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兄貴と僕の関係

145人の仲間たちへの尊敬を込めて。

〔鎌瀬〕


僕の名前は鎌瀬犬伊かませいぬい


世界的大企業である鎌瀬財閥の跡取りにして、この日本において最も格式高い大学である神ノ宮大学に通う学生だ。


最初にまず言っておこう。


僕は選ばれた人間だ。


勉強、スポーツ、武道、容姿。


その全てにおいて、僕は神に愛されている。


全てにおいて、僕は常に、幼い頃より何においてもトップを貫いてきた。


しかも凡人のように努力せずとも常に一番であった。


僕は才能に満ち溢れている。


何をやっても、僕は常に一番。


しかも僕は全く本気を出していない。


ふふ、人生は…… 世界は所詮、僕を引き立てる為の舞台に過ぎない。


僕は常に一番を決定付けられた存在なのだ。











しかし…… そんな僕に最近たてついてくる奴がいるのだ……


実に気に食わない。


実に腹正しい男がいる。



その男の名は篠崎立。


僕と同じくして、この神ノ宮大学に入学した男だ。


いつもすました顔をした、何ともいけ好かない男だ。


そして最悪のクズ野郎でもある。



この男は…… この男は許されない事をした。


そう、不正をしたのだ。



そして、その不正とは…… 入試の点数の操作である。


この男は、いかにして仕組んだのかは知らないが、入試においてのテストの点数をいじくり、不正な点数へと改竄したのだ。


その点数…… 5科目最高500点満点中…… 500点。


つまり…… 満点だ。


おかしい…… そんなのはあまりにおかしい。


ここ、神ノ宮大学は最高学府たる東宮大学ほどの難しさではないが、その次位には位置する高難易度の大学。


そうやすやすと満点など取れるものではない。


つまり……


つまり不正をしたに決まっている!!


この僕でさえ470点であったというのに……



ぐッ……!!


おかげで、この僕が…… 主席の座を逃してしまった!!


この僕が一番ではないなんて!!


これは…… 許されることではない!!


常に一番でなくてはならない、この僕の経歴に泥を塗ったのだからな……!!


毎日電車で帰るような小市民の分際でありながら、この僕に楯突くとは!!


いかにして点数を改竄したのかは分からなかったが…… まあ大方暴力で脅したといったところであろう。


それなりに鍛えた体つきをしているようだからな。


所詮は愚民…… そんなところであろう…… そうに違いない。



して…… 奴にはいかにして罰を与えようか?


不正をした物には罰をあたえねばならない。


この僕に恥をかかせた罰を……な。


どうしてくれようか……


どうやってあいつを落とし入れてやろうか。


あの男…… なかなかボロをださないからな…… くそ!



……………ん?


そういえばあの男…… 妹がいたなぁ……


わざわざ毎日、迎えに来る妹が…… 奴にはいたなぁ……


遠目に見ていたが、奴は妹を随分と大切にしていたようだ。




くく…… そうだ…… 


いい事を考えた。


僕が…


僕があの妹を落としてやろう。


この僕にかかれば女なんて簡単だ。


少し微笑みかけてやれば簡単に落ちるだろう。


なにせ、この僕が口説くんだ… 女が断る訳が無い… 理由が無い。


それに、あいつの妹はそれなりに可愛い顔をしていたからなぁ……


遊ぶには…… 丁度いい。


なかなかいい体もしていたしな…… くくく。


そうだ… そうしよう… あいつの大切にしている妹を、俺が奪ってやろう。


そして、散々弄んだ後にあいつの前で捨ててやろう……


そしたらあいつはどう思うだろうなぁ……


くくく……


そしたらきっとあいつは僕に向かって襲ってくるだろうなぁ。


しかし、そんなのは僕の敵ではない……


いくらあいつが強そうと言っても僕の敵であるはずが無い。


本物である僕の前に適うはずがない…… 僕は喧嘩でも負けた事はないからなぁ。



くくく…… そうだ、そうしよう!


ふはは…… なんと楽しそうなんだ!!


あいつに…… 見のほどと言うのを…… 思い知らせてくれる。


――――


〔ハル〕


「やあ、こんにちは」


一人の男が僕に向かって、にこやかに笑いながら声を掛けてきた。


「…………………」


新手のナンパかな……? 


