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37. 紫水晶

「穴が開く前、あそこの地面に透明な結晶があったんですよ。実はそれ、岩塩だと思ってまして。硫黄とよく併存して産出されるので……ところが岩塩じゃなくて、水晶の欠片だったみたいですね」


 シンクレアが言い、二人ともあまりに見事な光景に、驚きを通り越してポカーンとする。

 あっちにも紫水晶、こっちにも紫水晶。見渡す限りの紫水晶だ。

 しかも、結晶がやたら大きい。

 

「しかしこれ、こんなに巨大な晶洞ってあります?今まで聞いた事が無い、桁違いの大きさですよね?」


 "晶洞"という、球体で中が空洞になった岩を割ると、そこに水晶は生えている。

 卵に例えると、黄身や白身の代わりに水晶が岩の卵に詰まっている感じだ。

 よくある晶洞は手のひら大から抱えられる位で、そんなに大きい物じゃないのだが、今目の前にある晶洞の大きさと言ったら、前代未聞だ。

 一般的な大きさの晶洞は、せいぜいハツカネズミかバッタが入るくらいの隙間しかない。

 人間がふたり入ってなお余裕がある物など、世界広しと言えども、他に無いのではーー


「……アメジストって、貴族に人気の石ですよね?」


 フェリシテが恐る恐る口を開くと、シンクレアが「そりゃもう!」と太鼓判を押す。


「貴族だけでなく、王族も尊い色として重用してます。解毒作用があると言われて、まじないにも利用されてますね。王家の石とも、聖職者の石とも言われてます。これは大発見ですねえ」

「ーーーーあの、因みにアメジストの産出国ってーー」

「国内にはありません。国外だと、リビカ王国かゼダ共和国ですかね。質の落ちる鉱床はあるんですが、宝石にできるのはその二国でしか産出してませんよ」


 言いながら、シンクレアが足元の割れた岩盤のひとつを拾い上げる。

 スケッチブックほどの大きさのそれを光にあて、よく観察してから感嘆の声を上げた。

 びっしりと敷き詰められた、透き通って透明な青みがかった紫水晶の結晶一つ一つに光が反射する。

 ーーまるで銀河で星が瞬き、輝く様に神秘的である。


「これ、色と言い、大きさと言い、見るからに品質が良いですよね。ラザフォード領が、一晩で大金持ちです。良かったですね!」

「あ、ありがとうございます」


 お金持ちと言われても、ピンとこないなと思っていたフェリシテだったが、ウキウキと興奮したシンクレアが爆弾を落とす。


「確か、リビカ産の3mの高さのアメジストドーム(晶洞を半分に割った、ドーム状の物)で一億ディールなんですよね。この晶洞だと数百億かなあ。これひとつだけって事は無いので、晶洞が複数あれば、数千億ですね!いやあ、お宝発見しちゃいましたね……!」


 一番喜んでいるのはシンクレアである。

 フェリシテは、またも、ヒューイットに報告しなければならないらしい、とよろめいた。

 ーー頻繁に連絡しあう別居夫婦というのもなんだかな、と思うのだが。


 その後、晶洞から抜け出した二人は、近くの木に目印を付けて穴を木の枝や落ち葉で隠し、偽装してから山を降りた。

 だいぶ時間が経っていたらしく、すでに日が傾き始めており、無事屋敷に辿り着いた頃にはとっぷり日が暮れ、心配して待っていたウォルターにお小言を食らってしまったのだった。




 

 

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