理愛
「私が言える立場じゃないけど…
彼の元に戻る気持ちは無い?」
希楽
「今頃になって知っても手遅れよ。
私は彼の元から離れちゃったのに…。」
理愛
「全ては運命の悪戯なのね。
天は…容赦なんて知らないから。
時に気まぐれ、時に幸福、時に残酷、
時に過酷な試練を与えるものなのよ。」
希楽
「試練って…何でなの?
私には何かをしてあげる自信は無い、
何もできないの。」
理愛
「最初に傷付けたのは私だけど…
彼は希楽が傷付けた時で止まってるの。
その言葉で、この瞬間も苦しんでる。
拓斗が今、好きなのは希楽だけ。
だから、希楽しか癒せる人は居ないの。」
理愛
「今回の出来事が無かったとして
白紙になっても…私たちは別れてたわ。
私たちが変わらないから変わらなかった。
結果論でしかないと言いたそうだけど…」
希楽は押し黙ってしまった、かの様に
理愛が話してる間もずっと下向いているが、話を続け出した。
理愛
「でも、これが証拠じゃない?
私は別の人を愛してる
拓斗は希楽を愛してる
目には見えない感情証拠として。」
この感情証拠の話しをした瞬間から
希楽の俯いていた顔が段々と上がってきたのだった。
理愛
「拓斗は誰にでも女性に優しくて…
私は自分に自信なかっただけだった。
一回はお互いに手を離した関係なの。
私たちは本当の愛じゃなかった、
本当の愛の定義は人それぞれだから。」
理愛の目を見て
真意を確かめてる様な感じで
ゆっくりとした口調で言葉を発した。
希楽
「じゃあ…理愛は?
その相手で一番幸せって言える?」
理愛は歪めてた顔から微笑み
ゆっくりと首を縦に小刻みに振った。
その微笑みは友人でも見たことがなかった。
理愛
「最初に私に言ったよね、
何かをしてあげる自信がないって。
私はそれは違うと思うよ。」
希楽
「どうして…
そんな事が言えちゃうの?」
理愛
「今まで拓斗は自分を偽ってた?
自分に正直に希楽に接してたと思う。
でも、希楽は違ったでしょ。」
希楽は心の中を
全て見透かされてる様で
図星を言い当てられ驚いていた。
理愛
「もう、全て偽りない素の自分で
彼の心に触れてみて。
一番傷付いた心の癒しになるから。」
そう言われた希楽は
何か言いたそうな表情だったが
上手く言葉まとめられてない感じがする。
理愛
「これは希楽が1人しか居ないように
癒せるのは…希楽だけなの。」
希楽
「彼が私を好きか確証はないわ。
彼にとって私も遊びだったかも…。」
理愛
「彼は愚かね、失って気が付くなんて。
素で彼を見てないから分からなかったの。
どうでもいい人なら怒りが湧き、
愛する人に言われると心から傷つくの。」
希楽はハッとした。
理愛は「逢って話して分かったの。」
表情を見てからそう告げたのだった。