とりあえず無視しとこう。


「あ、あれ? き、聞こえなかったかな? 君に声を掛けたんだけど」


その男がさらに近づいてきて、僕に声を掛けてきた。


む…… ほとんどのナンパは僕が無視すれば去ってくのに。


しぶといな…… 


「ちょ… 無視しないでくれるかな? 君に用があるんだけど?」


その男が笑顔のまま少し声を大きくしてさらに近づいてくる。


む……


この人…… 顔は笑顔だけどなんかこめかみがぴくぴくしてる。


なんか怖いな……


う…… そんなに近寄らないでほしい。


「そんなに警戒しないでほしいな…… えっと、君は篠崎立君の妹さんだろ?」


「……………………!!」


え?


兄貴をしってるの?


「やっとこっちを見てくれたね、嬉しいよ」


男がこっちを見て嬉しそうに微笑む。


なんだろう…… なんかこの人の笑顔…… 気持ち悪い。


兄貴の笑顔は見ているだけであんなに幸せになれるのに……


顔は結構イケメンだってのはわかるけど…… この人の笑顔はなんかやだな。


それはそうと…… なんで兄貴を知ってるんだろう?


「不思議そうな顔だね? ふふふ、実は僕は君のお兄さんの大学の友達なんだ」


そういって男は僕に生徒手帳を見せる。


む……… 確かに兄貴と同じ大学みたい。


「えと…… なにかよう…… ですか?」


「お! やっと話してくれる気になってくれたね?

実は僕、大学で君のお兄さんとカラオケに行く約束をしていてね!

そこでお兄さんがどうせなら妹も一緒でいいか? と僕に言ってきたんだよ

もちろん僕は君のような可愛い娘なら大歓迎なんだけどね?」


男が一気にまくし立てる。


なんか… やっぱり気持ち悪い。


けど…… からおけかぁ…… 小学生の時に家族で一回いっただけだなぁ。


この人の前で歌うのはなんかやだけど…… 兄貴が僕も一緒が良いって言ってくれてるなら……


「そうですか…… えっと、それで兄貴は?」


「ああ…… 君のお兄さんなんだけどね、ちょっとゼミの先生に呼び出されててね、少し遅れるそうだよ

だから先に僕と二人で行っていよう」


え……?


この人と二人で?


そ… それはやだな……


それにこの人なんか怪しいし。


「えっと… ぼ… わ、わたしここで兄貴が来るのまってます」


「いや… 結構遅れるみたいでさ… 先に二人で行ってて欲しいって頼まれたんだ、ほら僕なんてあいつのカバンを預けられちゃってさ……

困ったもんだよ」


そういってこの人は手にもっていたカバンを掲げてやれやれと言う。


確かにこれは…… 兄貴のカバンだ。


ってことは…… ホントにそうなんだ…… えぇ… こ、この人と二人っきりなの……?


や、やだ… 


「え、えっと… あ、兄貴に一度電話してみても良いですか?」


「いや… 今は教授と話している最中だからね… 電話をしたらリツ君が迷惑をすると思うよ?」


「う…………」


むぅ… 確かに… 兄貴に迷惑はかけたくないなぁ……


「それとも君はお兄さんがいないと何も出来ないのかい? ………実は最近リツ君に相談されててね」


「え?」


「妹が、俺にべったり過ぎてて困るってさ…… 他に何も出来ないって…… ぼやいていたよ」


「…………………ぇ!」


な…………ぁ


え……ぅ…そ、そうなの……?


「だからさ… 今回のカラオケで自分以外の人間と交流させたいって言ってたよ? リツ君はさ……」


そ、そうだった……んだ…


うぇ… あ… そ、そう… だよね…


い、妹にいつもくっつかれてたら… す、好きなことできないよね……?


あ…… はは。


それは… そうだよ……ね?


はは… そうだよ… あたりまえじゃないか… そんなの。


馬鹿か… 僕は…


兄貴にとって… 僕は…… じゃま……… なん… だよ。


あ…… 


だめ…だ… 


くぅ…… やば… な…きそう……


「さぁ… そんな泣きそうな顔をしないで… ね?

大丈夫だよ… 僕と一緒に楽しもうじゃないか」


男が、僕の手を引いて連れて行く。


気持ち悪いけど… 兄貴がこの人と僕が交流することを…… 望んでるなら……


しょうがない…… よね。









「ちっ……… 手間かけさせやがって……」


――――


〔リツ〕


「あれ……?」


おかしいな?


