第十九劇『全ての元凶、ミトスの目的』
司会者「『大食い大会』優勝は………『ドン=マキシマム』さん、30歳っ!」
ドン「うおぉぉぉーーーーーっ!」
司会者「どこからともなくフラリと現れ、さらっと優勝をかっさらってしまいましたっ!少し話を聞いてみましょう!ドンさん、今のお気持ちは?」
ドン「うっかり優勝しちゃったぜ!スマンスマン!ヌハハハハ!」
司会者「誰に謝ってらっしゃるんですか?」
ドン「まぁた怒られちまうかもな!ま、とりあえず笑っとくか!ヌハハハハ!」
司会者「え…あの…。」
ドン「ヌハハハハ!」
ミトス「負けちゃったねぇ。」
ナリィ「バケモンだよアイツ…うぷ。」
ファム「た、確かに…自分の体積より多いんじゃない……食べた量…。」
ドン「なんぼでも来いやぁーーーっ!ヌハハハハ!」
ファム「……ふぅ、あれ?ライファは?」
フォテ「まだ飲んでますね…あっちで。」
ライファ「なんぼでも来いやぁーーーっ!ドハハハハ!」
ナリィ「もう大会終わってるって…いつまで飲んでんだよアイツ。」
ライファ「まだまだ来いやぁーーーっ!」
ドン「この酒サイコーだな!ヌハハハハ!」
ライファ「お、イケるじゃねえか!ドハハハハ!」
ナリィ「すっかり出来上がっちゃってんな…。」
フォテ「司会者の方も困ってますね…。」
ファム「はぁ、そろそろ止めてくるわ。」
ミトス「うん、頑張って。」
ファム「まっかせてミトス!…ふぅ、ちょっとライファ、いい加減にしなさいっ!そこのアナタも、いつまで騒いでるの!」
ライファ「んあ?何だ…こんなとこに肉付きの良い牛がいるぜ…。」
ファム「う…牛…。」
ドン「うひ?お、ホントら!焼ふの面倒らぜ!生でいっとくかっ!ヌハハハハ!」
ライファ「こんなの生は腹壊すぜ!ドハハハハ!」
ファム「こ、こんなの!……お前らいい加減にしやがれぇっ!」
ライファとドン「どわぁぁぁーーー……。」
ナリィ「ああ……一般人が飛んでいく…。」
ミトス「それじゃ、宿に行こっか。」
フォテ「そうですね。」
(ミトス達は宿へ)
フォテ「そういえば、ミトスさん達は何処を目指してるんですか?」
ミトス「あ、そういや言ってなかったっけ。ごめんごめん。多分フォテも知ってると思うんだけど…。」
フォテ「何処です?」
ミトス「『ソーラレイ遺跡』だよ。」
フォテ「『ソーラレイ遺跡』ですか……其処に何かあるんですか?」
ミトス「『蒼の秘宝』を探してるんだ。」
フォテ「『蒼の秘宝』というと…あの『無限の知識』を与えてくれるという?」
ミトス「うん…。」
フォテ「…理由を聞いてもよろしいですか?」
ミトス「…そうだね。フォテには知ってて欲しいな。」
ナリィ「ミトス…いいの?」
ミトス「うん。……僕はねフォテ…返してもらいたいものがあるんだ。」
フォテ「返してもらいたいもの…ですか。」
ミトス「うん。」
フォテ「何ですか?」
ミトス「……『時間』だよ。」
フォテ「『時間』?それは一体どういうことなんですか?」
ミトス「昔…戦いがあった。その戦いの中で、僕は『時間』を…そして……『エーデルワイス』は『自由』を奪われた。」
フォテ「『エーデルワイス』?誰なのですか?」
ファム「姫様よ。」
フォテ「姫…様…?」
ファム「ええ、昔ね、一つの王国があったのよ。」
フォテ「…。」
ファム「王国の名前は『サニーローズ』。」
フォテ「聞いたことが無い名前ですね…。」
ファム「当然よ。こちらの世界じゃないもの。」
フォテ「え……ど、どういうことなんですか?」
ミトス「『ラナ』…って知ってる?」
フォテ「え…あ、はい。かつてはこの星の真上に存在した惑星ですよね。何かの理由で、消滅してしまった惑星だと、聞きました。」
