24.夜の来訪者~姫を助けるナイト
若干、センシティブな内容が含まれております。
お気を付け下さい。
夜が更けて月が中天にさしかかった頃。
いつの間にか眠っていたヒューイットは、冷えた風を感じて、ぼんやりと目を覚ました。
暗闇に包まれた室内は静まり返っていて、再び眠気に誘われてまぶたを閉じようとした。
ーーーーだが、微かな衣擦れの音を耳にし、ふと違和感を覚えて覚醒する。
気のせいか?と闇に眼をこらした時だ。
ベッドの足元に真っ黒な人影が立っているのに気付き、動揺したヒューイットは次の瞬間、その影に躍りかかられ上に飛び乗られていた。
「⁈」
賊か⁉と冷や汗をかいて身をよじるが、まだ寝ぼけた体がうまく動かないところを、人影が体重をかけて身体を押さえつけてくる。
ーーーーくそっ、油断したーー!
人影が素早くヒューイットの喉を絞め、ぐっ、と息が詰まる。
生命の危機を感じ、首に掛かった手を引き剥がそうともがきかけたヒューイットは、ふにゃ、と唇に柔らかいものが当たって硬直した。
…………?………何だ????は????
驚愕で目を見開いたヒューイットが呆然としていると、黒い人影がヒューイットの顔から離れ、薄暗い闇の中、にいっと口角を上げてねっとりと笑った。
「ーーーーヒューイット様、ずっとお慕いしておりましたわーーーー」
媚びを含んだ女性の声がしんとした室内に響く。
薄明りに照らされ、ようやく闇に目が慣れたヒューイットが目にしたのは、あられもない下着姿で馬乗りになる、若い女の姿だった。
ーーーー××△?!#!〇××¥□△??!!!
パニックになり、頭に血が昇ったヒューイットが力任せに飛び起きると、ガン‼と乗り上げていた女に頭がぶつかり、女が悲鳴を上げてベッドから転がり落ちる。
ヒューイットも目から火花が散る程したたかに打ち付けたが、そんなことに構っている場合ではない。
くらくらしながらも額を押さえてベッドから降りて扉まで走り、何が何だか分からないまま、とにかく外へ逃げようとした。
だが、ドアノブをつかんだところで背後から腕を握られ、ヒューイットは恐怖でその場に立ちすくんだ。
ーーーーその時だ。
「ーー伯爵!悲鳴が聞こえましたが、何かありましたか⁈」
物音に気付いた隣の部屋のフェリシテが、ネグリジェのまま剣を片手に扉を開け放つ。
扉を開けてすぐヒューイットが居たのに驚いた様子だったが、すぐさま背後に怪しい人影を認めたフェリシテは目を据わらせ、すらりと鞘から剣を引き抜いた。
「……賊ですか。伯爵を狙うとは良い度胸ですね。不届きものは、刀の錆にしてくれましょう」
物騒なセリフを吐いたフェリシテが不穏な空気を発するのに、人影が息を呑む。
マズいと察したのか、一歩後退した人影がくるっと方向転換して窓へ向かって逃げようとし、フェリシテは素早く鞘をその足元に放り投げて転倒させた。
べちゃっ、と無様に床に顔から突っ込んだ人影の隙を逃さず、部屋へ踏み込んだフェリシテが大きく振りかぶって、空を裂き、力いっぱい剣を人影の頭のわきに突き刺す。
どれだけ殺傷力があるのかフローリングがメキメキと音を立てて砕け、木っ端が飛び散り、倒れた人影の髪の毛もざらりと床に散った。
ーーーー間が空いたのは一瞬
「………ヒッ……ヒィイイイイイイイ………ッ………‼」
あらん限りのたまぎる悲鳴を声帯から発し、ことん、と怪しい人物は恐怖で意識を失った。




