ザリガニ食ったら伸びた(うまいぞー的語尾)
おはよう。
朝起きてから、リズリットさんの目付きが潤んだまんまなのが、ちょっと怖い。
それはさておき、当面の目標を決めようと思う。
昨日も漠然と考えていたことだが、やはり第一義は、時間を稼ぐというか、俺が育つまで無事で過ごす事。
これについては、何もせずに大人しく日々を過ごしていく事も、可能ではある。
ただし、第二義的な目的としての、エリザベスさんの補修改修、出来ればリズリットさんも併せた戦力増強……昨日の飯屋での話やらを聞くに、降り掛かってきそうな厄介事の種は尽きないようで、こちらの必要性は高いといえる。
だが、これにはメイデン・コンセプトのスキル強化と、材料を手に入れる為の資金稼ぎが必要。
魔導人形の場合、レベルが上がって強くなるっていう部分が少ない。
経験は効率を上げるが、地力はあくまでもボディの性能次第という訳だ。
今でも戦闘用だけあって、高性能ではあるのだけど、まだ上はあるし、そもそも現状のレベルのパーツにすら、俺のスキルが届いていない。
だから、スキルを上げつつ、俺の戦闘力も上げつつ、資金も稼ぐ為に、マージンを取って迷宮に潜る。
結局昨日と同じく、そこに落ち着くわけだ。
という事で、油断しなけりゃ大丈夫だろう地下一階を、レインさんの腕鳴らしに暫くうろついて、階段を見つけ地下二階へ。
なんというか、地下二階は迷宮然とした地下一階に反して、完全なフィールドエリアだった。
例えるならば『ダーク・牧歌的』とでも言おうか、薄暗いフロアに木々や草花、動物が散見している。
川すら流れている地形には、メートルサイズの鶏や、サイの如く装甲付きの牛とかが、草を食んでいたりするのだが……。
「あううぉ(なるほど)あぅああぅいあ(この辺りのが)あうあぃあうぁ(食材なんだな)」
探索者連中が、数人がかりでギャレット(絞首紐)を使って、鶏を締めようと奮闘していたり、牛を相手に、ぶん殴ったり、ふっ飛ばされたりしている。
このパーティ数を見るに、やはり儲けになるのは食材系の相手なのか。
地下一階が過疎ってるのは、皆がスルーするだけの理由があるんだな。
それじゃあ俺達も、何か狩ってみますか。
と、目についたのは、川岸からノソリと顔を出した、でっかいザリガニ。
メートル近い全長に比して、十分な大きさを持つハサミの力は立派な武器だろう。
そして重厚な殻に覆われた体、長い触覚を振り、ハサミを大きく広げて威嚇して来る様は、近寄ることを躊躇わせる。
だが、此方も負けては居ない。
ドラゴンズ・ハート由来の術士系職業には、通常攻撃として、属性を乗せられる魔力弾があるのだ。
「あうぁあぅぉ(火属性・付加)」
そして、レインさんに盾と武器で音を出し、ザリガニの注意を引いて貰いつつ、エリザベスさんとリズリットさんに壁を作って貰いながら、ザリガニの背後から魔力弾連続発射。
火属性が乗っていると、敵は稀に延焼を起こす。
外殻が乾いてきた為か、途端に炎に巻かれるザリガニが水に戻ろうとするが、少し進んだ所で酸欠を起こしたのか尾を丸めて痙攣しだし……周囲に広がる、何やら美味しそうな香り。
ザリガニが動かなくなった所へ、数発追加で叩きこみ、レインさんが剣先で反応を確認してから近寄る。
うん、ハサミから香ばしくも、凄くジューシーで甘そうなカニっぽい香りがする。
レインさんが、ハサミを根本から捻り千切ると、更に周囲に充満する。
ひゃあ、もう我慢できねぇ、食うね。
調理状態になっちゃった以上、持って帰るのも何だし、領主が食狂いになるという程の味を、試してやろうではないか。
「うぇい(うめぇ)」
束になった繊維のプリプリ感が堪らねえ。
乳幼児がハサミ肉貪って何が悪い。
むう、エビミソはないのかミソは!!
