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ーー翌朝。17人いた使用人が7人まで減って、忙しい一日が始まった。
昨夜の一件で、フェリシテへの使用人たちの扱いが一変し、フェリシテが声を掛けるだけでビクッと怯えられてしまうようになって、悲しい。
ウォルターだけは変わらなかったのが救いだが、ヒューイットの態度も変わったのは勘弁して欲しかった。
「ーーフェリシテ嬢、本当に感謝している。この感謝を何か形にできないだろうか?」
本邸へ戻らなければならないヒューイットが、しきりに感謝を口にする。
以前の様な突き放した態度から、随分と好意的で優しくなったのはありがたい。
だが、ヒューイットの事は嫌いじゃないが、何もなかった様に振る舞うのはフェリシテには難しいから、できれば自由でいられる現状維持がしたいというのが希望だ。
三年後に離婚して、自由に生きるのが目標である。
何か言わないと諦めなそうなヒューイットに困っていたフェリシテは、良いことを思いついて口に出した。
「あっ!じゃあ、お願いがあるのですが、裏山を探検したり、別荘の敷地内に建物を建てたり、少々手を加えてもよろしいですか?景観は乱さないようにしますから」
は?
思っていたのと斜め上のお願い事が来て、ヒューイットの目が点になる。
「危険でなければ構わないが……建築物の用途と規模を事前連絡してくれれば、許可できると思う。ーーその、君は一体、何をしようとしているのか聞いても良いかな?」
ヒューイットの顔に不安と大きく書かれている。
その後、フェリシテの要望を聞いたヒューイットは、困惑しつつも許可を出し「絶対に、無茶はしない様に」と念押ししてから、本邸へ戻って行ったのだった。
*
そこからフェリシテは、ヒューイットから別荘内の裁量権を預かる事になったため、帳簿やら使用人の私室やらを再調査したのだがーー調査を始めるや否や問題続出で頭を抱えることになった。
「給金がほとんど支払われていないじゃないですか‼」
執事たちの不正で支給品が支給されていない事は分かっていたが、そのため必需品がもらえない使用人達が日用品を執事経由で買っており、その支払いを給金から天引きされて、ほとんど手元に残らない様にされていた。
しかも、執事が領収書も発行しておらず、その日用品もぼったくり価格の可能性があったうえ、何だかんだで手数料なども取られたらしく、使用人全員がこの三年程はまともに給金が支払われていなかったらしい。
執事からよこされた日用品は粗悪品だったため、すぐに壊れて使い物にならなくなった様で、クシも洗面器もボロボロ、石鹸はほぼ粘土。靴はすぐそこが抜ける。かろうじて食事と住むところがあるからマシ、という話であった。
ヒューイットの話では、執事たちが逮捕されても横領されたお金が戻らないだろうという事で、新たに別荘とその使用人たちの支給品の予算を捻出するつもりだそうだが、使用人たちの支給品より屋敷の修繕費用が優先されるだろうと言われた。
建物の老朽化も進んでいて、雨漏りや腐った床板、開けにくいドアがあちこちにある。
危険性の面からも、限られた予算からも仕方ないことかと思われたーーーーが。
話を聞いているフェリシテが頭を抱えているのを、ウォルターは大口を開けて笑い飛ばした。




