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112.ゲインズ領主

 珍しい野菜と果物を見つけたフェリシテ達は、道中、市場へ行っては価格と品物を調査する事にした。

 購入したメロンを食べてみるととんでもなく甘く、ザクロはジューシーで、ポポー(バナナ、マンゴー、カスタードクリームみたいな味がするフルーツ)はクリームのように滑らかで甘く美味しい。


 ナスにトマト、パプリカ、ビエトラ(スイスチャードというカラフルな茎をした葉野菜)、ロマネスコ(カリフラワー)、コールラビ(アブラナ科のカブみたいな丸い野菜)にバターナッツ(とろける食感のカボチャ)と、ナスやトマトの様になじみのある輸入品以外の野菜たちがカラフルに店先に並んでいて、目にも鮮やかで見ていて楽しかった。


 ラザフォード領では気温が涼し過ぎて育ちが悪くなる可能性がある野菜たちらしく、メロンとバターナッツをロビンが、コールラビをエリオットが大変気に入り、小麦以外にも輸入したい商品が増えてしまった。

 宿に頼んで調理してもらったが、バターナッツはポタージュに、コールラビは肉と煮込んだりマリネにしても美味だ。


 小麦の質を確認してみたら、申し分ないどころかノアゼット産に匹敵するほどの高品質さである。

 それなのに去年までのラザフォード産小麦と同じくらいの激安価格で販売されている。

 どうも豊作過ぎて余剰在庫を抱えているらしく、農作物はどれも価格破壊と言える安さだった。


 これはゲインズ領主との交渉を頑張らねば……!そう思いつつ、フェリシテ達はゲインズ領の領都、カーバンクルにある堅牢な領主館に辿り着き、ついに領主のエルデンと対面する事となった。


 *



 「――初めてお目にかかれて恐悦至極に存じます。私はラザフォード領主の補佐官、エリオット・ヴァルニアと申します。こちらはラザフォード領主の名代として参りました領主夫人のフェリシテ・ラザフォード夫人でございます。この度は我が領からの訪問をご許可頂き、誠に有難うございます」


 白い大理石の敷き詰められた瀟洒なホールにエリオットの声が響き渡る。

 謁見の間の壁際にはずらりと大臣や官吏らしき人物たちが立ち並び、深いグリーン色の絨毯が敷かれた室内の奥には、立派な椅子に座った領主夫妻の姿があった。


 領主と思しき壮年の男性は、グレーの髪とブルーグレーの瞳をした温厚そうな紳士で、領主と言うよりアカデミーの教授と言った風情だ。

 その隣に座る夫人は淡い金髪と金茶色の瞳をした細身のとんでもない美人で、どう見ても外国人である。


 思わず見とれていると、エリオットがこっそり「……奥様はパラス王国出身で、アカデミーに留学していた際にゲインズ領主と知り合ったそうです」と教えてくれた。

 何を専攻していたかは分からないが、アカデミーに通っていたと言う事は、奥様もかなりな才女で間違い無いだろう。

 

 ゲインズ領とサロワ領の小競り合いが無ければゲインズ領主は農業で名を馳せていたかもしれないと思うと、何とも惜しい気がする。


「――初めまして、お目に書かれて光栄です。只今ご紹介にあずかりました、ラザフォード領主の妻フェリシテと申します。シンクレア博士からご領主様のお話を伺い、農作物の輸入の交渉をお願いしたく参りました。この度は歓迎していただき、誠に有難うございます。これを機会にラザフォード領と親交を結んでいただけたら嬉しく思います」


 フェリシテは今日は髪を結いあげ、紫紺のシルクの優雅なドレスの正装を身に纏っていた。

 緊張のために、いつもより二割り増しくらいで表情がキリッとして凛々しい。

 エリオットも白いシャツとクラバットに黒いジャケットとズボンで涼し気な目元と相まってクールなイケメンにしか見えない。

 ロビンは長旅で疲れたらしく、うたた寝していたので護衛達に預けてきた。


 今回、初対面の印象を成るべく良くしようと、気合を入れて身支度して来た。

 緊張感に満ちた雰囲気の中、ヤル気満々でいたフェリシテとエリオットだったが、おもむろに重々しく立ち上がったゲインズ領主がずざーっと床に土下座したのを目にして、突然の奇行に度肝を抜かれた。


「……申し訳ありません……!シンクレアが無理を言ったんですよね⁈彼は良い奴で万年赤字のゲインズ領を心配してくれているんですが、他の方にご迷惑をかける訳には……なので同情してここまで来られて、やっぱり嫌だなと思ったり、ご迷惑なのでしたらお断りいただいて構いません‼ええ、そりゃもうスパーッと威勢よく!さあ、どうぞ覚悟は決めておりますので、一気に言っちゃってください……‼」


 さすがシンクレア博士の友人である。やたら声が大きい所がよく似ている。

 

 

*ご覧いただき有難うございます*

 明けましておめでとうございます!皆様のご健康とご発展をお祈りいたします*

 <(_ _)>

 少々遅れまして申し訳ありませんでした汗。

 

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