ミトス「…今でもあるよ。消滅なんかしてない。」
フォテ「えっ!」
ミトス「僕達はその世界…『ラナ』の住人なんだ。」
フォテ「……な…何を言ってるんですか?」
ミトス「『ラナ』は消滅してない。ただ見えないだけなんだ。」
フォテ「…ほ…本当なんですか?」
ミトス「…見て。」
フォテ「それは確か…『バトルコウモリ』と戦った時の…。」
ミトス「これは『輪術』、かつて『ラナ』に存在した技術だよ。」
フォテ「『輪術』…。」
ミトス「今はもう、失われた技術だけどね。」
フォテ「…その話が本当なら、何故『ラナ』は見えなくなったんですか?」
ファム「姫様よ。」
フォテ「え?」
ファム「姫様が…『自由』を奪わてしまったからなのよ。」
ミトス「『エーデルワイス』は『ラナ』そのものなんだよ。『ラナの光』は『エーデルワイスの光』…だからその『光』を奪われたせいで、『ラナ』の輝きも失ってしまった。」
フォテ「…その『ラナ』は、一体どういった世界なんですか?」
ミトス「…綺麗な世界だよ。この世界…フォテ達が生きてるこの世界に負けない、とてもとても綺麗な世界なんだ。」
フォテ「…。」
ミトス「緑豊かで、たくさんの生命が育まれた世界。『死』を超越した世界…だった。」
フォテ「『死』を超越ですか?」
ミトス「…うん、寿命に縛られない者達が存在した世界だったんだ。」
フォテ「な…何故ですか?」
ミトス「…『血』だよ。」
フォテ「『血液』ですか?」
ミトス「うん。」
フォテ「『血』が何ですか?」
ミトス「吸うんだよ…他人の『血』をね。」
フォテ「ひぃっ!す…吸うって…。」
ミトス「そうやって、他人から『血』を貰うことで、寿命が限りなく長くなっていく。吸い続ければ、寿命で死ぬことはないんだ。」
フォテ「……で…でも吸うって……一体…。じ、じゃあミトスさんも…『血』を…。」
ミトス「僕は『ヴァンパイア』なんだよ。」
フォテ「え……ええっ!」
ミトス「だから僕は『血』を吸おうと思えば、この『吸血歯』で…ん?」
フォテ「…し……しし…。」
ミトス「ど、どうかしたの…フォテ?」
ナリィ「ま、まさか…。」
ミトス「フォテ?」
フォテ「調べさせて下さ〜〜〜いっ!」
ミトス「ええっ!」
フォテ「ま、先ずは『血液』を少々…。」
ミトス「ちょ、ちょっとフォテ!」
ナリィ「はは…やっぱり。」
フォテ「ただ者ではないと思っていましたが、まさか…まさか!あの神話に出てくる『吸血鬼』だったなんてっ!し、調べさせて下さいっ!」
ミトス「ちょっとぉぉぉーーーーっ!」
ライファ「ん?どうした?」
ナリィ「あ、今回は遅かったね、帰って来んの。」
ライファ「うるせえっ!んで、何だこの騒ぎは?」
ファム「実はね…。」
(ライファに説明する)
ライファ「成程な…言っちまったんだな。」
ファム「それだけフォテのことを信じてるってことだわよ。」
ライファ「んで、フォテはミトスの正体を知って、ああなってんのか。」
(数分後)
ミトス「はあはあはあ…お…落ち着いた?」
フォテ「す、すみません…。どうも珍しいものに出会うと、我を失ってしまうらしいんです。」
ミトス「はは…ものって…。」
フォテ「ミトスさん!」
ミトス「な、何?」
フォテ「話の続きを聞かせて下さい!」
ミトス「ん?あ、ああ、そうだね。どこまで話したかな?」
フォテ「ミトスさんが『ヴァンパイア』で、『血』を吸うことが出来るというところまで聞きました。」
ミトス「そっか。…そう、僕は『血』を吸うことが出来る。」
フォテ「ということは、ミトスさんは見た目よりも、ずっと長生きをしているんですか?」
ミトス「…そうだね。」
フォテ「そう…ですか。」
ミトス「でも勘違いしないでね。」
フォテ「え?」
