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溺れたら伸びた(鼻の下)

 おはよう。

 迷宮で思いがけずピンチに陥って、なんとかかんとか帰って来て、一晩明けての朝だよ。

 昨日の事もあって、エリザベスさんが己を責めるわ、俺を抱きしめて放してくれないわで、ちょっとエライ事になったんだが、今朝にはなんとか落ち着いている様子だ。

 ちょっと油断してたんだが、前世でやってたTRPGにて、人質の首筋にナイフ当てられて、そのダメージなら、一回耐えるから気にしないぜというマンチな判定は、この世界では通用しないらしいな。

 不意打ち、クリティカルは、十分即死ダメージをくれてくるので、一撃死の危険はいくらHPが有っても無くならないのかもしれない。

 これからも気をつけて行こう。 


 さて、前回の特典開放で出てきた岩を、アイテムボックスから取り出して床に置いてるなう。

 床が軋んでるが、なんとか大丈夫だろう。

 今回は、ナイツの召喚を行いたいと思う。

 ナイツというのは、ドラゴンズ・ハート作品中のパーティーメンバーのようなもので、自らエディットして成長も管理できる専属が一名、用意された中からポイント払って雇う連中が二名契約できる。

 あの世界じゃ、大型竜種や各種化物に、しがみついて殴って削り殺す、某怪物ハンターじみた戦闘力の持ち主がキャラクターなので、召喚での戦力アップは間違いない。

 まあ、対モブで属性の吸収活性がある相手に、属性攻撃やらかして乱戦で「うぎゃあ」と不覚を取る事は意外に多かったりするが……。

 とにかくエリザベスさんに抱いて貰いつつ、怪しい光を放つ召喚石に手を触れると、不意に空中に光の歪んだ面が現れ、其処から一人の女性が降り立った。

 女性は此方に右手を翳し、一礼して……首を傾げた。


「覚者さま? ナイツの民レイン、御前に。 お姿をお見せ下さい」


 女性は、かなり大柄で190センチを超えるような長身ながら、誰もが振り向くような憂いを帯びた美貌を黒い瞳と赤い唇、泣きぼくろが彩い、白い肌を波打つような腰まで伸ばした黒髪が飾る。

 俺を呼ばう声はハスキーながら、小娘では出せない色気を感じさせる。

 ぶっちゃけ、身長はアイテム重量の制限に負けて大柄にしたが、それ以外の部分は俺の趣味全開で、こうして目の前に立たれると「おれのかんがえた○○のぱーとなー」的な感じで、激しく居たたまれない物がある。


「覚者様?」

「うぁあい(こっちだ)」


 なんとも言えず、片手を上げる。


「ナイツの民、レイン。

 覚者様よりの、お呼びにより参上いたしました。

 ぇ、覚者様!? う、うぅかわいぇ……かく、あう!?!?!」


 ゲーム中だとナイツの民という面々は感情が薄く、更に英語で喋る上に生真面目な設定だったので、やはり硬いなと思っていたら、何やらパニック気味に唸りだした。

 なんだか言葉にならない感じで、じりじりと手を伸ばしてくるレインさんに気圧されるように、エリザベスさんがレインさんに俺を渡すと、次の瞬間には俺はレインさんの胸元に抱き込まれて溺れていた……いや、本気で埋まってるんですが、息できません……いやいや柔らかいのに包まれて、気持ちいいやら苦しいやら。

 あーうー助けて、ヘルプミー、エリザベスさん。


 ……

 …………

 ………………


「申し訳ありません。

 今の覚者様を見ていると、抑えられない何かが……」


 自分の行動が信じられないというように、驚いた様子のレインさんが顔を青くして弁解している。

 本気で天国と地獄を見た感じで死ぬかと思ったが、俺のピンチを見て、レインさんに飲まれ気味だった気持ちを盛り返したエリザベスさんが、ぐったりした俺をレインさんから救い出してくれた。

 あれで死んでたら、かなり恥ずかしい死に様だった。

 男子的には憧れる死に様かもしれんが、今はまだ遠慮したい。

 それにしても、レインさん……確かにエディットした時の性格は「覚者第一」で「脳筋」って、感じのプリセットだったんだが、ちょっと極端に突っ走ってないだろうか。

 別に「覚者第一」は、行動基準を高めに置いておくというくらいで、決して直情行動に突っ走る目標って意味じゃなかったはずなんだがなぁ。

 今後の問題点として、脳内にメモっておこう。


 まあ、それは今は置いといて。

 

