第十八話・松本城から西に見えるナゾの富士山?
「梓! オレはやっぱり、現在の松本市長宛てに苦情のハガキを送るぞ!」
学食で炭酸の〝ハサイダー〟を飲んでいた安曇野 梓は、常念 穂高のいつもの発言に「ああ、そうですか」と、軽く返した。
「松本城の敷地内にあった、旧博物館の解体は終わって正面ルートも、広くなったよな」
「なった、観光客も普通に通れて城名が掘られた石碑も綺麗になって、観光客が記念撮影をしている」
「だったら、なにが不満なんだ? あまり、市長に苦情のハガキばかりオレの名前で送りつけていると、必殺技の『雅山水煌弾』の水の一撃でぶっ飛ばすぞ……は、冗談だけれど」
穂高が西側を指差して言った。
信州人は山の形で方角を認識している。
「旧博物館が解体されて、見通しが良くなったら……西側に富士山みたいな山が見えるようになった、松本城を挟んで有明山と対角線上ある山だ、何か計算して城を作ったような気がする」
「どんな計算?」
「有明富士と対角線上の西の富士山みたいな山で、城の守りを形成しているとか、京都も地形を利用して都を守るように設計されたというからな」
「それは、あり得るけれど」
「あの西の、てっぺんが富士山みたいな山……なんて名前だ? ずっと気になっている、松本市長に嘆願してあの山の案内図も西側に作ってもらう」
梓はしばらく考えてから答えた。
「位置から見て〝美ヶ原〟じゃないのか? 鉄塔が建っているし」
「そうか? 美ヶ原ってあんな位置にあったか?」
穂高がスマホで検索して、松本から西に見える山を調べる。
戸谷峰や二ッ石峰……さらには、見る場所によってもお尻の形に見える入山も候補に上がった。
「入山は違うな、あんな尻の形はしていない……二ッ峰に鉄塔は頂山にないな、一番確率が高いのは……やっぱり、戸谷峰と美ヶ原かな? でも、戸谷峰の山頂にも鉄塔らしきモノは見当たらないな?」
梓と穂高の会話を、それとなく聞いていた塩尻市民の平出 巴が、サラダ軍艦巻きだけが詰められた、プラスチックパックの寿司を食べながら言った。
「えーっ、美ヶ原……あんな形じゃないよ、牛の鼻先みたいな形しているよ、頭の方にホテルあって」
梓が大町の、動物キャラのヌイグルミで遊びながら言った。
「それは、塩尻から見える美ヶ原だろう……山は見る位置で、違って見えるからな有明山だって峰が見る位置で富士山みたいに見えるだけだから……穂高、松本の市長に要望出してもいいけれど、自分の名前で堂々とハガキ送れよ」
「そうか、あの西側の山の名前をしっかり、観光客に伝えるようなプレートを建てるように、市長に進言しよう……梓の名前で」
「人の話しを聞け!」
そして、松本城の旧博物館の跡地の目立つ場所に……西の山々の案内板が建てられたか、どうかは……城に映像が投影される、冬のイベントで穂高の気分がマックスになって、西の山のコトは忘れ去られてうやむやになった。
そして、松本市民のテンションが上がる松本恒例イベントが近づくと、穂高のテンションは狂ったように爆上がりになった。
「塩市だ、塩市だ、塩市だぁぁ! 松本ダルマの頬には、円形の毛が生えているぅぅ」
松本城から西に見えるナゾの富士山?~おわり~




