表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

攻撃されて伸びた(パーティーメンバーがノックダウン的な)

なんか唐突に、登録数が増えてて驚きました。

そろそろ話の一番近場の落とし先は固まってきたのですが、ゲームネタが思いの外辛い……OTL

まあ、ちょろっと銃を使いたいなと思っても、やったこと有るゲームで、それらしい銃が出る作品って言うと、マウント&ブレイドとか、フェイブル3とか、アサシンクリードとかになってくるので、中々。


あ、この世界での妹が、特典でなんか女神っぽいものを取得した上で攫われ、なんかその妹に一目惚れした超紳士な変態貴族と一緒に、妹を取り戻すべく戦っている最中、傷ついた赤いドラゴンを見つけるとかなトリガーが思いついて、鬱エンドまっしぐらになりそうで忘れる事にしました……作品は大好きなんですが、まず手におえません。

 おはよ、いやいや、迷宮潜ってるとこだろ。


 さて前回のあらすじ、面倒事を力ずくで黙らせて、迷宮にランナウェイして来たなう。


 微妙に嫌な汗をかいたせいか、なんかダルいわ……風邪か。

 でも、上に戻ると未だ連中が居るだろうし、地下一階でダラダラしながら、時間潰して今日は早めに帰ろうか……ステは上がっても病気に強いとは限らんし。


 と、目の前に見えてきた子鬼の一団を、呪文で眠らせて早々にサヨウナラする。

 やっぱし、元作品的なダメージ倍効果とかじゃなく、首筋に刃を入れたら即死だよな。

 ふむ、何気に使っている呪文やスキルだが、元作品なんかを思い出して、色々と再認識する方がいいかもしれない。

 少なくとも、現実と摺り合わせる為にも、一度整理した方が良いような気はするな。

 時間はあるし、ちょっと考えてみよう。


 まずは、迷宮マスター、懐かしのリアルタイムRPG。

 特色としては食事と水の重要性、能力を鍛える為の行動が、それを使う事という、熟練度システムの走りだろか。

 能力としての特徴は、無手で使え、キープしていた時の呪文の奇襲性、薬品作成、爆弾作成、投擲能力への補正。

 呪文は攻撃・防御・回復・補助に毒だけとはいえ状態異常も有り幅広いが、一度使った後の再度使用までの速度がチト辛い。

 HP・マナは回復式だが、この世界の数値と比べると、鍛えて並という位になるので、チート的アドバンテージとするには、少々微妙な感じか。


 ドラゴンズ・ハート、最近の箱庭型オープンフィールドのメジャー作。

 特色としては、ジョブスタイルの幅広さ、個人に付与される基本攻撃力と防御力、従者の召喚契約能力。

 能力としての補正は、先にも書いたが、個人に依存する攻撃防御と、この世界の数値と比べて、かなり高い生命力と回復能力。

 通常攻撃やスキル・呪文についても高火力を誇り、ジョブによる対応力も高い、また弓による射撃能力はバリエーションが多い。

 ただし能力発動の多くが武器に依存する為、殆どの場合で無手では使えない。

 呪文のバリエーションについては、攻撃・状態異常付与が矢鱈に充実してるが、回復については即効性と汎用性にかける。

 因みに魔力に対応するパラはなく、スタミナ依存。

 為に、魔力枯渇には影響されないが、ブーストにもならない。

 作品中だと深い水が鬼門だが、この世界には水底の魔物は居ない模様。


 ソーサリー、懐かしというか、古のRPG。

 能力値は元になるTRPGを踏襲しているが、微妙に違う。

 数値的に上限が低く、この世界でのブーストには向かないが、職業の特殊能力は、最近の作品にはないものがあり、ビショップについては、対アンデッド用のディスペル、アイテムの鑑定が有用。