うん、ちょっと我を忘れていたようだ。
我に返るとアナウンスが流れてきた。
――迷宮のモンスターを倒し、その場で食す。
特典の開放条件が達成されました。
作品名「迷宮マスター」のスキル体系が開放されました。
ライフ・マナの数値が追加されました。
初めて解除条件に納得した気がするな。
まあ、ドラゴンのステーキとか丸虫の肉とか食うのが条件だと、難易度が段違いに上がるが。
気を取り直して、少し離れた所で見かけたザリガニを目標にする。
今度は、調理状態に為らないようにしなくては。
考えた結果、リーチマインドでザリガニを昏倒させ、神経節をナイフで切断して締める事にした。
そして、氷属性を乗せた魔力弾を数発叩きこんでから、アイテムボックスへ。
それを、ザリガニを探しつつ三度繰り返し、ザリガニ丸ごとを三尾持って迷宮を出た。
食材系の買取は、迷宮脇の領主直轄の施設で行うらしい。
ブツのレアさと状態で値段が決まるようだが。
「これは素晴らしい!! まるで生きているようだ!!
一体どのような魔術を使えば……」
年配の男性が、食材の審査をしていたのだが、ザリガニ丸ごとの活き締めを見て、何やら自分の世界へと閉じこもってしまった。
それを見た、もう一人の若い審査官が、苦笑しながら「たしかに素晴らしい状態です」と、色を付けた買取料金を示してくれた。
地下一階のショボイ小銭とは、比べ物にならない値段に一寸吹いたのは内緒だ。
ざっと一尾辺り、40000c、三尾で前世価値の約120万円相当とか。
まあ、パズルでも頑張れば稼げないことはない金額だが、時間辺りの効率は遥かに高いな。
これだけあれば、魔導人形関連の店を覗いても、面白いかもしれん。
パーツの交換とかは難しくても、俺より優秀なスキル持ちに、メンテして貰ったりが可能かもしれないし。
ここで、余り触れてなかった、メイドさん達の事に触れてみよう。
実は一寸前に聞いてみたことがあるのだが。
魔導人形って一般的なのかって感じで。
「基本的に、人と見紛うレベルの人形は、100,000c辺りからの値が付きます」
ほう、前世価値にして百万ちょいで、言うこと聞いてくれる美人の人間じゃない女の子が手に入るだと!!
「無論、そんな安物は、戦闘に耐えるモノではありませんわ」
いや、普通はメイドに戦闘能力なんて物を、折込みでは買わないと思うけど。
「契約者が充分な魔力を持つ者であれば、躯体が特に破損等しない限りは、その他の費用は軽いものですが」
衣服やら、嗜好品レベルの飲食くらいか。
人を雇ったり、囲ったりするよりは軽いわな。
これだけ聞くと、なんかこの世界が、素晴らしいような気がして来るんだが。
「その費用を賄えるだけの身代を持つ者は、十分に選ばれた者といえるでしょう」
ですよね~。
この前世価値百万円に、手が届かない層が凄まじく多い辺りが、この世界の難易度高いとこだろうな。
ほんとに子沢山のその日暮らし多すぎだろ。
「それに、せっかく手に入れても、実は私のような暗殺者や間諜に早変わり、なんて言う事もありますのよ」
うわ、せちがれえ。
しかも、早変わりというネタも、割と頻繁に起こりうるらしい(成り上がり狙いの組織とか多いんだと。 元そういう組織の人が言うと説得力高くて嫌になるなぁ)のが、更に倍率ドンで泣けてくる。
「ですから人形の格や値は、機能やグレード等よりも、職人やブランドの信用に拠って、差が出る事が多いようです」
なるほどね。
「ただ以前、王家から流れた、教育と経験を蓄積した人形に、数千万cの値がついた事がありますので、一概には言えませんが」
前世価値で億か……凄いプレミアだな。
それでも、宝くじ当たったら買えそうで怖いが。
「とは言っても、普通の侍女人形なんて、信用込みでも三十万c迄ですわ。
それを超えるとなると、躯体のフレームからして常用とは違う代物になりますわね。
つまり、護衛や色々を想定して作られているという事ですのよ」
ああ、戦闘用か。
「因みに私は、信用別の躯体の製造に、七十五万cという値が掛かっています」
「私は、潜入や隠密の関連上、余り突飛な素材を使えなかったので、五十五万cということでしたわ。
でも、これは正面戦闘を行うかどうかの仕様の差であって、機能や経験の差ではないんですからね!!」
喧嘩すんな。
まあ、聞いた感じだと、エリザベスさんは強度に主眼をおいて作られた、大馬力の海外製実用車。
リズリットさんは、コンパクトに機能をまとめた高級国産車って感じなんだかねー。
って言うような話だったのだが、つまり、ザリガニが三尾でメイドさんが買えてしまうという現実。
そして、戦闘用と言われている二人でも、一週間頑張ったら買えてしまうという……。
そりゃ犯罪組織なら、ひょいひょい破棄しちゃうよな。
というような事を考えてると、なんか二人が無性に可哀想になって来た。
うん、俺は捨てたりなんかしないかんな!!
