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第100話 イェレミアスの願い

100話達成です。

皆様、ありがとうございます!

食事終了後、俺は明日の段取りをイェレミアスと話す事となった。

 イェレミアスが告げた同族の連絡つなぎ役ルナー・ハルメトヤを確保し、情報を収集する為である。

 ルナー・ハルメトヤの自宅ヤサや交友関係も聞く。

 それによると彼は同族とは余り関わらずに人間族の仲間とつるんでいるそうだ。


「リューディア、イェレミアス。ウチのナタリアの淹れた紅茶はどうだい? 茶葉は選り抜きだぞ」


 俺が食後の紅茶の味を聞くと2人共満足した表情である。


「美味しい――それにこのお菓子、凄く美味しい」


「うむ、姫様の仰る通りだ。アールヴのハーヴティとも違うが、なかなか良い香りだ」


ちなみに茶菓子はあの男性お断りの店であり、女性の好みは種族が違っても共通の物があると実感した次第だ。


「で、明日だが俺とクラリス、そしてイェレミアス、お前の計3人で行く」


 俺がそう言うとリューディアはあからさまに不満な顔をした。


「私は連れて行ってくれないの?」


 俺はリューディアに諭すように告げる。


「まずこの屋敷の地下の倉庫にある装備品の中からお前に合うものを見繕う。その後にお前の腕前をフェスとオデットに見極めて貰う。連れて行くからには役に立って貰うぞ。後は旅の支度も手伝って貰うぞ、良いな?」


 リューディアは未だ不満そうだが俺の言う事は尤もなので何も言わずに黙っていた。

 意外だったのはオデットが不満をぶつけて来ない事である。

 今迄ならば同行出来ない事に対してはっきりと言う筈だ。


「フェス、オデット彼女を頼む。クラリス明日は早いぞ、準備もしっかりしろよ。後、イェレミアスには少し話がある、俺の部屋に来てくれ」


 イェレミアスは俺の顔を見て黙って頷いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺の部屋で今、向かい側にはイェレミアスが座っている。

 隣の従者が控える間にはフェスが控えていた。


「お前の女達は素直で強そうだ。流石だな」


イェレミアスは感に堪えない様子で言う。


「万が一、俺が斃れたら姫様を頼む。あの方はお前に興味をお持ちになったようだ」


いろいろな意味でなとイェレミアスは苦笑する。

俺は顔を顰めて手を横に振った。


「お前に直ぐ死なれたら人員の補充に困る。それに俺はお前の魔導拳に興味がある。いずれは習得してみたいからな」


 俺がそう言うとイェレミアスは低い声で笑った。


「ところで俺にはフェスの他にもう1人女がいる。未だお前が話していない女だ」


 俺は後ろに立てかけてあるクサナギを手に取った。


「?」


 俺の言う意味が直ぐには分らないのであろう、イェレミアスは怪訝な表情だ。


 『クサナギ、イェレミアスに挨拶しろ』


 『はい、ホクト様! イェレミアス殿、今後ともよろしく』


 いきなり響いた念話に吃驚するイェレミアスである。


「お、お前、それ――いや彼女は意思を持つ剣インテリジェンスソードか?」


「ああ、そして俺の大事なであるクサナギだ」


 それを聞いたイェレミアスは暫く黙っていたが、首を横に振ると俺をじっと見詰めて改めてリューディアを頼むと懇願したのだ。


「頼む、あの方は全く外の世界を知らぬ。それに生きていく上での常識も理解されておらぬのだ」


 もし彼女の兄を助けられてもまともにアールヴの里に帰られないだろうとイェレミアスは呟いた。

 もうリューディアは外の世界――この人間の世界で生きていくしかないのだと。


「あの方はああ見えても心根が本当にお優しいのだ。お前さえ嫌じゃなければぜひ娶ってやってくれ。絶対に良い妻になる」


「分った……」


「おお、引き受けてくれるのか? ありがとう! 本当にありがとう」


 普段は寡黙で強気な戦士であるイェレミアスがここまで言うのだ。

 断れない、そんな雰囲気が今、懇願するイェレミアスにはあったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日……


 朝食後、早速俺はクラリスとイェレミアスを連れて出かける事にした。

 王都セントヘレナのスラムに出向いてルナー・ハルメトヤを確保する為である。


「ホクト様、行ってらっしゃいませ」


 フェスがお気をつけてと微笑む。

 その隣にはリューディアが俺を真っ直ぐに見詰めている。

 俺に対してはやはり何か思う所があるようだ。

 俺はそんな彼女のこころをやろうと思えば覗けるが、そんな野暮な真似はしない。

 そして、その後ろにはオデットが直立不動で立っていた。

 気合が入っているようだが、別段不貞腐れた様子はない。


 あいつ、昨夜から、様子がおかしいな。

 帰ってから少し話そうか……


「ああ、フェス、オデット。リューディアを頼むぞ。リューディア、時間が無いぞ。旅の支度をしておくんだ。ついでに2人と戦ってみろ、お前の今の腕が分るだろう」


「かしこまりました、ホクト様」「行ってらっしゃいませ、あるじよ」


 フェスとオデットの言葉の後にリューディアの訴えるような俺への視線が突き刺さる。

 俺はその視線を正面から受け止めると彼女に大きく頷いた。

 彼女も俺に対して素直に頷く。


「よし、転移魔法を使う。クラリス、イェレミアス傍に来い」


 俺はクラリスとイェレミアスを呼ぶとフェス達に手を振った。

 転移魔法は即座に発動し、俺達は王都のスラムに面した亜空間に転移したのである。


「相変わらず凄いものだ……」


 イェレミアスが呟いたのを軽くスルーして俺はクサナギとクラリスに呼び掛ける。


「クサナギ、相手を殺すな。良いな? ミネ打ちだ。そしてクラリス、周囲に注意しろ。奴から情報収集するまでが大事だ」


 俺は索敵の魔法を同時に展開している。

 邪気を持った者は今の所周囲には居ないようだ。

 そして亜空間から出た俺達はヴァレンタイン王国、王都セントヘレナのスラム街に出る。

 気配を殺して、アールヴの情報屋であるルナー・ハルメトヤの自宅を急襲するのだ。


「さあ行くぞ」俺達は気合を篭めてハルメトヤの家に肉薄したのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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