 また、呪文についても、攻撃・回復に特化したものがあり、無手からの発動が可能。

 ただし、範囲攻撃は豊富だが、低級レベルの火力は若干乏しい。

 また回復についても同じことが言えるが、上級での完全回復の他、失敗の可能性はあるものの、骨・灰からの蘇生も可能とする呪文が存在する。

 また、この世界のアイテムについては、この作品の世界の物に近い物が見受けられる。


 メイズ・シージ、若干古い作品で、マイナーではあるが、メーカーはメジャーな作品。

 スキルとレベルの成長が特徴的で、リポップのない敵によって、取捨選択の難しい作品だった。

 特色としては、能力値とスキルレベルの影響関連と、マナとライフの数値の大きさ。

 自動回復量も高く、この世界の数値を考えると、かなりなアドバンテージになる。

 呪文は攻撃・回復・召喚・状態異常と豊富、特に魔力の保有量が全体的に低く、精神力枯渇による昏倒有りという、此処の世界では精神奪取系が無駄に強い。

 また、アイテムボックスの容量と制限の緩さも有用。


 メイデン・コンセプト、懐かしのメイド人形育成ギャルゲ。

 まさかこんな世界で役に立つとは思わなかった。

 ブースト用の能力値としては寂しいが、そのスキルは有用。

 また、スキルの負担ポイント(主に魔力)を、他の作品の体力魔力で賄える為、スキル使用に於いての制限が、かなり外れている。

 直接の戦闘力としては皆無に近いが、人形の運用について優先度は高い。


 今の所こんな感じだったか?

