107. ファーストコンタクト
「あれ?何してるんだね、こんな何もない所で」
どこから現れたのか、突然背後から老齢の男性に声を掛けられてフェリシテ達は飛び上がった。
振り返ると、一抱えもありそうな白い毛玉みたいな犬を連れた男性がこちらを珍し気に見ている。
大きいわんこだ!と目を輝かせるロビンに反応して、毛玉犬がロビンに近付いて頬をぺろぺろ舐め、その場がほっこりした空気に包まれた。
「領都に用があって来たのですが、道中の息抜きに子羊を撫でさせてもらっていたんです」
フェリシテが言うと、老人は「ほうほう」とニコニコして頷いた。
「お客さんか。何もない所だがのどかな良い所じゃから、ゆっくりしていってくれな。ちょっと前なら隣のサロワ領とのドンパチが見れたんじゃがのう。昔はそれを見に観光客が押し寄せたんじゃが」
「は?」
空耳だろうか?とんでもないワードが出た気がしてフェリシテとエリオットの動作が一瞬止まる。
だが二人の様子に気付かないお爺さんは、懐かしそうに目を細めつつ語り始めた。
「領主がエルデン様に代替わりしてから、そりゃーもうヤル気が無くてのう。戦闘予告をして騎士を配備して一応サロワ領に攻撃する素振りを見せるんだが、ほのぼの戦闘訓練みたいになっとったわ。お互いの領主の悪口を言ってぽこすこ叩き合いをしたり、そのうち筋肉自慢バトルになって領境でムキムキポーズを披露する騎士達は壮観じゃったわ。おまけに騎士達が畑の力仕事を手伝ってくれてのう。カッコよく大根を抜いてくれたり、重い物を運んでくれて、礼を言うと白い歯を見せて爽やかな笑顔を見せてくれるもんじゃから、この老体も胸がキュンとしてときめいたもんじゃ」
「ほう。それはキュンときますね」
何とも言えない顔をするエリオットの横で、フェリシテが真顔でうんうん頷く。
「じゃろう?おまけに大砲の玉が時々畑に落下したんだが、皆喜んで拾って鋳つぶして農作業用のクワや鎌を作ったんじゃよ。あれはお得でな、皆で拾いに行ったもんじゃ」
大砲の玉拾いを栗拾いの勢いで言うご老人に、エリオットが突っ込みそうになる。
今は火薬が詰まっているが、一昔前は大砲の玉は鉄の塊だった。
無料で鉄が手に入るとは、それはお得だとフェリシテは納得した。
*ご覧いただき有難うございます。
11月27日加筆させて頂きました!




