以外で命を落とした『ヴァンパイア』がいないんだ。僕の知る限りじゃね。」
フォテ「……で、ですが、今はたくさんいた『ヴァンパイア』も、たった4人て言いましたよね?ミトスさん達以外は、全員寿命で亡くなってしまったというんですか?」
ミトス「…そうだよ。全員寿命で死んだ。」
フォテ「…。」
ミトス「…納得いかない?」
フォテ「え?……はい。」
ミトス「でも嘘じゃないよ。本当に寿命で死んでいったんだ。」
フォテ「先程ミトスさんは仰いました。『血』を吸えば寿命で死ぬこともないと!でしたら!」
ミトス「『ヴァンパイア』は、その体にいくつもの『特異体質』を持ってるんだ。」
フォテ「え?『特異体質』ですか?」
ミトス「うん。僕達『ヴァンパイア』はね、他人種と交配すると…『吸血能力』が無くなってしまうんだ。」
フォテ「そ、そうなんですか?」
ミトス「生まれてくる子供はもちろん、親も交配した瞬間から、『吸血能力』が失われるんだ。」
フォテ「…そ…それで…『ヴァンパイア』が少なくなったんですね…。」
ミトス「そう、もともとそんなに多くいたわけじゃないから、あっという間に、減っていった。」
フォテ「でしたら、他人種との交配をしなければ、よろしいんじゃないんですか?」
ミトス「もちろん、その『特異体質』に気付いた時、すぐさま他人種との交配を禁止したらしいんだよ。」
フォテ「で、でしたら大丈夫なんじゃないんですか?」
ライファ「そんな簡単な解決方法があったんだったら、楽だったんだがな。」
フォテ「ど、どういうことなんですか?」
ライファ「そもそも、何で『ヴァンパイア』が他人種と交配なんかしたんだと思う?」
フォテ「それは………そうかっ!『ヴァンパイア』の『特異体質』の一つ、もしかして…子供が出来にくい体質だったんじゃないですか?」
ライファ「ビンゴ。」
ファム「よく分かったわね。」
ナリィ「さっすがフォテだね。」
ミトス「そうなんだ。僕みたいな純粋な『ヴァンパイア』同士で交配しても、子供が生まれる確率が、とても低いんだ。」
フォテ「だから…他人種と交配して『ヴァンパイア』を増やすことにしたんですね。でもそうすると、純粋な『ヴァンパイア』は生まれはしないんじゃないですか?」
ミトス「…他人種と交配しても、ごく稀に純粋な『ヴァンパイア』が生まれる時があるんだ。」
フォテ「で、ですが『吸血能力』は失われているんですよね?」
ライファ「ところがミトスは違った。」
フォテ「え?」
ファム「ちょっとライファ!」
ミトス「いいんだよファム。」
ファム「ミトス…。」
ミトス「言ったでしょ…フォテには知っててほしいんだ。」
フォテ「ミトスさん…。」
ミトス「僕の親はね、純粋な『ヴァンパイア』じゃなかったんだ。」
フォテ「…ということは…。」
ミトス「うん。僕は、ごく稀に生まれた数少ない『ヴァンパイア』の一人なんだ。」
フォテ「…でもライファさんはミトスさんは違うと……一体何が違うんですか?」
ミトス「何故か僕は、『ヴァンパイア』の能力を失うことなく、生まれてきたんだ。それに…。」
フォテ「そ、それに…?」
ミトス「…さっきも言ったよね…『ヘルユノス』は『異端児』だって。」
フォテ「あ、はい…ミトスさん自身もそうだと仰いました。」
ミトス「…フォテ。」
フォテ「はい?」
ミトス「僕を…変だと思わなかった?」
フォテ「変…ですか?」
ミトス「フォテは神話に出てくる『吸血鬼』を…知ってるんだよね?」
フォテ「は、はい。」
ミトス「だったら、今の話を聞いて、僕が『ヴァンパイア』って聞いて、変だと思わなかった?」
フォテ「えと……そ、そういえば…。」
ミトス「気付いた?」
フォテ「何故…何故無事なんですか…。」
ミトス「…。」
フォテ「何故『日の光』を浴びてもミトスさんは無事なんですか?」
ミトス「…僕にも分からないんだ。」
フォテ「…。」
ミトス「『ヴァンパイア』は、夜の生き物。『ヴァンパイア』は、『日の光』を浴びると、体調に異常をきたす。純粋な『ヴァンパイア』は、『日の光』を浴びてしまうと、体が灰になってしまうんだ。死ぬことは無いけど、数百年は元の体には戻れない。」
フォテ「そ、それでは…その『ヘルユノス=オウガ』という方も…。」
ミトス「そう、僕と同じ『日の光』を……『太陽』を克服した『ヴァンパイア』なんだよ。」
フォテ「……。」
ライファ「オレらみたいに、『ヴァンパイアの血』が薄いなら、『太陽』には何の影響もないがな。」
フォテ「…。」
ミトス「そのせいで、結構大変な目にもあったけどね。」
ライファ「…。」
フォテ「ミトスさん…。」
