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108. お宅訪問

 「あの、ちなみにこの辺りに宿か食堂はありませんか?このまま進めば見つかるでしょうか?」


 やっと巡り会った初めての領民である。

 このままでは本当に山羊や羊と夜を明かす事になるのかもと危惧していたエリオットは機会を逃すまいと、食い気味に質問した。


「宿と食堂は領都近くまで行かないと無いのう。そうか、もしかして食べ物を持って来ていないのか?」

「はい。宿や食堂がないとは知らず……」


 正直にフェリシテが困っている事を明かすと、はははとお爺さんは笑って踵を返した。


「この辺りは畑ばかりじゃからのう。そうか、じゃあ儂についてきな!」


 頼もしいセリフを言って、もふもふ犬と共にお爺さんが畑の奥へ続く細道へ歩いてゆく。

 馬車が入れない道の為、フェリシテとエリオットは御者と護衛にこのまま馬車で待つよう言い置いて、急いでお爺さんの後をついて行った。


 *


 10分ほど歩いた頃。

 青菜が風に揺れる畑の先に、オレンジ色の屋根と白い壁の可愛らしい家に辿り着いた。

 屋根瓦が赤みの強い明るいオレンジで、壁が白い塗り壁。そして家の脇に大きな木製の作業小屋があり、裏にやはり大きな家畜小屋がある立派な家だ。


 ラザフォード領では大農家と言える規模の家だが、ノアゼット領では珍しくない一般的な規模の農家の家である。

 ロビンとエリオットが目を丸くして見回しているのを見て、フェリシテはラザフォードでもこの規模の農家を増やしたいな、と改めて思いつつ、お爺さんが案内してくれるまま家の中に入らせてもらった。


 入ってすぐに素朴な木のイスとテーブルのダイニングになっていて、薪を沢山積んだかまどと旧式の薪オーブンが目に入る。

 古びて使い込まれているが磨かれて手入れが行き届いており、室内は窓からの光が降り注いで明るく温かな雰囲気に包まれていた。


 お爺さんは鼻歌を歌いながらダイニングのイスを勧めると、鍋から陶器のカップにグロックを注いで3人に手渡した。

 グロックとは温めたワインに香辛料を入れた冬の飲み物で、葡萄が育ちにくくワインが貴重品なラザフォードでは主に冬至祭で振る舞われる飲み物として知られている。


 だがゲインズ領では葡萄もよく育つのだろう。

 人肌くらいの温度の赤ワインにナツメグ、オレガノ、クローブとリンゴの角切り、オレンジのスライスがふんだんに入って、蜂蜜でほんのり甘く味付けされている。

 

 

*ご覧いただき有難うございます。

 毎回申し訳ありません。少々加筆させて頂きました!<(_ _)>

 我がブラック職場でもインフルエンザ等が流行し出して、さらにデンジャラスな環境に

 なってきております。

  皆様もお気を付け下さい……!

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