目玉焼き大論争
世界は、ある日、二つに分かれた。
いや、もっと正確に言えば、「意見が分かれた結果、物理的に分裂した」のだ。
分裂の原因は、とても些細なことだった。
──「目玉焼きには、醤油か、ソースか」
この論争があまりにも長年続き、感情のしこりが地球のコアにまで到達した結果、地殻は真っ二つに割れた。
東側は醤油派。伝統と深みを重んじる、理知的な人々の世界。
西側はソース派。自由と個性を愛する、情熱的な人々の世界。
二つの世界はそれぞれ国を作り、法律を整備し、教育にまでその信念を叩き込んだ。
──そして、日々、互いのSNSに向かって、こう叫ぶのだ。
「目玉焼きにソースとか正気か! 卵の味を殺してるだけだろ!」
「醤油は無難なだけ! ソースこそが味の革命だ!」
争いはエスカレートし、経済制裁、情報戦、果ては「卵供給ルートの遮断」にまで発展した。
外交官同士の会談も、途中で「じゃあ目玉焼き出しますね」で破談する始末。
それぞれの世界にスパイを送り込んだり、白熱したソースや醤油の銃撃戦が起こったりした。
そんな中、ひとりの少年が立ち上がった。
彼の名はエイル。15歳。
「ぼ、僕は……! ケチャップ派なんだ!!」
──その瞬間、世界はもう一度割れた。
今、世界は三つに分かれている。
そして今日も、SNS上でこうして罵り合っている。
「ケチャップは子供の味覚!」
「ソースこそ至高!」
「醤油を理解できない舌の貧困!」
その横で、スクロールするコメント、《塩派の俺、静観》
そうして、もう一つの派閥が名乗りを上げようとしていた。
「卵が食えないやつは蚊帳の外かよ」