「うあぅ(今は)うあうあぅ(とりあえず)」


 レインさん用の装備をと、宿を出ようとしたら、宿のおっちゃんに見咎められて、一人増えてる分の代金を徴収された……いや、さっき増えたとこなんですけどね。

 この際、人数が増えたので、部屋を移ろうかと考えた所、貸家を借りた方が安いぞと。

 なんでも、このおっちゃん、迷宮探索者のチーム向けの5・6人用のアパートの大家もやってるらしい……結構、手広くやっとんな。

 急遽予定を変更、アパート見せてもらって、思ったより良さ気な部屋だったんで、引越し開始。

 とはいっても、苦労する程の荷物はないが。

 落ち着いた所で、再びレインさんの装備を見繕いに、ボッタクリの店に。

 なんだかんだ言いつつも、一番品揃えがいいんだから仕方がない。

 レインさんは、キャラクター的にポジションは、どこでもこなせる。

 それこそ前衛壁タンクから・前衛火力・物理遠距離・魔力遠距離・回復職まで、成長次第で得手不得手は出るにしろ、どうにか出来る。

 俺自身が、現状魔法職しかできない為、どちらかと言えば、前衛が望ましいのか。

 という事で、金属プレート装備にシールドと長剣。

 俗にいう戦士ジョブスタイル。

 これでレインさんが壁、エリザベスさんが半前衛、リズリットさんが中衛って感じか。

 ただ後衛の筈の俺が、誰かに背負われないといかんので、エリザベスさんに。

 今までは、結構な負担だったと思うが、ポジションが一段下がった分、多少緩和されてると……いいなぁ。


 一通り、今日のやるべき事が片付いたが、空を見ると、すっかり夕方の赤い空。

 もう迷宮に行くには辛い時間帯だ。

 そこで、夕食の見繕いがてら、なんぞ面白い話でもないかと、情報収集をする事に。

 人の良く入っている酒場で飯を食いながら、早々に酒を飲んでる商人やら職人連中の話に耳を向けていると。


 曰く、


「なんでも最近、貧困の村々で、天の使いと呼ばれる子供が云々」

「イキナリ金回りの良くなった連中を襲って、子供だけ拐っていく盗賊団が云々」

「子供を拾ってから、妙にツイてる奴が居る云々」

「子連れの旅人を襲った盗賊が返り討ちにあって云々」


 妙に子供がどうこうという話が耳に入る。

 どう考えても、転生した連中です、ありがとうございました。

 こうして聞くと、特典を開放できた連中は、意外に多いのかもしれない。

 ただ、そのまま親元で無事に、という話は少なそうであるが。

 やはり、生まれた層が、第一の試練か。

 其処を掻い潜って、力のある保護者を得る事が出来て、やっと何とかって段階に為るようだ。

 本当に難易度高い地獄だぜ。


 …………ん?


 俺って、保護者を得たと言うよりは、被扶養者を拾ってるような気が……うん、深く考えないでおこう。



 そんな話を聞きつつ食事を終え、引っ越したばかりの貸家で風呂に入り、色々と洗われちゃったり触っちゃったり、くっくっくっくっく、堪らんのう。

 そして寝る段になって、レインさんとエリザベスさんの俺を見る目付きが、ちょい怖い事になってたんで、リズリットさんと寝る事にした。

 何気にリズリットさんとは、あまり一緒に寝たことはない。

 大体エリザベスさんが放してくれないからなぁ。

 今も物凄い目付きでリズリットさん睨みつけてるし。

 いや、エリザベスさんのハリのある胸も、良いモンなんだけどね。

 昼間に溺れ死にかけた、レインさんのミッシリした重い感触のもいいし、リズリットさんの何処までも沈み込んでいくような、柔らかいのもいいんだよ。


「うあぅ、うあぅあうぁう(そう、これはいいものだ)」

「あぁ、そんな、お許し下さい」


 こう、無防備を強いられながら、耐える美女の姿っていいねぇ。

 って、まあ胸つついてるだけなんだけどね。

 リズリットさん、弱すぎるだろ。

 一瞬で抵抗力なくして、小指噛んでフルフルと睫毛揺らして目を潤ませるとか。

 虐めてオーラが全開すぎる。

 それそれっと……気を失ったようで御座る。

 うん、ちょっとやりすぎたかもだが、俺は悪くない。

 おやすみ。





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ステータスは変わってません。

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