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第2話 授業②

 フェスから様々な手ほどきを受けた次の日。俺はルイと2人で訓練場に居た。


「フェスティラから報告は聞きました。1日で両方をあれだけ使えるとは 素晴らしいですね……流石はあるじ様です」

 

 ルイに褒められてしまう。

 

 いいぞ、もっと褒めてくれ。本当は俺って褒められると伸びるタイプなんだよ

 サラリーマン時代は会社じゃあ要領悪くて、嫌味言われまくりだったからなぁ……

 

 ルイはその端正な顔に爽やかな笑みを浮かべている。

 滅茶苦茶イケメンだ。

 こういう上司が部下のOL達にもてて仕事も出来るんだろうな。

 俺がとりとめの無い事を考えているとルイはその微笑を浮かべながら俺に問う。


「フェスティラ同様、私もホクト様と呼ばせていただきましょう……よろしいですかな?」

 

 俺が頷くとルイは言葉を続ける。


「フェスから習った基礎は充分そうですね、では今日は私が4大属性以外の魔法である光と闇の魔法をお教えしましょう」


 光と闇の魔法?

 面白そうだし、ステップ1は終了って事か、よし頑張るぞ、どんと来い!


「まずは光魔法の中でもポピュラーな雷撃の魔法と回復魔法を お教えします。雷撃は昔からいろいろな大神の武器として使われています。それだけ敵が抵抗レジスト出来る事が少ないのです」

 

 へーぇ……そうなのか?

 いろいろなGAMEでは他の魔法とそんなに威力が変わらんかったが……


「ふむ……今、失礼な事をお考えでしたね。 ふ、では私が実地で教えて差し上げます」

 

 え、えっ!ちょ……


 ルイの眼が怪しく光り、彼がそう言った瞬間である。

 

 彼の魔法、雷撃、雷撃弾、雷撃矢、雷爆の容赦無い【雷撃フルコース】の攻撃がこれでもか、これでもかと俺の身体を蹂躪する。

 無詠唱で続々と魔法を発動するルイ。

 

 魔法を撃つルイの顔には狂気とも思える表情が浮かんでいる。

 俺の身体は凄く頑健だし、はっきり言って魔法が与える痛みより、ルイの表情の方が怖い。

 

 数刻後、俺の身体にしこたま雷撃魔法の威力が刻み付けられるとやっと解放の許しが出た。


 普段おとなしそうだったり、冷静な人が怒ると怖いって言うけどそれが本当だと身をもって体験したようなものだ。

 俺は雷撃属性の魔法の威力とルイの性格を文字通り体で覚えたのである。


「では、実践です。私の魔力オド魔力波オーラとなって放出されるのは分りましたか?」

 

 ルイは先程の狂喜に満ちた表情が嘘のように穏やかに微笑んでいる。

 俺はそのギャップに思わず噛んでしまう。


「フェ、フェスの時と同じ気のような物が見えたけど……」


「そうです、それが魔力波オーラですよ……火属性の魔法を覚えられた時と一緒ですね。ご自分が魔法を発動される際に魔力波の形を憶えておくとイメージし易いですよ」


 俺は先ほどの魔力波を思い出しながら雷撃属性の魔法を発動する。

 あれだけ散々、身を以って覚えたので発動は思ったより容易であった。

 

 怖かったけど獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言う事か?

 

 俺の魔法発動に対してルイはあっけなく合格を出してくれたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「次に回復魔法です。ホクト様の肉体は修復再生機能がありますのでちょっと千切れても間を置かずに再生しますから大抵は大丈夫ですが、一応痛みは感じるようになっていますので、基本からお教えしますね」

 

 ルイの言葉と穏やかな笑顔のギャップは相変わらず強烈だ。 

 頑健にして貰ったのは分っていたけど、ちょっと千切れても大丈夫って……俺はプラナリアかよ。

 ※プラナリア……ご存じない方は調べてください。


 光属性の回復魔法は主に神殿の司祭プリースト僧侶クレリックなどが使用する魔法である。

 

 彼等は神や精霊の加護により体力回復ヒール解毒デトックス解呪ディスペル麻痺解除パラライズリリース石化解除ストーンディクリプトなどの呪文を駆使して仲間を助けるその存在は冒険者には無くてはならぬものである。

 

 上級者が発動する上位呪文ともなれば、複数の効果を同時に発動させる物もあるそうだ。

 

 俺の発動は問題なくクリアー……

 何故か某GAMEのレベルアップ音楽が鳴り響くような気がするのは内緒だ。


 次に同じ光魔法の対不死者魔法アンチアンデッドマジックをいくつか教えてもらう。

 

 代表的なのは解呪の応用で【鎮魂歌レクイエム】と言うアンデッドを塵芥にする葬送魔法だ。

 

 アンデッドには火属性の魔法も有効だが、光属性の魔法で塵芥にする方が確実に倒せるのだそうだ。

 この魔法は倒した魔物を塵芥にして魔石だけを取り出す時にも使われる。

 

 こちらも聖なる光を雷の魔法と同型のバリエーションで打ち出すとの事。

 俺は発動の仕方を教えて貰い、どんどん試してみる。

 

 これも問題なくクリアーした。

 

