95. バトルスタート!
「フェリシテ様は暫く見ない内に、お化粧が上手になられたのね。一瞬、どなたか分かりませんでしたわ」
棘を含んだ口調で真っ先に攻撃してきたのは、この中のリーダー格であるミレーヌ侯爵令嬢である。
彼女はヒューイットがエルヴィラの浮気のせいで冴えないフェリシテと結婚したと聞いて、自分にもチャンスがあるのではないかと張り切り出した熱烈なヒューイットファンの一人であった。
エルヴィラの美貌には勝てないが、フェリシテになら勝てる……!
ギラギラした目で熱い闘志を燃やす令嬢に囲まれたフェリシテは、これは確かに野獣だ、とヒューイットの気持ちが分かった気がした。
全員の令嬢のバックにメラメラ燃える炎の幻が見える。
火花の散るテーブルに着いた給仕達は、飛び火しない様、無表情で置物に徹しているあたりプロフェッショナルである。
本日のミッションは野獣(令嬢達)からヒューイット(ウサギ)を守る事だ。
いつもは研究に余念がない美味しい王宮料理は置いておいて、フェリシテと令嬢達との旦那様を賭けた熱いバトルの火蓋が切られたのだった。
「ええ、元の顔が地味でしたからお化粧が映えまして」
内心、フェリシテがカチンと来て怒り出すことを期待していた令嬢達は、皮肉を受け止めたフェリシテに動揺する。だがフェリシテはあっさりと受け流しただけでなく、予想外にもニッコリと魅惑的に笑って見せた。
「今回の化粧品はガブリエル様のご実家、シュルツ伯爵家が手掛ける化粧品ブランドを使用させていただいたのですよ。最高級の薔薇水や真珠の粉の白粉、東方の花の口紅。前日には外国から輸入したクレイパックとシュルツ家ご推薦の美容法を試してみましたの。すると、日焼けで荒れていたお肌が一晩で白くつるつる美肌に。それに、やはり最高級の真珠の白粉は違いますわね。お肌がしっとりときめ細やかに綺麗に見えますでしょう?」
「クレイパック?何ですのそれ⁈」
「真珠の白粉……!た、確かにきめ細かく見えますわ!」
「シュルツ家の花の口紅ですの?まあ、羨ましい!やはり獣脂で練った物は臭いが気になりますのよね」
パッとしなかったフェリシテが変身したものだから説得力が違う。
密かに、どうしてこんなに綺麗になったの⁈と動揺しまくっていたので、謎が解けて目の前が開けたような気分だった。
おまけにあの麗しいガブリエルの実家は高級化粧品を手掛けている事で有名だったため、フェリシテの様に変身できるの⁈と期待が膨れ上がったご令嬢達は一気にテンションが上がって化粧品の話に食い付いた。
「ご所望でしたら、ガブリエル様に取り次ぎますが如何しますか?そうそう、シュルツ家ではお肌に合うか不安な方の為に少量品もお取り扱いする様になりましたのよ。価格もお手頃で高級化粧品が手に入るチャンスですわ」
最近、高級なため購入者が固定されて化粧品の売り上げが伸び悩んでいたシュルツ家では、売り上げを伸ばすフェリシテのミョウバン水の携帯用のミニボトルを参考にしたいとガブリエルがわざわざ許可を取って来た。フェリシテの専売と言う訳でもなく、お客様の声を参考にしただけなので快く了承したのだが、外出先でも使えるし、若い令嬢のお小遣いでも購入出来ると、これがかなり評判がいいらしい。
「まあ、本当ですの⁈」
「ガブリエル様に取り次いで下さるの⁈」
これは予めガブリエルに確認して、売り上げになるならと取次ぎOKと返事を貰っている。
黄色い歓声が上がって雰囲気ががらりと変わり、化粧品で話を逸らす作戦が成功しかけたところで、「ちょ、ちょっと皆様!」とミレーヌ侯爵令嬢が慌てた様子で話に割り込んだ。
ご覧いただき有難うございます!
遅くなりましたが、ちょっとだけ昨日の続きになります。
半分投稿の理由は社畜の作者の都合でございます。申し訳ありませんでした。
次回はまたいつも通り金曜投稿させて頂きますので、よろしくお願い致します*




