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14.

 翌日、自室のベッドの上で目を醒ましたフェリシテは、盛大な溜息をついた。


 昨日、ルマティと町の食堂に場所を移して話し合ったところ、ラザフォード産小麦の生産量が、全て領内だけで消費されるくらい少量しか栽培されていない事。ローゼル商会としては、今後は王都だけでなく国内全域へも流通させたいので、大量購入したい事。さらには今より増産してほしい、という希望が出されてフェリシテは驚いた。


「そんなに王都の菓子店で、評判がよかったんですか⁈」

「ええ。ラザフォード産小麦の特徴である、サクサクした歯ごたえと軽さが受けまして。あっさりしているので、甘いものが苦手な人も食べられると、これまでお菓子を買わなかった、男性の購入者が増えたそうですよ」


 ああ、とフェリシテは納得した。

 お菓子に使われる主流の小麦粉はノアゼット産が多く、お菓子にすると、しっとりと上品な甘みがある。ただ、クリームやバター、砂糖でさらに甘みが増すので甘党の人は良いが、そんなに甘いのが得意でない人は、胸やけする場合もある。

 ラザフォード産小麦はその特性で、ニッチな需要を取り込んだらしい。


 それで、ラザフォード産小麦は量が少ないので、他商会に目を付けられる前に、是非ローゼル商会と卸し契約を結んでもらいたいとやって来た、と言う事だ。

 ただ、お飾りどころか、放置されている自分に相談されても何の権限もないため、ヒューイットへ連絡して欲しいと伝えたのだが……


「うっ……!」


 フェリシテは、キリキリ痛む胃を押さえた。

 あの旦那様がどんな反応をするのか分からなくて、大変に恐ろしい。

 何を勝手な事をしているんだと言われそうだ。


 ルマティには、ラザフォード領の貧困層が買うものだとは言えなかった。

 貧困層以外が購入してはいけないと制限しているわけではないので、穀物屋のおじさんも余計な事が言えないみたいだ。

 だとすると、今後、貧困層が買う代替品を用意しなければならない。

 さて、どうしたものかーーーー


 頭を悩ませながら朝食を終えたフェリシテは、カゴに今日の洗濯物を入れ、洗濯をしに裏庭の井戸へと向かった。



 


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