 割と自分がビックリ人間で笑った。

 HP的に言うと、900を超えている。

 並の大人が九人分(何故かそんな感じに判ってしまう)……ただ、俺は疑っている。

 幼児補正というかクリティカル補正というか、体力200超えの時のトンボにやられた傷の深さ。

 いくら何でも、アッサリと死ぬほどのダメージが出すぎだろ。

 あの時より防御力があるといっても、自分の肌が別に岩になっている訳でもない。

 体ができていないからか、何かの条件か、タフではあるだろうが、数値通りのスペックという事は絶対にない筈だ。

 そこは、絶対に忘れないようにしよう。


 他には、立場的なものも、考えておいた方がいいか。

 俺は所詮、身寄りのない赤子だ。

 味方がエリザベスさんだけだった時は、足元がとんでもなく不確かだった。

 なんせ、口減らし対象の厄介者と、遺失物扱いの組み合わせときたもんだ。

 どっちも人認定して貰える立場じゃない。

 レインさんが合流して、少なくとも保護者が居ると主張できるようになって、ホッとしたよ。

 とはいえ、流れ者の立場なんて、砂上の楼閣めいた物であったりするんだガガガ。


 次に戦力的なもの。

 エリザベスさんは、戦士としてはチト細い(軽装の縛りと、耐久的なことを併せて)が、剣士としては並以上の技量を持ち、火力としては高い。

 ガチガチの戦士・騎士相手に殴りあうのは辛いが、翻弄する事は難しくないだろう。

 また、格下の盗賊なんぞは、刺突剣で穴だらけが関の山だ。

 人形としては、中位の上。

 ただ、まだまだ上はあるので(金とスキルさえあれば)戦力としては未だ伸びる。


 リズリットさんは、どちらかと言うと斥候的なスタイルが似合う。

 火力や壁といった役目には、余りそぐわない。

 奇襲や射撃を折り合わせた遊撃ポジションがいいだろうな。

 ただまあ最近の所は、なんでもできる器用さを買われて、格下相手の際の、使い回しポジションにされている感があるが。

 人形としては、中位の中。

 此方も未だ戦力としては、伸びる余地は大きい。


 レインさん。

 まあ、成長途中。

 なんでも出来る余地はあるものの、俺がこの有様なんで、戦士スタイルの壁役を努めて貰っている。

 レベルが低くても、豊富な体力(約600弱)と重装備も軽くこなすタフネスを持つ。

 また、ドラゴンズ・ハートからの特色として、個人由来の攻撃・防御力を持つ為、侮れない戦力である。

 現状で、マジ殴り合いを引き受けるのは、レインさんの役目になるだろう。


 ディスティニーちゃん。

 実は最強の直接火力を持つお方。

 レインさんの上位互換で火力特化である。

 盾を捨てての長柄装備なので、壁としての能力は劣るが、その殲滅力は高い。

 まあ、未だジョブ的には、どうにでもなる余地があるのだが。

 なんで、5レベルで闘士やってるのかは謎。


 テンデルステンちゃん。

 現状で俺以外では唯一の魔法火力。

 状態異常で足止めを行いつつ、通常攻撃の魔力弾へ属性付与行う事で、状況に対応するスタイルの魔術師。

 対応力は高く、人形以外であれば、回復も行える。

 ただし、此方も未だ、どうにでも出来る余地がある。


 レンデルロット。

 ただの侍女人形で、戦闘スキルは持たない。

 ただし、魔改造により、スペック的には中位の下に当たるフレームとコア出力があり、ただ暴れるだけでも、並の兵士程度のスペックは持っている。

 今の所、パーティの荷物運びの役割を考えている。


 こうして見ると、まだまだ伸ばせる所は多い。

 この辺りで金を稼ぎつつ、積み上げしていくだけでも、かなりのレベルアップが見込めると思う。

 でもなぁ、さっきの事も考えると、目立つのも同じ場所に居るのも危険か?

 王族だの公子だの言われるような連中に関わって、下手打って死刑とか勘弁過ぎる。

 しかも、まともな評価とかしてくれそうにないというか、WIN―WINの関係とか、どう考えても結べそうにないし。


「タイチ様、物々しい連中が、えらい勢いで近づいてきますわ」


 なんというか、あまりの余裕に、皆が半ばオートモードで雑魚の集団とか片付けてたのを、リンデルロットさんに抱かれつつ、ボーっと眺めてたのだが、リズリットさんが警告してきた。


