第十九話・塩尻の髙ボッチ競馬を復活させる!
「梓、あたし高ボッチ競馬を、復活させたいんだけれど」
学校の昼休み──塩尻市民の平出 巴が、お騒がせ男の常念 穂高となんとなく行動を共にしている、安曇野 梓に話しかけてきた。
梓は学校を休んでいる穂高から差し入れされた、サラダ軍艦のみがギッシリ詰められた、パック詰め寿司を食べている。
巴が食堂内を見回して、穂高の姿が無いことを確認する。
「穂高が今日休んでいる理由は? 病気?」
「いや、なんでも気になるコトがあるとかで、市立図書館で調べ物をするって」
「何を調べているの?」
「オレも詳しくはわからないけれど……」
そう断ってから、梓は話しはじめた。
「なんでも、平成ウルトラマンシリーズの第一期二作目のウルトラマンの第46話に……」
松本市を舞台にロケをした穂高にとっては神回があって、縄手通りに怪獣や宇宙人が大集合した回があったらしい……。
「その回に、どんな怪獣や宇宙人が登場したのか気になって、穂高は図書館で調べている」
「そんなの、スマホでちょいちょいと検索すればいいのに」
「それが、できないのが常念 穂高なんだよな……で、終了した高ボッチ競馬を復活させたいって、高ボッチ音楽フェスじゃダメなのか?」
「ダメじゃないけれど……キツネの眷属市民としては、寂しいじゃない。標高1,600メートルの高ボッチで一周400メートルの競走だけれどさ」
高ボッチ競馬は七十年続き、諸事情で幕を閉じた。
梓が言った。
「今さら復活させたいって言ってもなぁ……第一馬が集まらないだろう」
「だから、学校の短距離走の女子生徒に声をかけて、協力してもらう」
「どうやって?」
「馬が集まらないのなら……短距離走の女子生徒に、馬の耳と尻尾を付けたコスプレさせて高ボッチ高原を走らせ……」
「却下! 巴の考えているコトはわかったから……それやったら、いろいろと問題が起こりそうだから。馬耳と尻尾は却下!」
「じゃあ、ゼッケンに競馬馬みたいな馬名を付けて走るってアイデアは……コレなら、女の子が普通に高原を走るだけだから問題ないでしょう」
「……どんな、馬名じゃなかった。ゼッケン名を、女の子に付けるんだ……競馬の馬名には、いろいろと規定があって〝カタカナ2文字以上9文字以内〟じゃないとダメだぞ」
「そうなんだ、梓に相談してみて良かった……一応、県内の名物をゼッケン名にするように考えてきた」
そう言って巴は、ゼッケン名を書いてきた紙を机の上に広げた。
「まずは、特産物で『シナノパープル』『ナガノゴールド』『シンシュウサーモン』」
「ちゃんと、9文字に収まっているな……他には?」
「南信から『ソースカツドン』『ローメン』忘れちゃならないソウルフードの『サンゾクヤキ』……伊那からは『イチダガキ』と、県民が愛する『サラダグンカン』」
パック詰めされた、サラダ軍艦を食べながら梓が言った。
「サラダ軍艦とか、市田柿はどうかな? 馬名の決まり事で商標登録されているモノとか商品名などはダメだから……危なそうなのは、外した方が無難だぞ……裁判にでもなったら困るだろう」
「そうか……ゼッケン名で応援されたら、宣伝にもなっちゃうのか……もう少し考えた、ゼッケン名を女の子に付けて高ボッチで走ってもらう……『オヤキ』と『トウジソバ』も加えなきゃ」
◆◆◆◆◆◆
数日後──巴が沈んだ表情で梓の所にやって来て言った。
「陸上の短距離女子に頼んでみたけれど、ダメだった。変なゼッケン付けて走りたくないって」
「だろうな……」
梓が大町のハサイダーを飲んでいると、穂高がやって来て言った。
「開催が幕を迎えて終了した、松本マラソンを復活させる、いいアイデアが浮かんだ……ランナーにコスプレさせて走らせる、馬の耳と尻尾を付けた女性ランナーが松本市内を走り抜けて……」
安曇野 梓は、すぐに反応した。
「却下!」