俺のカバンがないぞ?


あれぇ? マジでどこ行った?


ちょっとトイレに行った隙になくなってるぞ?


まぁ教科書の内容は既に記憶しているから全く問題ないが……


しかし… 金持ちばっかが通ってるこの大学で、教科書を盗む様な奴がいるのか……?


ピリリリリリリリリリリリリリ!


「む……?」


着信だ……


ユキからだな…… なんか… 良くない予感がする。


「俺だ」


『リツ様ですが? 今はどこにおられます? ハル様はご一緒ですか?』


「なんだ、藪から棒に? ……俺は今大学で、ハルはまだ一緒じゃないが?」


『実はですね、ハル様に仕掛けた発信機が移動しているのですよ… 駅前のカラオケに… 心当たりはありませんか?』


「発信機って…… いや、それは置いておくとして、それは本当かユキ」


『ええ、本当です…… リツ様が存じてないとすれば、これは何かありそうですね

リツ様にべったりのハル様が、ハル様をおいて勝手にカラオケに行くとは考えにくいです

もしかしたら、悪漢に連れて行かれたのやも知れません!!

ああ!! ハル様は可愛すぎるから!!

おい、リツ! ちょっとお前ダッシュでハル様の様子見て来いよ!!』


「おい…… ちょっとお前口調が…… いいけどさ

まぁ、そう言う事なら、お前に言われるまでもない…… 授業はサボってハルの様子を見てくるよ…… ダッシュでな!!」


もし……


もし本当に悪漢がハルを無理やりに連れて行ったのだとしたら。








ただじゃおかねぇ……


――――


〔ハル〕


「ちょ…… はな… して」


僕と鎌瀬と言う人は… 今、カラオケに来ている。


そして… 僕は今… 鎌瀬と言う人に、無理やり手を握られている。


「なんでだい? 君のお兄さんも僕と仲良くしろと言ってるんだからさ…… 仲良くしようよ」


「うぅ…」


ううぅ…… き、気持ちわるい。


手から伝わる、この人の体温も… この人のうそ臭い笑顔も… 全部が嫌だ。


で、でも… 兄貴が… う… でも…


「ふふふ、君は本当に可愛いね…… 本当に素敵だよ」


「や……ぁ……」


う……あ……!!


う、そ…… 信じられない……


この人…… え……!!


僕の… ぶともも… さわ…… え!?


「ねぇ…… 僕のさぁ…… 彼女にならないかい?」


「ぇ……!?」


は……?


この人… なに言って……


「ひぁ……!!??」


「はは…… 可愛い声でなくね」


や… やだ!!


腰に手が…… え、ええ!!


抱きしめられ…… や……!


「ふふ、嬉しくて声も出ないのかい?」


こ…… 怖い…… 気持ち悪い…!!


え…… や… 


なにこれ…… すごくこわいよぉ……!!


ぅえ… やだ、やだ… 怖い… 体が、震える… こえが…でない…!


ど…… どうしよう… に、にげなきゃ……


「ねぇ…… どうだい? 僕と付き合えばいい思いがたくさん出来るよ?」


怖い怖い怖い!


やだやだ、やだよぉ……!!


うぅ… この人が触ってるところがゾワゾワして… 気持ち悪い……!!


うあ… やだ… 本当に怖い…


ぅ…… あにきぃ……


「ね…… 僕と付き合おう……」


え?


この人何しようと…… え!


ええ!! 


嘘でしょ!?


キス…… するつもり……だ……


「や……」


や、やだやだやだ!!


やめて!!


うぁ…… うそ……!!


体が…… 硬直しちゃって動かないよぉ……!!


や…… そんな嘘…!!


き、気持ち悪い…… やだ… 最悪だよ……


あ、あにき…… あにき、あにき!!


おにいちゃん!! 


「や… おにいちゃ…… たすけ… てぇ!!」


ドカァ!!