 ふむ、スルーしてくれればいいが、面倒はいらんな。

 迷宮マスターのルーンを念じる。


「いんうぇぃう(透明化インヴィジブル)」


 姿を消した上で、レインさんに抱いて貰い、サポートナイツの二人を送還。

 人形三人組を、メイズ・シージのアイテムボックスへ隠す。

 これで、大人一人とガキ一人。

 端に寄っていれば、やり過ごせるだろう。

 暫くして、物々しいイカツイ格好の集団が、目の前を通り過ぎ掛けて足を止めた。


「おい、此処でも殺りあった跡があるな。

 どうやらオマケの方も、先に進んでるようだぜ」

「オマケの仕置はは豚野郎の気分の問題だから、出会ったらでいい。

 先ずは例の御大層な人形が目的だ。

 先だっては、無傷で取り押さえるなんぞと面倒な条件がついていたが、急に動いてりゃ多少の傷は構わんってな話になったからな。

 要は胴体と頭が無事ならってこった。

 しかも、あの豚野郎、よっぽど切羽詰まってるんだろうが、言い値で構わんときた。

 普通なら信用ならんが、お貴族様の圧力ってんなら、分の悪い話じゃねえ。

 早い者勝ちってことにならぁな!!」

「それじゃあ、おかしら、さっさと先に進みましょうぜ!!」

「「「おおう!!」」」


 うん、随分と説明くさいセリフを、喚き散らしていってくれたな。

 聞いた感じ、人形を無傷で捕まえるアテが外れて、公士様とやらに首筋に縄をかけられて必死ってとこか、あの商人め。

 それで、なんとか無傷云々の条件の譲歩をさせて、早速に腕利きを派遣したわけだな。

 そこに俺らに意趣返しの依頼を含めるとこ迄併せて、無駄に能力は高いんだな。

 未ださっきのアレから三時間は経ってないってのにな。 


「どうされます?」


 ちょっと興味が湧いた。

 見に行ってみるか。

 再召喚アンド取り出しで、パーティ再編。

 全体に透明化掛けて、前の連中を追いかけてみる事にした。

 まあ、これが後で考えると、やらかしたって訳だが。



「なんというか、強いですが大雑把ですわ」


 斥候スタイルのリズリットさん的には、美学的に許しがたい連中らしいが、確かに強い。

 此方に全く気付かないのはどうかと思うが、地下三階までノンストップ。

 途中に居た、人形連中も全て粉砕。

 回収できるパーツが全く無いとか、無駄な破壊力すぎる。

 そして俺達が初めて入った地下四階も、華麗にスルーして一気に地下五階へ。

 ここらへんは、グルメ旅にも力の入り方が違う連中の置き捨てた、高性能な人形なんかが彷徨っている為、地下三階よりも面倒さが増しているという噂だが。


 うん、拙いな。

 ちょっと、調子に乗ってしまったかもしれん。

 あんまりに前の連中が強くて、おまけにヒャッハーな雰囲気なのも手伝って、勢いと余裕かましすぎたか。

 なんか、嫌な雰囲気が漂っている。

 そして、強い魔力の気配。


「おかしらぁ、出やがりましたぜ!!」

「おめぇら、逃がすんじゃねえぞ。 話によると魔術も使うらしいがぁ、そう何度も撃てる程の魔力は持ってねぇはずだ!!」


 オッサンのダミ声に併せて見えた姿は、薄汚れてはいるものの、仕立ての良い侍女服に身を包んだ、清楚な人形。

 しかし、その姿は迷宮にあって不気味に過ぎる。

 そして、思った以上にインテリなセリフを吐く、蛮族風な連中のリーダーに感心しながらも、そう甘い状況じゃない事は察知できた。

 その身にまとう魔力の気配、コアの出力と、その容量の底の見えなさ。

 そして、謎の機構。

 現状にあって、俺とドッコイとは言わないが、半分近いくらいの魔力量を、持っていそうな気配を感じる。

 つまりは、この世界の職業魔法職の数人分。

 しかもそれは最大値ではなく、現状の数値としてだ。

 マックスはどれくらいか知らんし、どんな魔術を撃ってくるかも判らん。

 というか、なんで魔力を保持できてるんだ? という、俺の疑問は直ぐに晴れた。

 目の前の蛮族パーティの一人が、なんの気配も前触れもなく、いきなり倒れた。

 まるで糸が切れたように、そして二人目が続く。

 バタバタと三人目、四人目が倒れ、残り二人になった時、お頭と術士らしいのが、二人して仲間に背を向けて走りだして……倒れた。

 その光景は俺にして、よく見知っているモノだった。

 魔力奪取というよりは、恐らくはドレインスキル。


「あぅあ(やばぁ)」


 俺を抱いているレインさんが崩れ落ちる。


「いんえぅおぅお!!(リンデルロット!!)」


 呼びかけると共に、魔力注入のスキルを発動。

 俺を拾わせ、エリザベス・リズリットの二人をアイテムボックスに回収。

 ナイツの三人を緊急送還。

 レインさんを送還できるか確証無かったが、何とかなったらしい。

 そして、作業が終わった直後に再び魔力注入スキルを発動、リンデルロットに逃げ出させる。

 背後からは、ゆっくりとした足取りで、件の人形が近寄ってくる。

 もう透明化なんて解けてるし、あとは全力で逃げるしか無い。


 ん? ドレインスキルが止まった? と、安心仕掛けて、魔術が行使される気配で、身の毛がよだつ感覚を味わった。

 なんという馬鹿魔力、というか無駄魔術。

 とにかく処理能力を余り使わずに威力を上げる為に、少々効率悪かろうが、魔力の量で押し通すような代物が展開されていた。

 この世界の魔術というものは、人形関連のスキルでしか知らないが、一番近いのは、先程から何度か使っている魔力注入。

 恐らくは人形のコアに入れるか、任意の空間に押し込んで、暴発させるかってくらいの差なんだろうが、推定300近いような魔力で爆発とか、しかもこんな狭い通路な空間で……うわぁ、曲がり角とか間に合わねえ。

 迷宮マスターより、マジックシールド。

 ドラゴンズ・ハートより、フロストスパイクを選択。

 前者は軽減型防御、後者は設置型の氷属性魔法だが、実体が数秒間残る為に壁にできる。

 メイズ・シージの魔法でも良かったが、魔力注入で削れており、スタミナで発動できる此方を選んだ。

 あとは時間の戦い、フロストスパイクは発動まで、若干の時間がかかる。

 あちらとどちらが速いか。

 距離を空けつつ、魔術の構築。

 ジリジリする中、完成したと同時に視線を上げると、あちらの人形と目があった。

 即座に開放。

 迷宮の通路に氷山がそそり立ち壁となり、その向こう側を、風を巻く物理威力が傲然と叩いた。

 崩れ落ちる氷の破片の中、あちら側に立つ人形の姿が見えた。

 そして再び、魔力の収奪が再開されたのを感じる。

 しかし、積極的に追撃してくる気配はない。

 俺はこのまま離れ、安全圏で一度立てなおすべく、地下四階へ撤退することにした。

 なけなしの最後分の魔力を、レンデルロットさんに注入し、運んで貰う。


 何とか地下四階に辿り着き、食材連中の縄張りから外れた、貴族達のグルメパーティのキャンプ跡にて休息。

 しかし、まさかレンデルロットさんの、無駄出力の為の無駄容量が、魔力ドレインへの耐性になるとは……まあ、量が多いから、0になるまでの時間が長いってだけではあるが、少なくとも逃げ出す時の助けにはなった。

