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常念穂高は松本城を爆破する  作者: 楠本恵士
松本城近くの建物を爆破解体する
2/15

第二話・松本娘ロック知らずのガールズバンド結成

 数日後──安曇野 梓の家に、地方の日刊タイム誌の記者を名乗る女性が訪ねてきた。

「松本市長に送った高校生の要望がユニークなので、少しお話しを……」


 最初、梓はどうして自分の家に? と、思ったがすぐに、気づいた。

(穂高が市長に送った手紙の、差出人の宛先……オレの名前とオレの家の住所だ!)

 梓が何か言う前に、市民のタイムスの女性記者は勝手に話しを進めてきた。


「あたしも、最初は驚きました『旧博物館をさっさと爆破解体しろ!』という過激な要望には……一歩間違えれば逮捕に繋がりますから、でも内容をよく見たら観光客の不憫(ふびん)さを嘆いた要望だったのですね──確かに解体工事期間中は大名町側の土橋にある『国宝松本城』の、薄汚れた石碑の前で観光客が、スマホ撮影する楽しみが失われてしまうので……さっさと、解体しろという気持ちもわかりますが」


 解体後の旧私立博物館の敷地は、当面は砂利敷きの広場になって、イベントなどで利用されるらしい。

 女性記者は梓が、何も言わないので、さらに話しを進めた。


「あたしが興味を持ったのは、二枚目の要望ハガキです……明治維新に埋め立てられた城の南・西外堀の水堀復元を行っていますが、それに対しての要望もユニークで『堀に空いている通路スペースに、善光寺の門前通りみたいに連なる土産物屋を作れ!』とか『ガールズバンドが、路上パフォーマンスができるステージを作れ!』とか……実現可能かどうかは別にしてユニークな提案です」


 絶句する梓。

(二枚目の要望? 門前町の土産物通り化? ガールズバンド? 聞いてないぞ!)


 確かに縄手通りから、松本市内を流れる女鳥羽川を挟んだ通りの中町は、数年前はほとんど目立った飲食店はなく。

 観光客の姿はまばらな通りだった──それが、気がつくと飲食店が増えて観光客が訪れる、蔵のなまこ壁が名物の観光通りへと変貌を遂げた。

 梓は思った。

(南側の復元堀のスペースは、確かにアイデア次第で有効活用できるな……あとは、高砂通りをもう少し、サブカルチャー的な通りに変貌させたら……雛人形を売る店ばかりじゃ、面白みに欠ける)


 高砂通りとは、中町からさらに南にある通りで、松本の湧水群〈松本は市内の至る所から地下水が湧き出ていて、市民も生活用水に利用している……飲めない水だったら、ちゃんと『この水は飲めません』と注意書きがされている〉の一つ『源智〈玄智〉の井戸』がある通りだ。


 そして、女性記者はとんでもない質問を梓にしてきた。

「それで……夏までに学校でメンバーを集めて、ガールズロックバンドを結成する計画は本気ですか?」

(なにぃぃぃ?)

 梓は、女性記者の質問に絶句した。


  ◆◆◆◆◆◆


 翌日──梓は、自分の席で雑誌を読んでいる穂高に詰め寄った。

「なに、勝手なコトしているんだよ! 適当に誤魔化したけれど……ガールズバンド結成するコトになっちまったぞ!」

 音楽雑誌を読んでいる常念 穂高は、あっけらかんとした口調で言った。

「そりゃ、良かった」

「良かったじゃねえよ! どうするんだオレ、ロックなんて知らねぇぞ!」

「オレもだ、クィーンとかセックス・ピストルズとか、ニルヴァーナ程度しか知らん……フジロックも名前だけは知っているだけで、ロックマニアからは、首筋をつままれて宇宙に放り出されるレベルだ……聞くな」


 呆れる梓。

「それで、よくガールズロックバンドを結成するなんて言えたな」

「おもしれぇじゃねぇか……信州には〝りんご音楽祭〟ってのもあるからな……松本は楽都・学都・岳都なんだよ」

 穂高は、ガールズロックバンドメンバー募集が描かれた、手書きの募集用紙を梓に見せた。

「学校の許可はもらってある……これを校内にコピーして貼り出す」


「ガールズロックバンドの結成なんて……学校が認めてくれるのか?」

「心配するな、オレの親父は町の名士だ……文句を言ってきたら札束の力で、ねじ伏せる……蟻が先だ、梓二号」

「おまえなぁ……また意味不明なコトを」


 半ば強引に穂高の計画が進められ、吹奏楽部や軽音楽部から、数名の女子生徒が集められた。

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