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第70話 報酬

「亜空間に居てもお前達が戦っているらしい様子は伝わって来たが……一体、どうなったのかな? こうして無事という事は奴らを退けたのだろうが」


 アルデバランが心配そうに俺に聞いて来た。


「実際に見ていないのだから、俺達を信じて貰うしかないが……【北の旅団】の隊長の正体もフェンリルだった。俺達でそのフェンリルに何とか深手は負わせたが、済まない……最後は逃げられた」


 俺はアルデバランを含めたギルドの冒険者5人にフェンリルに止めを刺せなかった事を詫びる。


 それを聞いた5人は驚愕の表情を浮かべた。


「フェ、フェンリル!? あのガルムの群れだけでもとてつもないのに、皆、伝説の怪物ではないか?」


 驚くアルデバランにベリーニが追随する。


「ガルムは囲まれた時と彼女に放り出された時はどうなるかと思いましたが」


 おお、ベリーニは怒っていないのか?


 さすが懐が深い、もしかしたら女性にだけかもしれないが。


「……やはりここでも感じられたあのガルム以上のとんでもない魔力波オーラはそんな怪物だったのですか? あなた方が、とてつもない化け物と戦っている気配だけは伝わって来たんですが……」 


「ああ、最後にフェンリルは敵味方見境無しになっていた。ガルムに獣化した北の旅団の何人もが食い殺されていたよ」


 俺はリルランク、すなわちフェンリルや北の旅団との戦いに関して、メフィストフェレスの部分を除いてかいつまんでギルドのメンバーに話したのだ。


「成る程、やはり皆さんの言う通りにしておいてよかったですよ。もし勝てたとしてもこうして皆、無事には済まなかったでしょうから」


 ほっとするベリーニにアルデバランが反論する。


「何を言うか! フェンリル如き、俺にかかれば容易たやすいものだ」


 それを聞いたベリーニが苦笑いし、肩を竦めた。


「全く……すぐ熱くなるのは昔から変わりませんね」


「何を言うか! 小僧ジュリアーノめ!」


 斜に構えたようなベリーニの言い方にアルデバランが激高した。


 落ち着いてくれないかな、公爵様。


「まあまあ」


 剛腕の2つ名で呼ばれるアルデバランとすれば、安全な所で守ってもらうなんて、誇りプライドが許さなかっただろう。


 本音はフェンリルと戦いたかったに違いない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「調査自体は成功ですね」


 やっと怒りが収まったアルデバランにベリーニが同意を求める。


「そうだな、あれだけの財宝と金鉱脈が見つかったんだ。戻ったらすぐに管理と開発の方法を考え、実行せねばなるまい。ただ今回の件でここを狙う奴が居る事も良く分ったよ」


 アルデバランは今回の件でだいぶ危機感を持ったようだ。


「北の旅団は依頼者が居ると言っていた、色々用心した方がいい」


 俺はアルデバランに注意するように伝える。


「用心か? はっはっは! 心当たりが多すぎてどうにもならんな」


 アルデバランは豪快に笑った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「では、悪魔の口の入り口はホクトさんの障壁魔法で塞ぎますが、とりあえずはそれで良いでしょうか?」


 ベリーニがアルデバランに確認と同意を求める。


「ここにジョー以上に強い障壁を張れる者は居らんからな。……それでいい」


「ではホクトさん、申し訳ないが、いろいろ決まったら、また障壁解除の為にここまで足を運んでもらう事になりますけど……」


 申し訳なさそうに言うベリーニに俺は問題無いと手を横に振ったのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 1時間後……


 瞬間移動でバートランド郊外に戻って来た俺達は、街の正門から街の中へ戻る。


 衛兵隊には街から出ていない筈の俺達を見咎めて、問題が起きるのを防ぐ根回しをしてある。


 帰るタイミングがはっきりしないので、ギルドの障壁魔法を術者に伝えて外す事は不可能である。


 なので出発する際に帰りの時はそのような段取りにしておいたのだ。


 それとアルデバランはたまにお忍びで城外に出るらしく、顔とギルドカードを見せただけで衛兵は笑顔で簡単に通してくれた。


 とりあえず俺達はアルデバランをこの街に無事に戻すという、最大の任務は果たしたのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今、俺達はアルデバラン達と一旦別れ、冒険者ギルドの会議室で待機している。


