第3話 タコマケな彼氏
梅雨明けが宣言され、日差しが強く、気温も30度を超える。
今日はまどかは仕事で、俺は休み。
そんな日は、涼むべく、パチンコ屋さんは向かう。
(あぁ、新台の『新緑の康次』……座れたは良いけど、全く当たらない……)
俺の目の前にある液晶は、虚しく数字を回し続けている。
既に、最新のゲーム機を買えるぐらいのお金を注ぎ込んでいる。
当たっては、単発スルー。当たっては、単発スルー。
これでは、勝てるわけがない。
(まずい、今月、まだ半分しか経ってないのに、これで5連敗……)
俺は、ヒリつくような辛い戦いを続けていた。
必死にプラス収支を維持してきた今年の成績が、今日負けたら、一気にマイナスへ転落してしまう。
(ここで、諦めるわけにはいかない!)
俺は、魂を込めてもう一度だけ、貸出ボタンを押した。
◇
1時間後……。
(やめだ、やめだ、帰ろう)
俺は、ムキになった結果、さらに負けを膨らませただけだった。
熱くなって勝てるほど、パチンコは甘くない。
そんなことは、痛いほど分かっているはずなのに……。
(もう、2度とやらない)
負けた日は、いつも本気でそう思う。
ただ、数日経つと、またあのハンドルを握っている自分が容易に想像できてしまう。
(さて……今日は、まどかのために、ご馳走を作るか……)
今日は仕事終わりに、まどかが遊びに来る。
俺は、勝った時は、質素に。負けた時ほど、美味しいものを食べるようにしている。
贅沢をして胃袋を満たし、強引に気持ちを切り替えるためだ。
俺は、まどかにメッセージを送った。
『今日は何食べる? 焼肉にするか?』
今の俺は、焼肉の気分だ。
何とも言えない喪失感を、霜降りの美味しい牛肉で埋めてやる。
『焼肉!! なんで?? 記念日でもないのに!』
『たまには、いいかなって!』
そんなわけで、俺は奮発して霜降り肉を買って、自宅で待つことにした。
◇
夜になり、まどかが自宅にやって来た。
「ただいまー!」
「お疲れ様! まどか!」
俺は玄関で、まどかとハグをした。
俺たちは、会って最初は、ハグをするアメリカンスタイルである。
「私も、野菜とかお肉とか買ってきたよ!」
「おぉー! ありがとう!」
まどかは、たくさんの野菜と、お値段控えめのお肉を買ってきてくれた。
しかし、どこか違和感を感じた。
焼肉にはあまり縁のない、野菜も含まれている。
お肉も、焼肉用の他に、カレーライスで使う細切れの肉も含まれている。
(この野菜の量……ひょっとして、明日カレーを作ってと言っている)
まどかは、カレーが大好きである。
一度作れば、2日間の食料は確保出来るので、何より経済的な料理である。
今の俺の財布事情には非常に助かる。
具材は、まどかが買ってくれ、明日明後日の食料も確保できる。
「カレーも明日作っておくね!」
「流石啓司! 私の意図を理解してくれたね!」
(作る理由が、『タコマケして金欠だから』なんて不純でごめんよ……)
ところで、まどかは負けたときは、どうやって切り替えるのか。
カレーの材料を買ってきたのは、負けたからなのだろうか…。
気になって仕方がない……。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
大敗した時は、何も考えられなくなりますよね。
そんな時は、ちょっと高いご飯や好きな食べ物を食べると、リフレッシュ出来る気がします。
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