「なぁ!!!」


「うぇ!?」


その時……


カラオケの個室の扉が蹴破られた。


「おし…… 7個目にして当たりか」


蹴破ったのは……


「お、おにいちゃ……」


僕の…… 僕のおにいちゃんだった。


――――


〔リツ〕


俺はカラオケに着くなり、一号室から順に扉を蹴破って中を見ていく。


店員に説明する時間ももったいないし、協力してもらえるとも思えないのでとりあえず実力行使で店員も黙らせた。


監視カメラの機械はすでにぶち壊したので、あとあとのフォローはユキにまかせよう。


まぁ、そんな感じでカラオケ屋の詮索を始めたのだが、開始して七部屋目でハルを見つけた。


「お、おにいちゃ……」


そこには涙を浮かべて、男に抱きしめられているハルの姿があった。


「き、貴様は篠崎り…… ぐぼぇあッ!!」


とりあえず、俺はハルを抱きしめていた男の顔面を蹴り飛ばす。


「な…… き、きざば!! げぼぉっ!!」


続いて、鼻から血を流し、地面に転がるその男の腹をすかさず踏みつける。


「こんな…… ごどじで… ふぼぁが!!」


首のあたりを思い切り蹴る。


「ちょ… まっ!! げべぇっ!?」


顔を思い切り踏みつける。


「や… やめ… もうやめ…… ぎぇえええええええええあああああああ!!!!」


そして最後に、股間を思い切りふみ潰した・・・


「ふぅ」


泡を吹いて失神した男を見下し、俺は一息つく。


そして……


ゆっくりとハルの方を見やった。


「あ… あぁ…… おに……ちゃ…」


そこには、カタカタと肩を震わせながら、俺を見上げ、泣き出してしまうハルの姿があった。


ハル……


俺の元弟…… そして今は妹。


どんなに変わっても身内であることは変わらない…… 双子の妹…… ハル。


そのハルが…… 今日、男に襲われた。


幸い、大事は無かったようだが男に襲われた。


俺の大事な家族が…… 襲われた。


俺の大事な…… ハルが。


「おい……」


「ぅえ……!?」


ハル俺の声に怯えたような様子を見せる。


なぜだろう……


自分が…… 思っていたより…… 遥かに低い声が出てしまった。


まるで…… 怒っているかのような。


「おい、ハル」


「は、はい……」


俺は床に女の子座りで震えているハルに目線を合わせるために、しゃがむ。


そして、相変わらずの低い声で、ハルのことを睨みながら声をかける。


ハルはそんな俺に怯えたような様子を見せる。


俺は…… どうやらかなり怒っているようだ。


いったい…… なにに?


なんだ……? なんだろうか…… この暗いような熱いような感情は?


「ハル……」


「あぅ……」


俺は、ハルの涙が伝って濡れている顎に手をかけ、くいっと持ち上げる。


ハルに無理やり目を合わさせる。


濡れた瞳と少し怯えたような表情が…… とても綺麗でとても可愛い。


俺は……


そんなハルの表情を見た俺は、胸の中の謎の感情が更に熱く黒くなってい行くのを感じる。


そして……


その感情が湧き上がって俺の心を満たしたとき…… 俺はハルに向かってとんでもないことを口にした……


「なに…… 触らせてんだよ」


「え……?」


「なに俺以外の男に…… 体触らせてんだよ」


「ぅえ……!」


「お前は……」


俺はハルの目の奥を睨みつける様に見る。


ハルはそんな俺の視線を、目を見開いたまま受け入れる。


「お前は俺のモノ・・だろう…… 勝手な事してんじゃねぇ」


「………………ぁ」


何を言ってるんだ俺は……


そんなことを頭の隅で思いながらも、俺の体は迷うことなくそれを口にした。


今…… 俺の体を支配する、この熱くて黒い感情の正体。


これは…… 独占欲。


俺は…… どうやらハルを…… 


「ぁ……ぅぅ…」


ハルはそんな俺の言葉を聞くと、直後にびくりと体を震わせる。


「ぁ……ああ……」


そして、熱を帯びた息をふるふると吐き出して、頬をぶるりと振るわせた。



ハルは…


顎に手をかける俺の右手にそっと手を添え。


涙に濡れた頬を、桃色に染め上げ。


涙の溢れるキラキラとした瞳を…… どこか恍惚とした色へと変える。


そして……


「はい……」


ハルは俺の目をしっかりと見つめる。


俺の目を見て、はっきりと……


「ハルは…… おにいちゃんのものです」


切ないほどの微笑でそう言いきったのだった。

この結末は予想外だったw


本当は普通にハルに優しくするつもりだった。


だけどリツが勝手に動いた。


ムラムラしてやった。


後悔はしていない。


ユウシャアイウエオンはそう自供しており……以下略。

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