ミトス「僕は他人の『血』を吸ったことはないよ。」
フォテ「そうなんですか?」
ミトス「『ヴァンパイア』はね、元々長命な生物なんだよ。それこそ何千年も生きるね…。」
フォテ「…ではライファさんや、ファムさんも…?」
ライファ「いや、オレ達は『ヴァンパイア』じゃねえよ。」
フォテ「え?」
ファム「確かに私達の中には『ヴァンパイア』の『血』は流れているわ。」
ライファ「だけどな、流れてるっつっても、ホントにごく僅かなんだよ。」
フォテ「純粋な『ヴァンパイア』ではないということですか?」
ライファ「ああ、オレ達には『吸血歯』もねえし、何千年も生きるなんて神業出来ねえ。」
フォテ「では…『ハーフ』なんですか?」
ライファ「馬鹿たれ。『ハーフ』っつうのは、半々てことだろ?オレ達の中には、もう九割以上が人間の『血』であったり、他の『亜人』の『血』なんだよ。ま、でも僅かな『ヴァンパイア』の『血』のお陰で、普通の人間よりは長命だがな。」
フォテ「ではミトスさんは…。」
ミトス「僕は純粋だよ。僕の中には『ヴァンパイア』の『血』しか流れてないよ。」
フォテ「それでは、『ラナ』には、ミトスさんのような純粋な『ヴァンパイア』がたくさんいらっしゃるんですか?」
ミトス「ううん。」
フォテ「違うんですか?」
ミトス「…今、存在してる『ヴァンパイア』は四人のはず…だよ。」
フォテ「たったそれだけですか?」
ミトス「うん。僕と『エーデルワイス』と『ソリュート』…。」
フォテ「『ソリュート』?誰なんですか?」
ミトス「僕を導いてくれた人だよ。大会が始まる前に話した…逃げてばかりの僕を救ってくれた……僕の大切な仲間だよ。」
フォテ「…そうですか。…あと一人…。」
ミトス「…。」
フォテ「最後の一人は、どのような方なんですか?」
ミトス「…。」
フォテ「…ミトスさん?」
ライファ「ミトスが言わなかったか?…ある戦いがあったって。」
フォテ「あ、はい。」
ライファ「その戦いを起こした、元凶だよ。最後の『ヴァンパイア』の一人はな。」
フォテ「…ミトスさん。」
ミトス「…そう、僕の『時間』を奪い、『エーデルワイス』の『自由』を奪い、『ラナ』から輝きを喪失させた張本人。」
ファム「それだけじゃないわ。その戦いで、何人もの命までも奪ったのよ。お年寄りや…子供…赤子までね。」
ナリィ「ホントにね…。」
フォテ「…何者なんですか?」
ミトス「…。」
ライファ「オレ達と同じ隊長だった男だ。」
フォテ「隊長?」
ライファ「王国『サニーローズ』には、王国を護衛する隊があるんだ。『伍行隊』と呼ばれる隊がな。」
ファム「『伍行隊』には、『火の隊』、『水の隊』、『木の隊』、『土の隊』、『金の隊』があるのよ。」
ライファ「ちなみにな、その中の『火の隊』の隊長はオレだ。」
フォテ「えっ!」
ファム「私は『水の隊』の隊長よ。」
フォテ「はあ…。」
ライファ「そして…その中の一人…『金の隊』の隊長が…全ての元凶なんだよ。」
フォテ「隊長が…ですか?」
ミトス「アイツが何で、あんな戦いを望んだのかは分からない。だけど、アイツは確固たる意思を持って、自らの野望のために、戦いを起こしたんだ。」
フォテ「…た、倒したりは出来なかったんですか?」
ミトス「『ヴァンパイア』は、そう簡単には倒せない。それに…。」
フォテ「それに…。」
ミトス「アイツは僕と同じ『異端児』だから。」
フォテ「え?」
ミトス「その『異端児』は、『金鬼』と呼ばれ、『異質な力』を持った『ヴァンパイア』…。」
フォテ「…。」
ミトス「その『鬼』の名前は…。」
フォテ「…。」
ミトス「『ヘルユノス=オウガ』……僕が探しているヤツだよ。この手で、ケジメをつけるためにね。」
次回に続く