第1話 サキュバス魔王
ザザザ〜!っと。砂浜に漂流し倒れているのは、この世界の最良の魔術師であり。地球からの転移者、有馬翡翠。
そして、その隣に眠る。赤髪サキュバス美少女魔王。カレン・カルディナールロート
そんな2人は今、美しい孤島の浜辺で遭難していた。
「つっ……ここはどこ?」
まず最初に起きたのは、ヒスイだった。海水のせいで傷んだ黒髪、筋肉質で痩せ細った顔は上の中程度の青年。
「……たしか僕は。勇者パーティーの仲間達を逃がす為に、魔王の足止めをしていたんだった。て?! 魔王カレン・カルディナールロート?! なんでこんな所に魔王が?」
眠るカレン・カルディナールロートの顔を見つめるヒスイは……
「……やっぱり。可愛い顔してるなあ。本当に可愛い過ぎる」
サキュバス魔王の可愛い顔に見惚れていた。
「でも、こんな可愛い女の子のせいで世界は危なかったんだよな。……いや、実際はこの娘も被害者だったわけだけど」
ヒスイは数日前の魔王城での最終決戦の事を思い出していた。
◇◇◇
《数日前 崩壊する魔王城》
「よもや。お前が、この世界を壊そうと私を操っていたとは思わなかったぞ。魔王軍総帥ギルナンド」
「あしゃしゃ! 気づくのが遅かったですな。魔王様。アンタはもうじき、この崩れ行く魔王城と共に最後を迎えるというのに」
「……なんだか分からないけど。最後の最後で仲間割れとはね。勇者アイ! ここは僕に任せて皆と一緒に外に脱出するんだ!」
「そんなの駄目だ。ヒスイちゃん!」「ヒスイ君! やだよ!」「お前も一緒に逃げるだよ。ヒスイ」
ヒスイの言葉に困惑する勇者パーティー、その全員がヒスイの事を心配そうに見つめている。
「いいから早く行くんだ。女の子達よりも先に男の僕が逃げるわけには行かないんだから!」
「ヒ、ヒスイちゃん。絶対に助けに来るからね」
「ヒスイ君……ごめんなさい」
「なんでだよ。ヒスイ。私が脳筋の女の子だからなのかよ! ちゃんと生きて戻って来るんだそ!」
勇者パーティー(全員絶世の美少女)一行が、ヒスイに言われ、外へと脱出していく。
「くっ! 身体が勝手に!……いかせぬ」
「そうだ。貴様は勝手に勇者パーティーと共倒れになれ。カレン・カルディナールロート。その間に、私はここを脱出し。新たな魔王城へと向かうのでな。ハハハ!!」
「ま、待て……裏切り者! 私の洗脳を解け。ギルナンド!!」
魔王側も裏切り者であるギルナンドが、秘密の通路から外へと脱出する。
「君を止めるさせてもらうよ。魔王」
「ぐっ!……最良の魔術師。有馬翡翠!!」
魔王が叫び声を上げた時だった。魔王城に伝わる古の魔法陣が突然発動し。魔法陣内に居たヒスイとカレンを遠い場所へと、強制転移させた。
◇◇◇
「それで、着いたのが南国の島かな? 世界のどこら辺何だろう。ここは?」
辺りを見渡すヒスイ。しかし、辺りを見渡した所で、見えるものは水平線の青い海と浜辺。後ろは緑豊かな自然が広がっているだけだった。
「とんでもない場所に来たのいうまでもないや。僕の隣には今、勇者の……アイの宿敵。サキュバス魔王カレン・カルディナールロートが寝てるけど……ここで倒しても後味悪いんだよね」
ヒスイは、もう一度カレンの顔を見つめる。
サキュバスの魅力する体質とカレン本来の美貌を見て、再び見惚れてしまう。ヒスイ。
「……可愛いな。地球に居た時にこんな可愛い女の子と付き合いたかったな〜!」
「…………ぅん………ここは? どこ?」
「お、起きた? この子は勇者の……アイの宿敵で……でも今は、助けてあげないといけない女の子」
「貴方は……たしか勇者パーティーの魔術師さん?」
「怪我はないかな? 魔王さん」
カレンは、自身の頭を抱えながら。ヒスイにそう告げた。
ヒスイが起きたばかりのカレンを観察してみると。青ざめた表情で貧血気味になっているのが良く分かる。
「えっと。………精力が不足してるわね」
「精力?」
「え、えぇ。……男の子の精力。私は魔族のサキュバスだもの。定期的に、男の子の精力を摂取しないと弱っていくの」
「……弱るとどうなるのかな?」
「だんだん衰弱して弱っていくわ。その後は、眠る様にして死ぬ。今は、その入り口という段階かしら」
「それって。結構ヤバい状況なんじゃ?」
「……そうね。……でも貴方は私の敵だもの。助けを求められないわ」
カレンはそう言い終えると。その場に倒れ込んでしまった。
「わああ! ちょっと! 大丈夫?」
「……ハァ…ハァ……仕方ないわ。私……ギルナンドにずっと操られていて。久しぶりに自分の意思で動いているもの。無意識ならともかく、自分の思考で考えているから……色々とムラムラして。考えちゃうもの」
「色々とムラムラって、何を?」
「……男の子とのイヤらしい事。それを考えると。私の中の精力が減っていっちゃうのよ」
状況は逼迫しているが。言葉の端々《はしはし》はツッコミ所満載で、どんな言葉を発すればいいか迷うヒスイ。
「と、とりあえず。苦しそうだし。吸う? 僕の精力」
「で、でも。貴方と私は敵同士なのよ? それでも良いの?」
「精力を摂取しないと死にそうな人が目の前にいるのに、救わないわけにはいかないよ。良いに決まってる」
「そう。なら頂くは」
「んぐぁ?!」
ヒスイが精力の提供を了承した瞬間だった。カレンはなんの躊躇いもなく。ヒスイの唇に接吻し、その下を侵入させ絡めさせる。
「ん!……んん!……ん!んん!」
「…………ん♡」
10秒……30秒……1分たってもヒスイとカレンのキスは続く。
……5分後。
「プハァ!! ちょっと! なんで舌を!」
「……凄い濃厚な精力。凄いわ。流石、世界で一番最良の魔術師。有馬ヒスイね。ありがとう」
「……う、うん」
太陽に輝く美しい笑顔だった。燃える様な綺麗な赤髪に、黄金の美しい瞳の愛らしく無邪気なカレンの微笑みにヒスイは魅了された。
ドクンッ!と心臓は高鳴り。種族が、サキュバスという理由ではなく。
ただ純粋な気持ちでヒスイはカレンに惹かれてしまった。
「……これからも。困ったら僕の精力を摂取していいからね。魔王さん」
「カレンでいいわよ。私もヒスイって呼ぶもの」
「そ、そう。カレン……さん」
「さんは、いらないけど。ヒスイがそう呼びたいなら良いわ。私を助けてくれてありがとう。ヒスイ!」
再び赤髪のサキュバス美少女は、ヒスイに愛らしい笑顔を向けた。
そして、惚けたヒスイはまだ気づけていなかった。この赤髪サキュバス美少女と。この孤立した南国の孤島で、南国スローライフ生活を行っていく事を……




