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101. グランデール

 「何故謝るんですか。むしろ、私は救助へ向かって下さって感謝しているのですよ」


 フェリシテは父親と妹を信じていない。

 周辺の町村が助けに行ってくれていた様だが、果たしてどうなっているのか懸念していた。


 感謝を示したが、団長は硬い表情を崩さずに言葉を続けた。


「……あの日、貴方が救助の手助けをしないのを責めた時、私は軽い考えでいたんです。浸水した箇所を片付け、食糧配給と今後の生活の補助をすればそれで済むと。――しかし、それは勘違いでした。グランデールに到着した時、先行して向かわせた部下達が出迎えに出てこないと思っていたら、グランデールに居た全員が感染症に罹患して身動き取れなくなっていたのです」


 あの日、団長は唖然として静まり返った村にうめき声だけが響いているのを聞いた。

 

 コレラに罹った場所から抜け出したはずが、再びコレラ感染の真っただ中に突入する事になろうとは……

 

 浸水後の片付けは全て中途で止められ、建物や道路、畑から土砂を掻き出した形跡が残っている。

 作業道具だけが残され、がらんとした家屋や通りを進み、村人が何処にいるか探すと、村の奥の野原に木の板を敷き、雨除けの布屋根を張っただけの粗末なテントとも言えない野ざらしの場所で村人達が固まって寝ころび、腹を抱えて呻いていた。


 食品らしき物はほとんど無く、土砂を出した井戸からしか水が補給できなかったのだろう。

 誰かが我慢できずに汚染されたままの井戸水を飲み、衛生状態が悪いうえ密接した環境からあっという間にコレラが広まったと推測できた。


 村人達の近くで倒れていた部下を助け起こして話を聞くと、領主から全く支援が届かず、近隣の町村の支援にも限界が来て一週間に一度か二度しか食糧も届かなくなっていたらしい。

 前回の支援が一週間前で、その後にコレラ感染した村人の一人から爆発的に感染が拡大してしまい、看病に当たった部下も感染してしまったのだと言う。


 自己管理を徹底していた部下達3人だったが、さすがに村人100人超の看病で疲弊し、ついにコレラに感染してしまったと報告を受け、団長は部下達を責める事は出来なかった。


 食糧や物資が不足する中で出来るだけの事をしていたのだ。

 何もかもが不足したままひと月余り放置されており、あまりの惨状に、助けに来ないノアゼット伯爵に怒りが湧いた。


 ――そして同時に、偽善者顔でフェリシテを説教しようとした自分が恥ずかしくなっていた。


 …………こんな状況に、令嬢をひとりで追い込もうとしていたのか。訓練された部下ですら倒れて地に伏す場所に。


 直ちに王都へ緊急救助申請を行い、村人全員と部下達は何とか事無きを得たのだが、ノアゼット伯爵に対してはらわたが煮えくり返る程の怒りを覚えていた。

 国王へ状況を報告し、ノアゼット伯の領主としての資質を疑う旨の申告をしたが、ノアゼット伯は巧妙で、北部被災地に大量の小麦の食糧支援を行う事で世論の批判を躱し、それどころか何も知らない人々から賞賛を得た。


 お陰で、怒りに任せて周囲へグランデールの惨状と共にノアゼット伯の非道さを話すと、団長の方が嘘をついていると見なされる始末だ。

 理不尽さに身体が憤りで震える位だったが、そこでやっとフェリシテの立場が分かって、同情すると共に酷く反省した。


 それで団長はいつか謝るべく、フェリシテと会う確率の高いラザフォード領境の警備に自ら立候補してここへやって来たと言う訳だった。





 

 



 


 

 


*追加で書き足したものです。少々シリアスな内容になっております。

 次回はいつもの金曜日投稿を致します! ご覧くださり有難うございます(*‘∀‘)

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