相思相愛
キチガイ注意
自分で言うのはどこか恥ずかしいことだが、僕は行動派だ。考えたことはすぐに行動に移す。自分の考えに自信を持っているから、臆することもない。
幼い頃鬼ごっこをしていて友達がガラスに突っ込んでしまい怪我をした時も、動かない周りの連中をよそに僕だけが先生の所へ走った。
中学生の頃サッカー部に所属していて、その最後の試合の時だって僕の咄嗟の判断で点を取り、勝利することができた。
あの頃は生徒会にも所属していた。僕は書記をしていたが、客観的に見ても生徒会長よりも僕の方が活躍していた。
高校時代、学園祭前日にクラスの出し物が壊れてしまったときだって、僕の素早い対応で無事出店することができた。
大学時代だって、この頭脳と行動力を存分に活用してきた。
だから、今回だって間違った行動はしていない。
僕は、今付き合っている彼女にそろそろ一緒に住まないかと提案した。僕はもうある程度の収入を得れる仕事に就いた。彼女を養っていける経済力は存分にある。
なのに何故彼女はそれを断ったのだろう。彼女は、あなたの家で一緒に住むことはできないと言った。何度繰り返しても、彼女もまた同じ答えを繰り返すだけだった。
僕には初め、その理由が分からなかった。だけど、もう理解した。
あなたの家で、一緒に住むことはできないと言った。おそらく、彼女には今住んでいる家があるから、僕の家では住めないということだろう。
それが分かったから、すぐに僕はどうすれば一緒に住めるか考えを巡らせた。そしてすぐに思いついた。だから僕は今実行に移した。
目の前にあるは、彼女の家。赤く輝く、彼女の家。これで僕は彼女と一緒に住める。喜びのあまり僕は両手に抱えていた火炎放射機をその場に落としていた。
慌てて拾い上げる。こうしてはいられないんだ。彼女の家を燃やすことは成功したから、次は家に彼女を受け入れる準備をしなければ。
冬の空気を炎の熱が侵していった。その暖かさに少し浸ってから、僕は帰路に着いた。
あと少しで家に着くというとき、彼女にあった。やっと彼女と一緒に住めるのだし、報告をしておこうと思って声をかけた。
「明日から僕達、一緒に住めるよ!」
彼女も心の底から嬉しそうな顔をして頷いた。
「それじゃあ僕、準備し終わったら迎えに行くから君は君の家で待っていてくれ」
彼女の家はもう無いのだが、準備をし終わるまでここにいてもらう訳にもいかない。それに、彼女の家がどうなったのかも見せておいた方がいいだろう。
彼女は再び笑顔で頷いて、走り出した。ところで彼女は、何故車で来なかったのだろう。まあこの際どうでもいいことか。
そして僕は自分の家へ戻った。
「くそ、何ということだ! 悲しいけど、嬉しいぞ!」
僕の家は、見事に焼き払われていた。使った後捨てたのか、僕のものと似たような火炎放射気が転がっていた。
彼女は、僕の家を焼き払ったのだ。おそらく、僕と一緒に住むためだろう。
彼女は何度も、あなたの家で一緒に住むことはできないといった。それでも僕がしつこく僕の家で一緒に住もうというものだから、彼女の家で住まざるを得ない状況を作ろうとしたのだろう。
僕と彼女は全く同じことを考え、全く同じ行動をしていたのだ。これほど嬉しいことが他にあろうか。僕は早速彼女にこの喜びを伝えるため、車に乗り込んだ。
どうでもいいことだが、冬の日は乾燥するから物が燃えやすいのだなと僕は思った。
ネタが浮かばない時ふと浮かんできたバカみたいなネタ。
うん、くだらなかった。
最後までお読みいただきありがとうございました。