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 「ーーーー博士⁈シンクレア博士‼」


 血相を変え、フェリシテが地面に開いた穴に駆けつける。

 気を付けながら穴のふちに手をつくと、パラパラと土埃が舞う中から「だ、大丈夫ですーー」と、気の抜ける様なシンクレアの声が返った。

 

 胸を撫で下ろして埃がおさまるのを待っていると、穴の中に差し込んだ光で、穴の中にいるシンクレアの姿が薄っすら見えて来た。

 穴はそう深くなく、3m位だろうか。

 底は残念ながら暗くて見えないが、立ち上がってこちらを見上げるシンクレアに怪我は無さそうだった。


「ーー幸い、土や落ち葉がクッションになったようで助かりました。ああ、ビックリしたあ」


 さすがのシンクレアも、ドキドキした様子で胸を押さえる。

 どうやら地下洞に落下したらしく、シンクレアの周囲にぽっかりと黒い空間が広がっていた。

 

「博士、ここからだと底が見えないのですが、上がって来れるような足場になる石などはありませんか?」


 まさか落下するとは。

 こんなことなら、ロープを持ってくるんだったと少々焦る。


「ちょっと待って下さいね。さっき、足の下で板状の岩盤が割れたみたいなんです。この岩盤を積んで足場にできるんじゃないかと思うんですが。えーと、……ん?……えっ、ええええーーーーーー⁈」

 

 突如、しゃがんだシンクレアが叫び、その声が洞内に反響してぐわんぐわんとエコーがかかる。

 

「どうしました⁈」


 緊張したフェリシテが身構えると「こ、これは……」と、シンクレアは魂が抜けた様な表情で手に持った石と交互に洞窟内を見回した後、感激した様子で呟いた。


「……アメジスト鉱床だーーーーーーーー‼」


 *


 ボッ、と洞窟内に火が灯る。

 あれからフェリシテはシンクレアと協力して、あちこちから岩を集め、よじ登って出られるくらいのステップを作ってから穴の内部に降りた。


 洞窟が崩落しないか心配だったが、脆くなっていたのはシンクレアが落下した部分だけだったらしく、大丈夫なのを確認できてから二人で穴底に落ちた枯れ葉を集め、小さな焚火を焚いた。


「……おお……‼」


 地面の下にこんな空間が隠されていたとは。

 わずか50㎝ばかりの厚みの岩盤が天井で、その下には高さ3m、横3mほどの洞窟になっている。

 長さは、焚火程度の光では見通せない闇が阻んで分からないが、かなり奥がありそうに見うけられる。


 シンクレアは土と一緒に落ちたので怪我をしなかったが、洞窟の内部には上も下も横にもビッシリと小さな突起状のアメジストの結晶が生え、焚火の炎に照らされて、キラキラと星の様に瞬きながら煌めいていた。





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