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「それは衛生的な理由で却下致します」
エリックが即答し、ロビンは残念そうにしゅんとした。
子羊に埋もれて眠るロビンは可愛いだろうな、と思っていたフェリシテもがっかりする。
始めて見る物ばかりで何もかもが珍しいのだろうと思うと、ロビンの望みを叶えてあげたくなる。
どうしたものかと考えていたが、ずっと同じ光景が続いて飽きて来ていたし、少し馬車を降りて息抜きでもしてみようかと思い立った。
「一緒に寝るのは無理でも、近くで見るだけなら良いんじゃないですか?」
御者に声を掛け、馬車を停車させたフェリシテはロビンと手を繋いでステップを降りた。
御者や護衛達も長時間の移動で詰めていた息を吐き出し、肩を動かしたり深呼吸したりしている。
ビスケットやワインなどの携帯食は念のため持ってきているので今日の食糧は何とかなる。
食糧が無くなる前にお店の一件でもあると良いなと考えつつ、近くに居た子羊をロビンと撫でていると、エリオットが興味津々と言った表情で子羊を眺めながら口を開いた。
「――よく考えてみると、羊の繁殖時期は2月以降ですよね?秋である今の時期にこんなに子羊がいるのは珍しくはないですか?」
言われてみれば、とフェリシテは人懐っこい子羊たちに目をやった。
よく人に慣れているらしく、親羊も子羊たちもこちらに寄って来てロビンが囲まれている。
羊は通常、秋に番いを作り、年明けに子供を産むのが一般的なのだ。
ノアゼット領は温暖なため、季節を勘違いした羊によって時々子羊が産まれる事があったが、ゲインズ領のこの子羊の多さから言うと、時々産まれると言う話では無く、季節に関係なく繁殖している可能性があった。
「……もしかして食料が豊富だからかもしれませんね」
一般的には子羊が草を食べるようになる頃、草木が芽吹いて春になる。
だが、子羊がいつでも美味しくごはんを食べられて食べ物に困らなければ、羊は季節を問わずに繁殖するのかもしれない。
*ご覧いただき有難うございます。
11月20日に少々加筆いたしました!申し訳ありません。




