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女中がお茶とお菓子を持ってきて、話が一時中断した後、オリバーが口を開く。
「話は変わりますが……ついにガイルとリュドミル領から来た流民の数が23人になりました。男性20人に女性3人、全員年齢は10代から30代までで、子供や老人はいません。あと、ひとり隣のミルドレット領からも流れて来た者がいます」
ん?とフェリシテは、デビットが当たり前の様に一緒に聞いているのに気付いて、動きを止めた。
ちらりとオリバーを見ると、気まずそうに頭に手をやって「すみません」と謝った。
「他の人達にバレない様に立ち回ってたつもりだったんですが、流民から話を聞くために裏通りへ入ったらデビットとバッタリ会ってしまって、話を一部始終聞かれてしまいまして……」
「オリバーがひったくりを裏路地に連れ込んでいくから、おかしいと思って後をつけたんだ。海の方からの流民は珍しいよね。隣のミルドレット領からは伝染病がらみでしょっちゅう来るけどさ」
デビットがグーズベリーフール(クリーム菓子)を食べながら言う。
「謝らなくて良いんですよ。本当は警ら隊長へ流民の内情を話して、ガイル領主へ引き渡さなければならないのを止めてもらってるんですから」
ハーベイの話を聞いて、ガイル領に送還したら危害を加えられそうなので、できれば送還しないでおきたい。
しかし、オリバーは表情を暗くして口ごもった。
「それがですね……」
言い難そうに言葉を切った後に、思い切った様子で顔を上げる。
「警ら隊内で、収容人数が多すぎるから、ついに出身領へ強制送還する話が出て来てしまったんですよ……」
えっ、と思ったが、確かに、そろそろ送還の話が出てもおかしくない人数だ。
「それとですね、ハーベイの言っていた魚の不漁の話を、他の流民からも聞き出す事ができました。やはりガイル領で漁師をしていた者が数人いて、話によると、去年の3月頃からガイル領とリュドミル領の境界あたりの沖合で、一か月程に渡って海が緑色に変色したそうです。その異変に続いて浜辺に大量の小石が打ち上がり、間もなく魚が海から消えたと言っていました。おかしいと思って海へ潜ったら、浅瀬の海藻類が白色に変わり、海底に無数の魚の死骸が見つかったと。魚はその小石を食べてしまっていたらしく、腹に小石が詰まっており、その重みで海底に沈んだ様子だったそうです」
「ーーーー海が緑色?と小石?」
「はい。リュドミル領の漁師の男の話ではまた少し違っていて、去年の春先に地震が起きて夜に沖に停泊していたらしい大型船が転覆し、荷物や船員が海に投げ出されたので、浜に住む住民が助けたと言っていました。船員は外国人で、言葉が通じなかったとか。一晩かけて救助したら、翌朝、どこかの貴族らしき人物がやって来て船員と荷物を急いで回収し、礼も言わず帰って行ったと。……そして、その後から浜辺の村で不審火と村人の行方不明が相次ぎ、住民が恐れて、次々逃げ出したそうです。街道を行くと誰かに捕まるらしく、荷物を棄てて海を潜ってガイル領へ渡り、やはりハーベイと同じく河川沿いを夜中に歩いてここまでたどり着いたと言っています。追っ手から逃げた時に一緒に逃げた家族とははぐれたそうで、流民のほとんどが数日にわたり飲まず食わずで衰弱しています」
フェリシテはオリバーの話を耳にして、頭を抱えたくなった。
ーーーー海水の変色、小石の発生、地震、と言うワードに心当たりがある。
昔読んだ文献に、同様の記述があって、それも確かガイル領とリュドミル領の沖合での記述だったはずだ。
「ーーーー海底火山噴火ですねーーーー」
フェリシテは呻くように呟き、流民の問題が今後こじれていきそうな予感に、めまいを覚えた。