 アルデバランとベリーニは今回の報酬と俺達クランのランクアップをするための準備をしてくれているらしい。


 ランクのアップに関しては既にAランクのクラリスだけは昇格が無く、Aランクのままと言われていたが、彼女にさして不満気な様子は無い。


 更に1時間が経ちクラリスが大きな欠伸をした、その瞬間、アルデバランとベリーニが入って来た。


 クラリスは、それを見て、慌てて口を手で隠す。


 俺達を見たアルデバランがニヤリと笑うと、嬉しそうに話し始めた。


「待たせたな、お前達。まずランク昇格の件だ。今回の依頼でお前達は文句なしの働きをして、その技量もBランクの水準レベルを遥かに超えている。実はこのベリーニも含めSランクにしては……と言う意見もあったがな。2ランク特進というのは中々前例が無いのだ」


 まあ悪いが我慢してくれとアルデバランが笑うが、俺は別に良いと答える。


「よし、とりあえず今回はジョーとフェスをAランクとし、クラリスも含めて文句無くメンバーが全員Aランクのクラン黄金の旅ステイゴールドを正式にギルドのAランククランとすると決定した。ただ、この分で行けば皆、Sランクも時間の問題だ、まあ頑張るんだな」


 これでAランククランか、やはりBとはひびきが違って嬉しくなる。


 俺って……やはり小市民なのか?


「分った……謹んで受けさせて貰うよ」「ありがとうございます!」


「わぁ、やっとみんな、一緒だね」


 俺達がAランクへの昇格を受ける返事を聞いたアルデバランは次の話に移る。


「次に報酬だ。まず前回の報酬だが調査報酬で王金貨3枚、確かグリフォンは退治していなかったな。あと不死者アンデッド500体討伐分が王金貨2枚と白金貨5枚」


「ああ、それで良い」


「よし次に今回の報酬だ。実は前以まえもって報酬を決めなかったな。悪いが今回は俺の裁量で決めさせてもらう。でもジョー、普通はちゃんと事前に契約するものだぞ」


 それはうっかりしていたな。


 でもここは軽口くらい叩いておくか。


「バーナードなら働いた分だけしっかり評価してくれると信じていたからな」


「ははは、相変わらず口が巧いな。では本題に戻るぞ。悪魔の口への移動及び案内、これで王金貨5枚」


 え? 王金貨5枚?


 移動とかだけで500万円!?


「移動と案内だけで報酬が王金貨5枚って、それ、多くないか?」


「はっ! 時は金なりなのだよ。あんな遠方への調査が今日1日で済んだ事自体が常識外だ。俺とジュリアーノを含めて、この5人は結構忙しい。調査自体を10日程見込んでいたのに、それがたったの1日で完了だ。こう言えば分るだろう……はっきり言ってとても助かったのさ」


 成る程、時間がそんなに短縮されれば、その通りだな。


「分った」


「次に俺達を警護してくれた手当てだ。これは大きいぞ。お前達が命を張ってくれたんだ。……こちらは竜金貨5枚を与える」


 これにはもっと吃驚した!


 竜金貨5枚、何と5千万円だ!


「な! 竜金貨5枚……だと!?」


 驚く俺に対してアルデバランは何という事は無いと手を横に振った。


「そう驚くな、俺達の命の代金なんだ。1人、竜金貨1枚じゃ、これでも安いくらいだぞ。全員一致だよ」


「そこまで言うなら分った、喜んで頂くよ」


 そして報酬はまだあると言う。


「最後に俺の領地に対しての貢献費だ。お前達が財宝や金鉱脈を発見した者としてのいくばくかの所有権を一切放棄する事から俺の判断で支払う……」


 そういう事か。


「…………」


「これは財宝や金鉱の規模を考えて竜金貨1枚だ。お前達の言う通りこの件には王国を噛ませた方が絶対良いからな。そういった王国への手当てや開発等々に経費がかかるんだ。

本当はもっと払いたい所だが、悪いな」


 でも竜金貨1枚、1千万円だよ。


 凄い金額だ。


「いや充分だ、と言うより貰い過ぎの気もするがな」


 貰い過ぎと言う俺に対してギルドのランクは実は報酬に比例するとアルデバランは言う。


「ランクが高いクランを雇う場合は報酬も高額になる。お前達はSランクと言っても差し支えないAランククランだ。今回はそれに見合う報酬と言う事さ」


「ありがとうございます! バーナード様」

「さっすが、分っているね、バーナード」


 フェスとクラリスも満足顔だ。


「これから金鉱の開発が順調に行って、村も潤ったらまた別に報酬を考えるからな。ぜひ、期待していてくれよ」


 それは幸運だ。


 こうして俺達はランクアップと多額の報酬を得て、意気揚々と家路についたのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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