第17話 VSギルドマスター
俺の斬撃を思った通り、アルデバランは楽々躱す。
「はっ!甘いぞ!」
もう一発……
「甘い!甘い!甘い!」
無○!無○!無○!に聞こえるけど(笑)
俺は微かに口角を上げてにやりと笑う。
……逆に今度は俺について来れるかな?
俺は更に身体強化と加速の速さを1さらにもう2,3、4段階と上げていく。
「む、スピードは凄く上がったが、それだけか?」
そろそろ魔力も充分練れただろう……行くぜ!
「何っ!よ、読めん!!!」
アルデバランは俺の魔力波を読みきれず、パニックに陥っている。
この世界の生物(人も含めて)は、次の行動を起こす時に魔法だけではなく、体術を使ってもその都度、それに対する特定の形の魔力波を放出する。
俺やアルデバランの|魔眼(見切り)は、この特定の魔力の波長を見極め、相手の次の行動を読む事にある。
すなわち魔力の波長通りに相手の行動が来なかったらどうなるか?
分り易く言えば俺が必ず約束を守るという前提で、ジャブを打つと宣言して蹴りを放ったりする事だ。
俺は魔力波の波長を一見では、相手に見破られないようにして放出したのである。
それも神速のスピードによる一度に10種もの攻撃をだ。
万が一見破られても対処されても、俺はそれをすぐ切り替えて、全く違う攻撃を瞬時に複数、繰り出す事が出来る。
流石のアルデバランも一度に10もの数では、どれが本当の俺の攻撃かは瞬時に判断が出来ないのだ。
三段突き、、燕返し、払捨刀、七曜剣、微塵、岩切……
俺がイメージしアレンジした名だたる日本剣士の多彩な技が炸裂する。
剣速が薩摩の示現流でいう雲耀の速さを遥かに超えている。
実は攻撃を当てないように軽く寸止めして、アルデバランを翻弄している状態だ。
まだまだ俺は余裕である……何というチートさだろう。
「く……! 前言撤回だ、攻めるぞ!!!」
アルデバランが俺に攻め続けられて、とうとう気持ちが我慢の限界を超えたらしい。
そろそろ潮時か……
「う、参った……」
俺は息を荒くした振りをして、ゆっくりと片膝を突き、アルデバランに降参を告げる。
「!?」
驚愕の表情を浮かべ、俺を凝視するアルデバラン。
「参ったと言ったんだ……」
「な、何故だ?」
「俺はもう体力の限界だ……ぜひ今度勝負してくれ」
アルデバランはそんな俺を呆然と見つめている。
俺は、にやっと笑ってウインクした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お前は凄い奴だな…俺の面子を立ててくれたのだな」
アルデバランは声を潜めて呟くと俺を感心したように見詰める。
「……何の事だか? でも今度はお互い魔眼無しで、最初からやってみたいものだ……ギャラリーも無しでな」
「見破られていたか……おう、お前は本当に……うん、気に入ったぞ。ダレンが気に入ったのもよ~くわかる」
「爺さん連中にばっかり気に入られてもな。あ、筋肉達磨はタダ飯食わせてくれるぞ」
「はっはっは! 俺と親しくしとけば飯どころじゃあないぞ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺とフェスはギルドマスター室に案内された。
「1階で登録じゃあないのか?」
「俺が試験する時点でこういう事さ。まあ事務処理は変わらんがね」
『ホクト様、登録の際はお気を付けくださいね』
フェスが俺の顔を見て念話で話しかけて来た。
『魔力の量に関してか。水晶が壊れないように調整すればいいんだな』
『その通りです。後は登録の際の書類記入の整合性もご注意ください』
フェスとそんな会話をしているとアルデバランからギルドの概要の説明が必要かどうか打診があった。
「ギルドについての説明を聞くか」
「一応、頼みたい」
「よし我がギルドの祖「歴史は知っているからいいぞ」……そうか」
アルデバランは自分の祖先であるバートクリードに対して語れず不満顔だ。
「悪いな……」
「いや、いいさ、常識と言えばそうだしな。じゃあ改めてだ。まずギルドの規約に関してだ」
①レベルは最低ランクのGから最高ランクのSまでの8種類。
依頼をこなす度にギルドカードにポイントが溜まる。
一定のポイントが貯まってランク毎のクリアポイントになるとランクアップ。
但し、ランクアップの度にギルドに申請する必要がある。
またギルドマスターが認めた場合の特例の場合がある。
②依頼には全てランクが付いている。
自分のランクより2つ上ランクの依頼まで受けられる。
