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常念穂高は松本城を爆破する  作者: 楠本恵士
やっぱり、松本城を爆破するパート2
16/20

第十六話・やっぱり、松本城を爆破する

 常念 穂高は、読み終わった『広報まつもと』を梓の前に置いて言った。

「松本市民なら、広報くらい読め……最近、表紙がAIイラストに変わった」

「いや、オレ……どちらかと言うと、安曇野寄りだから」

 梓が、そっと穂高に広報を押し返して、穂高は渋々受け取って言った。

「梓、やっぱりオレは、松本城を爆破するぞ!」


 学食で常念 穂高の過激な発言を聞いた、安曇野 梓の口から飲んでいた牛乳が勢い良く、穂高の顔面に向かって吹き出す。

「ぶはぁ……な、な、な」

 顔に牛乳を浴びた穂高は、持参していたタオルで顔を拭く。

「きったねぇな……美男子の顔に、牛乳飛ばすなよ」

 他の生徒は、チラッと穂高と梓を見ただけで、いつものコトだと知らん顔をしている。


 梓が机の上に飛び散った、高原牛乳を拭きながら言った。

「松本城の敷地内にあった、旧博物館の解体は終わったよな」

「終わった……なんか跡地はイベントに利用するらしい……ダイナマイトで爆破解体する場面が、一度もなくて残念だ」

「じゃあ、もういいじゃないか……何が不満なんだ」

「解体が終わったのに、相変わらず大名町通りから続く『土橋』からの城内公園ルートへ入る道が狭いのが気に食わない……あれじゃあ観光客が可哀想だ……松本市長に文句言ってやる」


 松本大好きな穂高は、いつも観光客側の視点に立って物事を考えている。


「何が『本来の登城ルートである東側の太鼓門』だ! あんな遠回りを観光客にさせるのが気に入らない……さっさと、松本城の城名が刻まれた石碑の入り口ルートを広く通れるようにしろ!」

「まあまあ、そんなに怒らなくても」

 穂高は何やらスマホの画面を見せて、梓に言った。

 そこには真っ赤な、巨大な提灯が写っていた。

「これ何かわかるか」

「東京浅草の雷門……かな?」

「そうだ、これをヒントに松本城の土橋側の入り口に、松本提灯がブラ下がる門を作って観光客に楽しんでもらう」

「…………はぁ?」


 梓は穂高の突拍子もない考えに、目が白抜き目になった。

 穂高は勝手に話しを進める。

「文化祭で入場ゲートを作る要領で門を作って、でっかい赤提灯(ちょうちん)を飾って松本の新名所にする」

「穂高……おまえなぁ」

 やっと口を開いた梓は、呆れた口調で言った。

「寺はどうするんだよ」

「寺?」

「あの名物提灯は、浅草寺の雷神風門の提灯だぞ……パクるにしても寺が必要だろう」


「ああ、それなら大丈夫だ……信州には超有名な寺があるじゃないか……門前町の」

「おい、まさか」

「そのまさかだ……善光寺の松本城支院の提灯にする、日曜大工で安物の小さな祠でも作って、隅っこに置いておけばいいだろう」

 さすがに、青ざめる梓。

「おまえ、今の発言で善光寺の坊主、敵に回したぞ!」

「そんなつもりはないが……さすがに城下町と門前町の紛争が勃発したら困るな……松本市の観光にも影響が出る、他の方法を考えよう……そうだ、提灯にスポンサー名を入れるってのはどうだ」

「だからぁ、提灯から離れろ」


 梓が頭を抱えにいる近くを、巫女のコスプレをした塩尻市民の平出 巴が普通に歩いてきて、キツネの形をしたカラシいなり寿司にかぶりついたのを見た梓は。

「そうか、ハロウィンの季節か……巴のヤツ、ハロウィンイベントが終るまで、キツネの耳と尻尾を付けた巫女さんのコスプレ続ける気か?」

 そう思った。


やっぱり、松本城を爆破する~おわり~

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