 本当に何が幸いするか判らない物だ。

 エリザベスさん、リズリットさんを取り出し。

 魔力が尽きる前に無理やり押し込んだので、問題はない筈だが。


「申し訳ありません……この身の不甲斐無さには、恥じ入るばかりですが」

「まあ、あれを人形という時点で、色々と駄目ですわよ。

 あれは、立派な兵器の類というんですのよ。

 同じにされては、かないませんわ」


 しゅんとするエリザベスさんとプンスカ怒るリズリットさん。

 確かにアレは、乳母とか護衛ってレベルじゃねーぞ。

 そういや上のボンクラが継承権十七位とかいってたか。

 つまりアレと同じのが最低でも、十六体は有ったりする訳だ。

 並べて進ませるだけで、千人規模の軍隊を無力化出来るんじゃないかね?


「あいあい」


 とりあえずは、無事で済んだことだし、メイドさん達の頭を、ポンポンと撫でておいた。


 おっと、思い出した。

 レインさん含め、ナイツの連中……ああも魔力奪取に弱いとは思わなかったな。

 魔力のパラを、持ってないから大丈夫ってんじゃなくて、無いから一撃なんだとは。

 同じ人間に見えても、違う理屈やルールで動いているって事か。

 まあ、最後の状況見たところじゃ、睡眠の状態異常に陥ってたような感じだったから、時間や気付けで回復するんだろうけど、ドレイン続いている最中だと、また眠るか……アレ相手には、戦力にはならんか。

 ま、今は問題なしってことで、再召喚してっと。


「……申し訳ありません」


 レインさんの深い声に込められた感情は重いものだったが、アレはしょうがないと思う。

 俺自身が、自分が便利に使ってたスキルと、同じ様な事をされるって頭が無かったからな。

 そりゃ、あれだけ有効なら、使おうって考える奴も居るわな。

 表立ってないからって、できる奴が居ないんじゃなく、持ってるけど隠してるってのに、頭が回らなかった俺のチョンボだ。

 少なくとも、俺と同じ様な特典を得た奴なら使えるんだし、ここの世界の技術でも出来てるみたいだし、魔力奪取の対抗策は、今後の事を考えれば必要なんだろうな。

 ま、今はナイツの皆も、ポンポンと頭を撫でておこう。

 一寸考えこんでる間に、サポート二人が、凄まじい勢いで落ち込んでいるから。


「ごめんなさい、何も出来ませんでした」


 ディスティニーちゃん、ただでさえ白い肌から血の気が失せて、俯いたまま震えている。


「私も何も出来ませんでした。 ごめんなさい」


 テンデルステンちゃんも、俯いたまま、杖を持つ手が真っ白になるほど握りしめて、声が震えている。

 とりあえず、今回の事は今回の事として、先に役立って貰えば良いさと締めておいた。

 ただ、何かしらの罰が云々とゴネてたので、それじゃあいつか、ケモ耳尻尾でゴロニャ~ンとかしてくれればいいぞとか、チラッといったら、なんか凄い勢いで頷いてたのは、冗談と判ってくれてるんだろうな?


 とか何とかしながら体勢を立て直し、地上へと帰った。

 地上へ戻ると、未だ日は高かったが、周囲を見渡すと憂鬱になった。


 まず役人が居る、商人が舌打ちしながら俺らの無事を確認している。

 ボンクラの公子、もといボンクラン公子が目をを覚ましていて、此方を凄い形相で睨んでやがる。

 そして、食材買取の事務所のおっちゃんが、俺らが何も持ち帰ってないのを知って、肩を落としている。

 そして何故か、さっき見た人形とよく似たのが、ボンクラ公子とよく似たキンキラガールを連れて立っていた。

 そして、キンキラガールは、こう宣言した。


「私は、とんでもない間違いを、していたようね。

 この迷宮は、滅ぶわ!!」

「あ、あうわうぁー!!(な、なんだってー!)」


 リアクションが俺一人だった……ちょっと寂しかった。



  6098/9680


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