ミトス「フォテはどう思う?」
フォテ「え?」
ミトス「こんな僕を…怖いと思う?」
フォテ「…そ…それは…。」
ファム「フォテ…。」
フォテ「た、確かにお、驚きはしました…色々…。で、ですが…。」
ミトス「…。」
フォテ「少なくとも、僕が知ってるミトスさんは………優しい人です。」
ライファ「へへ。」
ファム「フォテ!」
ナリィ「ミトス。」
ミトス「うん。…ありがとう、フォテ。」
フォテ「…でも…。」
ミトス「ん?」
フォテ「調べさせて下さいねぇ〜〜〜っ!」
ミトス「ええぇーーーっ!」
ライファ「あははっ!」
ファム「あらあら。」
ナリィ「やっぱフォテはフォテだね。」
ミトス「ち、ちょっとぉっ!見てないで助けてよぉっ!」
フォテ「調べさせて下さ〜〜〜いっ!」
三人「あはは!」
(街の中)
?「そんで…なっかなか帰って来ないと思ったら、こんなとこで油を売ってたの?」
?「ヌハハハハ!スマンスマン!」
?「スマンじゃないから!あのさぁ、ボクは待たされんのキライだって知ってんだろ!」
?「ハラ減ってたんだ!まあ、そう怒るな!幸せが逃げるぞ!ヌハハハハ!」
?「誰のせいだと思ってんだよ!このままじゃ、先越されんじゃんかっ!」
?「それは残念だな!ヌハハハハ!とりあえず笑うか!ヌハハハハ!」
?「『ドン』ッ!」
ドン「お前も笑え笑え!ヌハハハハ!」
?「ああもうっ!何でボクがこんな食い気オンリーの馬鹿と組まなきゃいけないんだぁ〜っ!」
ドン「ああっ!」
?「な、何だよ…どうしたんだよいきなり?」
ドン「『スノア』…大変だ…。」
スノア「へ?い、一体どうしたんだよ?」
ドン「ヌオォォォッ!」
スノア「ドンッ!どうしたの!」
ドン「…ハ…ハラ…減った…。」
スノア「はい?」
ドン「ハラがグゥって…。」
スノア「…。」
ドン「い、いかんっ!また鳴ったぁっ!」
スノア「空で反省してこぉいっ!」
ドン「ヌハハハハーーー………。」
スノア「…な、何でボクが…。」
ドン「ただいま!」
スノア「だはっ!だあもう!」
ドン「怒ってばっか、しんどくないか?」
スノア「誰のせいだっつうのっ!」
ドン「……笑うか!ヌハハハハ!」
スノア「人の話を聞けぇっ!」
ドン「ヌハハハハ!」
スノア「…はぁ……と、とにかくさっさと行くぞ!アイツラより先に行くんだ!」
ドン「…なあスノア。」
スノア「ん?今度は何?」
ドン「足つった。」
スノア「アホッ!」
(翌日)
ライファ「さあて、行くか!」
ナリィ「ミトス、どうしたの?」
ミトス「はは…フォテに襲われて眠れない眠れない…。」
ナリィ「さ、災難だったね…。」
フォテ「さあ、『ソーラレイ遺跡』に参りましょう!」
ナリィ「フォテは元気だね…。」
ミトス「はぁ…よしっ!行こうっ!」
(アクスは)
アクス「ぐ…体が…。くそ……反動が半端じゃないな…。久々だと…こんなもんか…。」
(鈴の音が聞こえてくる)
アクス「こ、この音は!」
?「おやおや?アクスくんらしくない姿ですねぇ。」
アクス「!」
?「クク…。」
アクス「…やっと……やっと現れたなっ!『カゲツ』ッ!」
カゲツ「お久しぶりで…どうやら元気そうですねぇ。」
アクス「くっ…砂…っ!」
カゲツ「ダメですよ。」
アクス「ぐわぁっ!く、くそっ!」
カゲツ「君みたいな落ちこぼれに、その『力』は使いこなせませんよ。」
アクス「は、離せっ!」
カゲツ「クク、今なら簡単に殺れそうですねぇ。ねぇ、アクスくん?」
アクス「ぐ…が…『牙砲』っ!」
カゲツ「クク。」
アクス「なっ!」
カゲツ「こんなものですか?『あの時』から少しも成長していない。やはり落ちこぼれですよ…君は。」
アクス「…牙…ほ…。」
カゲツ「『牙砲』。」
アクス「ぐはぁっ!」
カゲツ「クク。」
アクス「ぐ…。」
カゲツ「惨めですねぇ。いや、その姿こそが、君のあるべき姿なのですよ。」
アクス「キ…キサマだけは……キサマだけは絶対許さないっ!許すものかっ!」
カゲツ「ふぅ…やれやれ、まだ『あの男』を気にしてるのか…。」
アクス「はあはあはあ…。」
カゲツ「あんな小汚い馬鹿を殺したことを?」
アクス「…せ…先生…を…先生を馬鹿にするなぁっ!」
カゲツ「!」
アクス「はあはあはあ…ど…どうだ?」
カゲツ「……クク。」
アクス「!」
カゲツ「まだまだですねぇ。」
アクス「カゲツ…。」
カゲツ「…『砂針』。」
アクス「あれはっ!」
カゲツ「『黒吸』。」
アクス「!」
カゲツ「………ん?」
アクス「……お、お前達。」
?「『バグダ』!」
?「『ローユア』!」
バグダとローユア「見参っ!」
カゲツ「へぇ。」
次回に続く