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 ーー夏至祭と収穫祭と新年祭がいっぺんに来た様だーー


 フェリシテがギルドから戻った午後。荷物をぎゅうぎゅうに積んだ荷馬車が四台、素晴らしく速いことに午後一時を過ぎた時点で屋敷に到着した。

 

 張り切って荷物を運び込む十二人の商人達が応接室いっぱいに品物を広げると、集まった使用人達は唖然として、山盛りの光景を眺めるだけになっていた。


「皆さん、掃除は終わりましたか?」


 フェリシテが尋ねると、揃って「はい!」と言う返事が返ってくる。


「では、ベッドのマットレスから、枕、シーツ、着古した服まで一式新しい物に交換します。協力して玄関ホールへ運び出してください。その後、支給品を渡しますので、サイズを確認して受け取って下さい」


 古いシーツは雑巾に。使えないものは、この際処分だ。

 大騒動を経て、新品で一掃された使用人たちの部屋は見違えるように明るくなった。

 冒頭のセリフは、この騒ぎをしてウォルターが評したつぶやきである。


 カーテンは三色の布から好きな色を選んでもらい、女性たちでカーテンに仕立てる。

 仕立て代がわりに、余った布をあげることにすると、三人の女性たちは大喜びでクッションカバーや巾着袋、テーブルクロスを作ると張り切っていた。


「ーーいいのかい、奥様」


 馬番のベンジャミンから、十年越しの毛布を取り上げようと騒ぐ使用人達の様子を見守っていたフェリシテの隣にウォルターが立つ。

 「このけば立った肌触りが癖になるんだよおおお……!」と抵抗するベンジャミンと「ばっちいから、交換しなさい!」とベンジャミンの抱きつく毛布を引っ張る女性陣が良い勝負だ。

 「オランド、あなた、洗濯しない下着をため込んでたわね⁈」「ご、ごめんって……!」

 「この枕、なんと今流行りの肩の凝らない枕なんですよ!こちらは人をダメにする羽毛布団!ふわっふわのアヒルの胸毛に包まれてみませんか?今なら、大サービス価格!二枚で一万ディール!おまけで抱き枕をプレゼント!」

 商売人魂の炸裂した呼び込みも何故か始まり、あちこちで繰り広げられるやり取りで、屋敷内はカオス状態だ。


「支給品を丸ごと交換なんて前代未聞だ。随分とかかったんじゃないのかい?」


 申し訳なさそうにするウォルターに、フェリシテは目を見開いた。


「気に入りませんでしたか?新しいマットレスがふかふかだと、子供みたいに飛び乗っていた様でしたがーー」

「見てたのか?人が悪いな」


 笑いを含んで言ったのに気付き、ウォルターがくしゃっと相好を崩す。

 マットレスに飛び乗ったのは何もウォルターだけではない。

 へたりきったマットレスは腰にも悪いし、かえって身体を疲れさせる。

 これでウォルターの腰痛もいくらか楽になるなら、安い出費ではないだろうか。


「私のお財布事情なら、心配無用ですよ。お茶会やパーティーを開催しないでいいし、社交をしなくて済んでいるのでドレスを仕立てなくてもいいし。気楽で最高ですよ……!」


 すがすがしい程爽やかな笑顔になるフェリシテに、ウォルターが若干、引いている。


「貴族令嬢ってのは、もっとこう……いや、何でもない。奥様のする事は予想もつかないことが多いよな」

「そうですかね?真面目にやっているだけなんですけど」


 首を傾げたフェリシテは、そういえば、と思い出した様に口を開いた。


「ヒューイット様が、新しい使用人を雇うのに求人広告を出したのですが、私が面接を任されました。明日から訪問客が多くて忙しくなるかもしれません。それと、ローゼル商会からも近いうち訪問すると連絡が来ました。人手不足で料理人も不在ですが、頑張っておもてなししないといけませんね。どちらが来るのが早いかなーー使用人が早く決まるとありがたいんですけど」

「別荘の使用人は人気だから、求人に大勢が詰めかけるぞ。休む暇が無くなるかもなあ」

「ちょ、ウォルター、脅かさないで下さいよ」




 ーーーーーーどちらが早いかは翌日すぐに分かった


        結果は、どちらでもなかった



 








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