但し受諾した上でギルドへの無断での未達成や放棄は罰金とランクダウンの対象となる。
契約の中途解除で冒険者の諸事情が認められた場合は規定の違約金をギルドに支払う。
逆に依頼主の都合で契約を中途で解除する場合は、依頼主からの規定の違約金をギルドより受け取る事が出来る。
③ギルドの判断により依頼に不備があった場合は、違約金をギルドから受け取る事が出来る。
但し、時期や内容によっては金額が変更になる。
なお最高額は報酬の満額までとする。
④ギルドを通さない直接の依頼に関しては、ギルドは一切責任を負わない。
⑤Bランク以上の冒険者には指名依頼が入る場合がある。
また王国、貴族や各ギルドからの指名依頼が入る場合もある。
受けるかどうかは一応任意で、受けなくても罰則は無い。
だが受けたほうがよい場合が多い。
但し国難レベルの指名依頼の場合は基本、拒否権は無いが、国籍によって若干考慮される。
⑥ギルドに対して不利益が起こる行為をした場合は、罰金、追放及び捕縛の対象となる。
⑦冒険者同士の争いにはギルドは基本不介入である。
⑧特例に関してはギルドマスターが判断する。
「主に、こんなものだ。後は登録料として1人銀貨3枚がかかる」
「それはきちんと払わせてもらう」
「わかった、じゃあ登録だ。登録用の魔法水晶に手をかざしてくれ。 名前・年齢・種族・職業・魔力量・特技・称号が表示される。ちなみに魔力量ランクもギルドランクと同様、GランクからSランクとなっている。後、称号ってのは特定の働きをしたり魔物を倒すと付く名称だ。例えばドラゴンを倒すと【竜殺し】って付くとか、そういうやつだ」
「では私から」
『私が見本を……魔力量はAランクで……』
フェスは白い水晶に手をかざす。
アルデバランに、ばれないよう魔力をコントロールしているのがわかる。
フェスティラ・アルファン
19歳
人族
魔法剣士
魔力量ランク:A
称号:
……フェスの種族はともかく年齢を突っ込むと、フラグが立ちそうなのでやめる。
『何か失礼な事を考えていますね』
『無い無い、気のせい……』
「続いて俺だな」
ジョー・ホクト
17歳
人族
魔法剣士
魔力量ランク:S
称号:
『水晶を壊さずに済みました……よかったです』
『俺ってやっぱり魔人…?。』
「予想していたとは言え、2人とも凄い数値だ。特にジョーの魔力量のSなんて滅多に見ないぞ。で、ランクなんだが……普通の登録だと当然、新人はGランクだ」
……まあ、そうだろう。
最初は最低ランクから経験を積んで上げていくのがどんなGAMEでも王道だ。
「だがこの数値でGやFランクなんて有り得ないのと、さっきの俺との戦いでな、あれを加味した俺権限を使い、思い切って、特例でBランクとする」
Bランクか!
新人ランクから6階級特進か……凄い昇格だな。
これでも充分目立ち過ぎだが、仮にCランク以下でもな……
ギルドマスターとの戦いぶりは職員も見てたし、逆に変だと思われるだろう。
ただ流石にSランクやAランクだと目立つだろう。
「ちなみにバーナードは当然、Sランクだよな」
「いや俺は【名誉職】みたいなもんだから究極って意味で……Zランク、もしくはΩ(オメガ)ランクと言われとる」
「はあ……凄いな。ZランクかΩランクって……」
「言うなよ、あんまりかっこ良くねぇからよ」
「水晶にランク指示も入れたし、これでギルドへの基礎登録は済んだ。後はギルドカードの作成だ。ギルドカードはこのミスリル製の特製カードだ。希少で魔力を一番通すし、この大きさと薄さの割りに丈夫なんだ。よし、水晶に当てて記録した物をカードに転写してと……最後にお前等がそれぞれ自分のカードに触れて魔力を込めれば終わりだ」
アルデバランはギルカードについて念入りに説明する。
身分証でもあるし、大事な部分であろう。
「ちなみに他人に見せたくない情報は隠せる。カードに再度、魔力を込めて念じておけばいい。最低限の情報だけ表示しとけばいいからな」
アルデバランは俺とフェス分のギルドカードを魔法水晶に当てる。
2枚のカードが淡く光り、水晶の魔力によって、情報が記入されたのがわかる。
俺とフェスはそれぞれ自分のカードを渡されると言われた通り、指先に魔力を込めて触れてみる。
ミスリルの薄いカードに先ほどの情報とギルドランクが浮かび上がって来る。
ジョー・ホクト
17歳
人族
魔法剣士
ギルドランク:B
こうして俺はフェス、クサナギとともにアトランティアル大陸における冒険者への一歩を踏み出したのだった。