第6話 女神の冬ボーナス
木枯らしが吹き荒れる12月。
世間はクリスマスムードだが、俺の懐は氷河期を迎えていた。
ここ最近の連敗……。いわゆる〈タコマケ〉が響き、給料日まで極貧生活を余儀なくされている。
まどかが来ない日のごはんは、半額の食材でまとめて作るように心がけている。
暖房もなるべく使わずに、厚着でやり過ごす。
お互い仕事が忙しく、2週間ほど会っていない。
(まどかの手料理が恋しい……)
後悔しても、お金は返ってこない。
溶かした金があれば、ちょっとお高い焼肉を数回は食べに行けたはずだ。
(ピンポーン)
家で、寒さに耐えながら、テレビを見ているとインターホンが鳴り響いた。
「啓司くん! お疲れ様! うー、寒い寒い!」
ドアの向こうには、白い息を吐きながらも、やけに上機嫌なまどかが立っていた。
その顔は内側から発光しているかのように輝いている。
俺は知っている。これは、パチンコで〈大勝利〉を収めた時の顔だ。
「ふふん、実はね……じゃーん! ちょっと早めのクリスマスプレゼント!」
彼女が差し出したのは、高級メーカーのロゴが入った箱。
中身は、最新式の〈ノイズキャンセリング機能付きワイヤレスイヤホン〉だった。
「これ、すごく高いやつじゃん! どうしたの急に?」
「うんとね! 会社で『冬のボーナス』が出たの! だから、日頃の感謝を込めて還元キャンペーンだよ!」
(冬のボーナス……)
俺は心の中で苦笑した。
そのボーナスは、会社からではなく、きっとパチンコ屋の景品交換所から支給されたものだろう。
年末の回収期に箱を積んでいるなんて、彼女のヒキは底知れない。
「啓司くん、ゲームする時とか良い音で聴きたいって言ってたでしょ? これなら没頭できるかなって!」
「ありがとう、まどか……! すごく嬉しいよ」
負けて金がない俺の元に、勝って金が余っている彼女から富が分配される。
皮肉だが、これもまた一つの〈収支の共有(ノリ打ち)〉なのかもしれない。
(……待てよ?)
俺はふと気づく。
この強力なノイキャン機能があれば、パチンコ屋の爆音の中でも、静寂の中で集中して打てるんじゃないか?
「これで、もっと趣味に集中できるね!」
まどかの笑顔が刺さる。
俺は、このイヤホンをしてホールに向かう未来を想像し、少しだけ罪悪感を覚えるのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
普段使うものは、ちょっと良いもの買うとQOLが上がる気がします。
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