第十六話・やっぱり、松本城を爆破する
常念 穂高は、読み終わった『広報まつもと』を梓の前に置いて言った。
「松本市民なら、広報くらい読め……最近、表紙がAIイラストに変わった」
「いや、オレ……どちらかと言うと、安曇野寄りだから」
梓が、そっと穂高に広報を押し返して、穂高は渋々受け取って言った。
「梓、やっぱりオレは、松本城を爆破するぞ!」
学食で常念 穂高の過激な発言を聞いた、安曇野 梓の口から飲んでいた牛乳が勢い良く、穂高の顔面に向かって吹き出す。
「ぶはぁ……な、な、な」
顔に牛乳を浴びた穂高は、持参していたタオルで顔を拭く。
「きったねぇな……美男子の顔に、牛乳飛ばすなよ」
他の生徒は、チラッと穂高と梓を見ただけで、いつものコトだと知らん顔をしている。
梓が机の上に飛び散った、高原牛乳を拭きながら言った。
「松本城の敷地内にあった、旧博物館の解体は終わったよな」
「終わった……なんか跡地はイベントに利用するらしい……ダイナマイトで爆破解体する場面が、一度もなくて残念だ」
「じゃあ、もういいじゃないか……何が不満なんだ」
「解体が終わったのに、相変わらず大名町通りから続く『土橋』からの城内公園ルートへ入る道が狭いのが気に食わない……あれじゃあ観光客が可哀想だ……松本市長に文句言ってやる」
松本大好きな穂高は、いつも観光客側の視点に立って物事を考えている。
「何が『本来の登城ルートである東側の太鼓門』だ! あんな遠回りを観光客にさせるのが気に入らない……さっさと、松本城の城名が刻まれた石碑の入り口ルートを広く通れるようにしろ!」
「まあまあ、そんなに怒らなくても」
穂高は何やらスマホの画面を見せて、梓に言った。
そこには真っ赤な、巨大な提灯が写っていた。
「これ何かわかるか」
「東京浅草の雷門……かな?」
「そうだ、これをヒントに松本城の土橋側の入り口に、松本提灯がブラ下がる門を作って観光客に楽しんでもらう」
「…………はぁ?」
梓は穂高の突拍子もない考えに、目が白抜き目になった。
穂高は勝手に話しを進める。
「文化祭で入場ゲートを作る要領で門を作って、でっかい赤提灯を飾って松本の新名所にする」
「穂高……おまえなぁ」
やっと口を開いた梓は、呆れた口調で言った。
「寺はどうするんだよ」
「寺?」
「あの名物提灯は、浅草寺の雷神風門の提灯だぞ……パクるにしても寺が必要だろう」
「ああ、それなら大丈夫だ……信州には超有名な寺があるじゃないか……門前町の」
「おい、まさか」
「そのまさかだ……善光寺の松本城支院の提灯にする、日曜大工で安物の小さな祠でも作って、隅っこに置いておけばいいだろう」
さすがに、青ざめる梓。
「おまえ、今の発言で善光寺の坊主、敵に回したぞ!」
「そんなつもりはないが……さすがに城下町と門前町の紛争が勃発したら困るな……松本市の観光にも影響が出る、他の方法を考えよう……そうだ、提灯にスポンサー名を入れるってのはどうだ」
「だからぁ、提灯から離れろ」
梓が頭を抱えにいる近くを、巫女のコスプレをした塩尻市民の平出 巴が普通に歩いてきて、キツネの形をしたカラシいなり寿司にかぶりついたのを見た梓は。
「そうか、ハロウィンの季節か……巴のヤツ、ハロウィンイベントが終るまで、キツネの耳と尻尾を付けた巫女さんのコスプレ続ける気か?」
そう思った。
やっぱり、松本城を爆破する~おわり~




