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「奥様、お給金の額を気にしているんですか?ここは待遇が良い方ですよ。他を調べたいなら、新聞の求人欄を見るといいです。酷いとこいっぱいありますよ」


 オランドに指摘され、ハッとフェリシテが気付く。

 そういえば新聞に、使用人募集の広告がたくさん載っているのを失念していた。


「大体、伯爵家で決まっているのを、奥様の一存で増やせないだろ?それにここは別荘で、主人や客の訪れが少ないから忙しくない。のんびりしてるし、うるさくも無くて働きやすい良い所だよ。そう気にすんな」


 ウォルターが言うと、他の使用人もうんうん頷く。


「支給品も奥様が使う物じゃありませんし、私たちは誰も気にしていませんよ」


 フェリシテは無言でウォルターの部屋の棚に置いてあった、真鍮の手持ちのろうそく立てを手に取った。

 夜に私室にいる時に使うもので、トイレに行く時や、のどが渇いて厨房に水を飲みに行く時にも使う必需品である。

 それが、ポロッと、あっけなくハンドル部分から燭台部分が外れて、ゴン!と重い音を立て床に転がり落ちた。


「……これ、不便では?」

「ん?最近、ろうそくも支給されてなかったからなー。壊れてんの、忘れてたわ!」


 豪快に笑うウォルターに、笑い事ではないフェリシテは目を据わらせた。


「……えー、皆さん、よーくお聞き下さい。突然ですが、邸内の仕事は本日中止です。速やかに自分たちの部屋を片付け、掃除と整理を行って下さい……!」


 ビシッ、と指を突きつけたフェリシテは二階の私室へ行って外出用カバンと剣をつかんで戻ると、呆気にとられる使用人達へ言い放った。


「私はこれから出掛け、昼までに戻ります。早ければ午後に商人が来ますので、来たら応接室に通して、皆も集まってください」


 言うだけ言ったフェリシテは、ざわつく使用人達を残してさっそうと馬に乗り、エインワースの街へ向かって爆走して行った。



 


 

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