でも、追加で買っちゃったりはするかもしれん、其処は許して欲しい。
名前:ジャン・ポール・タイチ
所持金:133832
召喚用ポイント:0(ドラゴンズ・ハート サポートナイツ召喚用)
所持ポイント:126853
(迷宮マスター)
戦士レベル0
忍者レベル0
僧侶レベル1
魔術師レベル1
ライフ=12
マナ =32
(ドラゴンズ・ハート)
総合レベル:2
HP :432
スタミナ :560
物理攻撃力:62
物理防御力:63
魔法攻撃力:84
魔法防御力:83
(ソーサリー)
ビショップ レベル3
HP=14
属性:悪
AC=9
力(STRENGTH) :8
知恵(INTELLIGENCE) :14
信仰心(PIETY) :13
生命力(VITALITY) :13
素早さ(AGILITY) :10
運(LUCK) :9
3/0/0/0/0/0/0 0/0/0/0/0/0/0
(メイズ・シージ)
総合レベル4
強靭 4+4 ライフへ x20
敏捷 4+4 ライフへ x15 マナへ x5
知力 4+21 マナへ x20
ライフ 280/160+120=280
マナ 540/500+40=540
(メイデン・コンセプト)
術士レベル3
魔力:15/15
体力:30/30
疲労:15%/100%
-----------------------------
スキル:基本
無限財布
両替
スキル:パズルゲー
脳内遊戯
ポイント変換
スキル:(迷宮マスター)
魔術
薬品作成
投擲
スキル:(ドラゴンズ・ハート)
召喚用ポイント変換
以下、ジョブレベルごとにスキル及びアビリティが開放されます。
戦士レベル:0
闘士レベル:0
斥候レベル:0
弓兵レベル:0
術士レベル:1 ジョブレベル1で使用可能な呪文使用。 通常攻撃では魔力弾を放ちます。
導師レベル:0
影兵レベル:0
術騎士レベル:0
魔弓兵レベル:0
スキル:(ソーサリー)
ディスペル:(レベル依存)
鑑定 :(レベル依存)
魔術師呪文:1レベル
僧侶呪文 :0レベル
スキル:(メイズ・シージ)
近接攻撃:1(0) 強靭度へ レベルx3 敏捷度へ レベルx1
遠隔攻撃:1(0) 敏捷度へ レベルx3 強靭度へ レベルx1
戦闘魔術:4(75) 知性へ レベルx3
自然魔術:3(70) 知性へ レベルx3
スキル:(メイデン・コンセプト)
機械補修(3) 魔力2ポイント レベル分のダメージを若干回復させる。
魔力注入(3) 魔力3ポイント レベル分の魔力を注入する。
錬金技術(1) 魔力5ポイント 難易度レベルの素材部品の改造交換が可能。
装備:短杖 近接攻撃力3(+62) 魔法攻撃力30(+84)(スキル消費魔力減少1)
:布の服 防御力1(+63) 魔法防御力0(+83)(AC-1)
6823/9680