 良し良し……


「闇属性の魔法は後にするとして先に光属性魔法の実戦に移りましょうか」


 実戦って……ん、……何故か悪い予感がする、とってもする。


「今から私が先に1体その後に1体計2体魔物を召喚します。 この魔物と今、お教えした光属性の魔法で戦って下さい。 但し、いきなり倒したり、抵抗レジストせずに攻撃を必ず受けて下さいね」

 

 ……さっきといい、ルイって絶対ドSだな。


 ルイが召喚の呪文らしいものを唱えると黒い霧が発生し、1体の魔物が実体化する。

 

 霧が晴れて出現したあれは、まさか……よく某社の想像上の生物図鑑みたいなもので見たような……


「そうです、ホクト様が今、思われた通り……正真正銘のバジリスクですよ」

 

 俺の意識を読み取ったルイが即答する。


「!」


 バジリスクは毒と石化の攻撃を持つ蜥蜴のような魔物である。

 俺を獲物として見たバジリスクは耳に障るような声で吼えると毒の息ブレスを大量に吹き出した。


 「うおっ!」

 

 思わず声が出たのは、その息を俺はルイの指示通りわざと受けたのだ。

 流石にバジリスクの息は強力で俺の身体は奴の猛毒でドス黒く染まり、体の一部はもう石化し始めていたのである。

 

 しかし毒と石化が体全体に回るまで待つような寛容さは俺には無い。

 速攻で解除魔法を発動させるとみるみるうちに体が軽くなる。


「何だ、もう石化解除魔法を発動されたのですか……」

 

 ルイは残念そうに首を横に振っている。


「ホクト様のお体の耐久性をもう少し試したかったのですが」


 ……冗談では無い、好んで俺の身体の限界など知りたくない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「次はアンデッド戦ですね」

 

 同様にルイが呪文を唱えるとまたもや黒い霧から一体の魔物が出現する。


「ルイ殿、お久しゅう」

 

 霧の中から出現したのは……おぞましい容貌で邪悪な強い魔力オドを感じる不死者アンデッド


 もしかして……


「そうです……正真正銘のリッチーですよ」


 相変わらず面白そうに答えるルイ……

 リッチーって……アンデッドの中でもヴァンパイアの始祖と並ぶ高位の魔物じゃあないか……しかも何でルイと知り合いなんだ?


「ルイ殿、そちらの少年があのお方の見込んだ……」


「ふふ、そうですね」


「だったら、遠慮無くかせていただくかの」


 少しは遠慮していいって思うが……台詞の字も違っているし


「ワシはリッチのダミアン・リーじゃ。ルイ殿の為ならひと肌脱ぐぞ」

 

 ……ひと肌ってあんた、その汚い法衣に骨と皮だけじゃないか。


「何か失礼な事を考えておるな!」

 

 リーは持っている杖を振り上げると闇属性の魔術をどんどん放ってきた。

 睡眠スリープ苦痛ペイン麻痺パラライズ石化ストーン、そして壊死ネクロウシス

 

 睡眠以外は全部呪い系のえげつない奴ばっかりじゃあないか。


 俺はルイに言われた通りにそれを全部受け苦痛・麻痺・石化を一度に解除する。

 壊死しかけている肉体は回復の最高度の呪文を更に二重で発動させないと回復出来ない程強力だった。

 

 その後、改めてダミアンが発動した闇属性の魔法も俺には発動できた。

 

 束縛して相手を身動きできないようにする呪文や記憶を一部、削除し喪失させる呪文や死霊と話す術も習得する。

 最終的には、即、死に至らしめる呪いの言葉も発動してみた。

 攻撃魔法に関しては実験台がルイだったので少しは溜飲が下がったのは内緒だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「見事じゃ! これならワシの弟子にして「ならね~よ」やってもいいぞ」


 ルイの知り合いのせいもあるけど変わったリッチーだ。


「また失礼な事を考えていらっしゃいますね、それよりどうしたのです、ホクト様。授業は未だ終わっておりませんよ。さっさとダミアン・リーにとどめを刺してくださらないと」


「そうじゃ、その通り……儂に新たな死を与えてくだされ」

 

 ダミアンの声に喜びの調子が混じっている。

 変わってるよ……絶対こいつら、おかしな奴だ。


 仕方なく俺は光属性の葬送魔法を発動させる。

 俺が葬送魔法をイメージすると何故か言霊ことだまと呼ばれる言葉が次々と浮かんで来る。


理由わけ無く冥界よみに連れ去られた魂を持つ肉体よ……我は命ず、新たなる旅に出る為、今は土に帰れ…… そしていつの日か気高く甦らん! 鎮魂歌レクイエム!」


「ふふふ、敢えて教授しなくても一流の魔法使いは自ら創造出来る言霊の才能こそが魔法の才能と言えるものなのです」


 ルイがわが意を得たりとばかりに俺の方を向いて笑う。

 魔法が発動して悶え苦しむリーなどまるで眼中に無いかのようだ。


 ぞくり!

 

 先程の狂気の表情と同様に俺はその姿に寒気さえ感じた。


「ぐぐぐ、おおおおおお~……」

 

 そうしているうちに俺の葬送魔法を受けたダミアンは塵と化し消滅していった。


「ふっ、良いでしょう。さあ次の魔法教授が旅に出るホクト様、貴方へ私からの最後の授業です」


リッチーのダミアン・リーが塵になるのを平然と見届けたルイは冷たい口調で言い放った。


 そうか……これは魔法の授業だったんだな。

 俺は改めてそれを実感していたのであった。

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