110
「エルデン様は最近は野菜ばかりでなく綿や麻、外国から取り寄せたサトウキビでの砂糖作りにも力を入れとるんだ。わしは留守番じゃが、今日は近所の皆で綿の収穫後の作業をしていてな。綿を使った布団や枕を作ったり、糸を紡いで綿布や麻布を織ったりしておるよ。ワイン造りで大量に出るブドウから油を抽出してオイルランプに使ったりしてな。流石にアカデミーを出ただけある賢い方だ」
綿や麻、オイル―― それを聞いたフェリシテの瞳が輝く。
どれもラザフォードではほぼ輸入品で高値のものばかりだ。
エリオットは興味深そうに相槌を打ちつつ「考えていたより農業技術が進んでいる様ですね」と感心した様子だ。
「正直、単に温暖な気候で栽培が上手なだけかと思っていました。先程道端で子羊や子ヤギの姿を見かけましたが、通常であれば2月や3月が出産時期です。今の時期に子供が出来ると言う事は、年間を通して家畜の餌が豊富にあると言う事ではありませんか?」
「ああ、領外の人には冬に家畜に子供がいるのが珍しいんじゃったか」
エリオットの質問を、お爺さんがあっさり肯定する。
「ゲインズ領はほぼ雪が降らないから、品種改良で冬でも育つ草を生やしてそれを食べさせておるよ。干し草も大量に収穫して保管できとる。それと、以前は捨てていた穀物クズを餌に与えると良いらしいんだ。あと、エルデン様が勧める草をいくつかブレンドして食べさせていたら、何故か冬でも家畜の子が産まれる様になった。不思議だが、エルデン様は科学的な原理だとかなんとか言っとるよ」
「因みに、どんな草を与えているのか教えて頂けますか?」
食い気味にエリオットが質問すると、お爺さんは「秘密に決まっておる」とにんまり笑った。
「とあるハーブだとだけ教えとこうかの」
この返答は当然なのだが、エリオットが目に見えてガッカリして肩を落とす。
しかし、世の中には知らない事が沢山あるんだなとフェリシテは思った。
本で大量の知識を仕入れていたつもりだが、まだまだ知らない事があって面白い。
「確かギシギシやコンフリーはいけないと言う研究がありましたね」
牛があまり食べない植物を調べて、動物学者がまとめた研究論文を昔見た気がする。
「よく知っておるの。エルデン様からは家畜に食べさせていけない草を教わっとる。動物に毒になる草があると言われてな。お嬢さんも、よく知っておるのお」
感心した眼差しを向けられ、フェリシテは「エルデン様には敵いませんよ」と謙遜した。
本当にゲインズ領主の凄さがひしひしと伝わってくる。只者では無い。
*ご覧いただき有難うございます!
小刻みな投稿で済みません。
少々加筆させて頂きました!




